琥珀色の戯言

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【読書感想】湿地 ☆☆☆


湿地 (Reykjavik Thriller)

湿地 (Reykjavik Thriller)

内容(「BOOK」データベースより)
雨交じりの風が吹く、十月のレイキャヴィク。北の湿地にあるアパートで、老人の死体が発見された。被害者によって招き入れられた何者かが、突発的に殺害し、そのまま逃走したものと思われた。ずさんで不器用、典型的なアイスランドの殺人。だが、現場に残された三つの単語からなるメッセージが事件の様相を変えた。計画的な殺人なのか?しだいに明らかになる被害者の老人の隠された過去。レイキャヴィク警察犯罪捜査官エーレンデュルがたどり着いた衝撃の犯人、そして肺腑をえぐる真相とは。世界40ヵ国で紹介され、シリーズ全体で700万部突破。ガラスの鍵賞を2年連続受賞、CWAゴールドダガー賞を受賞した、いま世界のミステリ読者が最も注目する北欧の巨人、ついに日本上陸。

久々に翻訳ミステリでも読んでみるか、と書店で目についたこの本を購入。
北欧のミステリには、『ミレニアム』っていう巨人がいるし、この作品もいろんな賞を獲っているからなあ、それに、比較的読みやすそうな長さだし……などと思いつつ。
ちなみにこの本、解説も含めて340ページあまりと、翻訳ミステリとしては、かなりお手頃な長さです。
二段組みでもないし。


ああ、なんでこう海外ミステリの主人公っていうのは、みんな「家庭の問題」を抱えているんだろうなあ、なんて思いながら読み始めたのですが、率直に言うと、なんかけっこうこじつけというか強引な設定+思いつきとラッキーによる解決という、やや期待はずれな作品でした。
海外ミステリというと、人物設定がやたらと濃密で、謎解きよりも人間ドラマが中心になりがちなのですが、この作品は、登場人物の色があまりついていない感じなんですよね。


犯人のろくでもなさには怒りを覚えるのですが、解決のプロセスが、あまりにも「意外性を追求しようとしすぎて、非現実的」になってしまっているような気もしますし。
ただ、尼崎の事件とかを目の当たりにすると、「現実は小説より奇なり」なんて言葉を、あらためて思い出さずにはいられないのですけど。


「看板の立派さに較べると、薄っぺらい感じがするありきたりのミステリ」であるというのが僕の印象です。
「海外ミステリ」だからといって、何か賞をとっているからといって、無条件にありがたがるようなものじゃないな、と。
アイスランドで2000年に刊行されたこの作品の翻訳が日本でようやく出たのが2012年というのも、作品そのもののデキに、目の肥えた日本のミステリマニア相手だと厳しいという判断が下されていたのかな、と思います。
『ミレニアム』のときに、北欧ミステリも、ひととおりスクリーニングされていたはずだしね。


しかしながら、『ミレニアム』とか『ラストチャイルド』とか『ウォッチメイカー』のような「このミスで上位に入るような翻訳ミステリ」と比較すると、「手軽に読める」のも事実なんですよね。
やっぱり、『ミレニアム』とか、読みはじめて馴染んでくれば面白いとわかっていても、なかなか手に取りづらい「長さ」と「世界観の重さ」があるから。
そして、「読みやすい」っていうのは、やっぱり魅力でもあるわけです。
北欧の人だって、いつも『ミレニアム』みたいな作品ばかり読むのはキツイはず。
もしかしたら、そういうところが「評価」されたのかもしれません。

「これぞまさに典型的アイスランドの殺人ですね」いつの間にかやってきて、死体のそばに立っているシグルデュル=オーリが言った。
「なんだって?」考えにふけっていたエーレンデュルが聞き返した。
「汚くて無意味で、足跡を消すとか証拠になるものを隠すとか、その気になったらなんだって隠せるのになにもしないってところが典型的なアイスランドの殺人と言ってるんです」
「そうだな。不器用なアイスランドの殺人だ」

アイスランドという国の雰囲気が伝わってくることも含めて(「アイスランドだからこそできた謎解き」でもあるので)、「ミステリ好きの人なら、文庫化されたら読んでみてもいいかもしれない」というくらいの作品でした。

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