琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

レ・ミゼラブル ☆☆☆☆☆



あらすじ: 1815年、ジャン・バルジャンヒュー・ジャックマン)は、19年も刑務所にいたが仮釈放されることに。老司教の銀食器を盗むが、司教の慈悲に触れ改心する。1823年、工場主として成功を収め市長になった彼は、以前自分の工場で働いていて、娘を養うため極貧生活を送るファンテーヌ(アン・ハサウェイ)と知り合い、幼い娘の面倒を見ると約束。そんなある日、バルジャン逮捕の知らせを耳にした彼は、法廷で自分の正体を明かし再び追われることになってしまい……。

参考リンク:映画『レ・ミゼラブル』公式サイト


 2013年2本目。 
 金曜日の夜のレイトショーで鑑賞。
 『コクリコ坂』テレビ放映の日でしたが、観客は20人くらいでした。
  かなり評判が良い作品なのですが、僕はミュージカル映画っていうのがあまり好きじゃなくて、「ああ、あの突然登場人物がニコニコしながら歌い出すやつか……しかも上映時間158分って……こりゃ、かなりつらいかもしれないな……」と不安いっぱいで鑑賞しはじめました。
 冒頭の囚人たちが大人数でロープを引っ張っているシーンの迫力に、まず驚いたんですよね。
 ああ、このスケールを舞台でやるのは無理だろうなあ、って。
 もちろん、上演されるミュージカルには「ナマの魅力と迫力」があるわけですが、ナマでやる舞台には、ここまでお金と人間を豪華に使うわけにはいかないでしょう。
 「セリフの合間に歌う」のかと思いきや、何かセリフを喋りだしたと思ったら、いつのまにか歌っているという、ほとんど歌で占められているミュージカルです。

 そんな芝居がかった(というか、芝居なんですけどね)ものって、観ていてバカバカしくなるんじゃないか?
 ところが、役者さんたちの圧倒的な歌と演技、そして、『レ・ミゼラブル』という物語の「強さ」で、全く退屈することなく、158分を完走。ああ、これは久々にすごい作品を観た。
 映画って、こういうつくりかたが、まだあったんだな、と感動しました。
 それにしても、『レ・ミゼラブル』という物語の普遍性というか、人の心のツボをついてくるような骨組みの強さを、あらためて思い知らされた。終わってから考えてみると、そんなに意外などんでん返しがあるわけでもなく、かなり御都合主義な展開も多いと思うのだけれど、ぐいぐいひき込まれてしまったのです。もちろん、歌の力もあって。
 むしろ、「古典」だからこそ、こういう「大仰な作品」であることに、違和感が無かったのかもしれません。


 最初、有名な「銀の燭台を盗むシーン」まであっという間に進んでいって、これは、「あらすじで読む『レ・ミゼラブル』なのか?」と思ったのですが、そんなロケットスタート+158分の長尺にもかかわらず、最後は、まだもう少し観ていたいような気分にもなって、ちょっと席を立ち難かったくらいです。
 「ああ、『物語』を体験したなあ」と大満足。


 それにしても、人間というやつは、19世紀のはじめから、その根源的なところでは、あんまり変わらないものなのだな、と考えずにはいられません。
 この長年読み継がれてきた物語を目の当たりにすると、なおさら。
 コゼットの母親、ファンテーヌが、ささいなきっかけで工場をクビになり、身を滅ぼしていき(というか、「それ以外にどうしようもない」ようにも見える)、なんともいえない表情で『夢やぶれて』を歌う場面なんて、もうなんというか、アン・ハサウェイさんのせつない歌声と「あんまり幸せじゃなさそうな地顔」もあいまって、僕ももらい泣きしてしまいました。
 踏み外すきっかけなんて、いくらでもあって、でも、一度道を外れてしまったら、もう、まっとうな方法では浮かび上がれない。
(正直、「ジャン・バルジャンはどうやって成り上がったんだろう?」とも思うのですが)


 僕がいちばん気になったのは、ラッセル・クロウさんが演じたジャベール警部だったんですよね。
 主人公はさておき、この人は「救われる」のだろうか?って。
 作中で、ジャベールはジャン・バルジャンに「俺は檻の中で、貴様等のようなクズの間で生まれた」と告白しています。
「でも、だからこそ俺は、『法の番人』として立ち、小さな過ちも許さないのだ。それが神の意思にかなうことなのだ」
 ジャベール警部は、自分の出自にコンプレックスを抱いているからこそ、ジャン・バルジャンを認めることができない。
 それが「パン1個の罪」であっても。
 紙一重の場所にいたからこそ、「俺はお前とは違う」と、常に「差別化」していないと落ち着くことができない。
 人の感情って、19世紀も21世紀もあまり変わらないんだな、と思います。

 その一方で、「革命を目指す青年貴族」は、生き残ったら、あっさり方向転換し「愛に生きる」。
 そして、貴族仲間に祝福されるのです。


 この物語は、実に残酷です。
 貧しいものたちは貧しく、卑しく、したたかに(一部に煌めく人物もいるのだけれど)描かれ、革命に生きる若者たちは、しっぺ返しを食らいます。そんななかで、ジャベール警部は……


 結局、ジャン・バルジャンがやったのは、「一人の孤児を育てて嫁にやった」だけなのにねえ。
 でも、人間の「正しい生き方」なんていうのは、大義とか自己犠牲とかよりも、そういう「身近な人を幸せにする」ことに尽きるのかもしれない。

 これは本当に「すごい映画」というか、「すごい歌と演技と物語の洪水」みたいな作品です。
 騙されたと思って、ぜひ一度映画館で観てみてください。
 久々に、映画のサントラ買おう!と思っています。

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