琥珀色の戯言

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【読書感想】やりなおし高校世界史 ☆☆☆


やりなおし高校世界史―考えるための入試問題8問 (ちくま新書)

やりなおし高校世界史―考えるための入試問題8問 (ちくま新書)

内容(「BOOK」データベースより)
大学入試、しかも論述問題ってなんだかとても難しそう…。だけど、それは世界史のダイナミズムを思考するうえで、最高の題材だ。「国民国家がどのようにしてできたか」「いまも残る民族問題はなぜ生まれたか」「ファシズム誕生の理由」「戦争はどうして大規模化したか」など、現在にもつながる良問を8問セレクト。それぞれの問題の解答を考えていけば、自然といまの国際社会の全貌が見えてくる。受験を控えた高校生はもちろん、すべての社会人必読の一冊。

高校時代、世界史選択で、けっこう得意だった僕としては、「まあ、今でもこのくらい解けるんじゃね?」なんて思いつつ読み始めたのですが、いやあ、まったく歯が立ちませんでした。
文系の難関大学の世界史って、こんな難しい論述問題に答えなきゃいけないのか……


この新書、最初に見かけたときは、「世界史を簡単にまとめた新書」なのかと思ったのですが、サブタイトルが「考えるための入試問題8問」となっており、「実際の入試問題を題材に、世界史、それも近現代史を概観する」という内容です。
対象とされる期間、国はだいたい18世紀の終わりから、第二次世界大戦前までの西欧と中国、トルコ。


この新書の「はじめに」では、こう書かれています。

 例えば、次の二つの入試問題を比べてみて下さい。

A. ラテンアメリカ諸国の独立に西欧列強が干渉することを批判するために、アメリカ合衆国大統領が出した声明を何と呼ぶか。

 いかがでしょうか? この答えがすぎに思い浮かんだ人は、いまだに世界史の知識を保ち続けている「つわもの」と言えるでしょう。ぜひ私の生徒になってもらいたいものです。
では、次の設問にはどう答えますか?

B. 1898年に勃発したアメリカースペイン戦争をきっかけとして、アメリカ合衆国は、(a)モンロー宣言によって定式化された従来の対外政策を脱し、より積極的な対外政策を追求しはじめた。<中略>
(a) この宣言の内容を、二行(60字)以内で説明しなさい。

 この二つの入試問題は、要するに同じことを問うているわけです。ただし、その問いかけ方が異なっていて、Aの方が「モンロー宣言」(モンロー教書)」という単語を答えさせるのに対し、Bの方はその「内容」の説明を求めています。AもBも「モンロー宣言」を知っていなければ答えられないわけですが、Bの方はその意味内容の説明までも、しっかりと頭の中に入っていないと十分な解答を作成することができません。
 つまり、この入試問題では、Bの方がAよりも、知識に対する理解が求められているというわけです。


(中略)


 また、Bには字数制限がありますから、何を入れて、何を捨てるか、という取捨選択をしなければなりません。その際にはより重要なものを残して「枝葉」を切るという作業も必要になってくるでしょう。

 ちなみに、A、Bはいずれも2011年に入試問題として実際に出たもので、Aは立命館大学、Bは東京大学の問題だそうです。


 「歴史好き」のはずだった僕は、Aの「モンロー宣言」くらいはなんとか覚えていたのですが、Bとなると、もうお手上げです。
 でも、この新書を読んでいると、このBくらいは、まだ「易問」なのではないかと思われます。
 受験生って、すごいな……と感心するばかりです。


 この新書では、入試の設問への解答を通じて、「いまの世界に影響を与えている、近現代史」について採り上げています。
国民国家」の成り立ちとか、「女性の権利」についての話なども、「なんとなく知っているつもり」だったことには、こんな因果関係があったのか!と唸らされます。

 
 著者は「男女という性別による不平等を定着させてしまった人物」として、ある人物の名前を挙げています。

 1789年に始まるフランス革命では人権宣言(正式には人および市民の権利宣言)が出され、人間の自由や平等が掲げられ、そのようなフランス革命の成果を「定着」させたと言われる1804年の『民法典』は、「夫はその妻の保護義務を負い、妻はその夫に服従する義務を負う」と第213条で規定し、続く第214条で「妻は夫とともに居住し、夫が居住するのに適当であると判断する場所にはどこへでも夫に従う義務を負う」と定めてしまいました。
 さらに、妻は財産の所有権や管理権を否定されたため、経済的な自立も不可能となりました。この『民法典』は日本を含む世界各国の法典のモデルとされましたから、どこの国でも女性の立場と権利は同じようなものになってしまいます。
 この『民法典』は別名『ナポレオン法典』と呼ばれます。そう、女性を家庭に閉じ込めることに「貢献」してしまったのは、あのナポレオンだったのです。誰もが知っている有名人であるあのナポレオンには、このような側面もあったのですね。

 まあ、ナポレオンが独断で決めたというわけではなく、当時の慣習に基づいた法律を成文化したものですから、「ナポレオンのせい」と言うのも、ちょっとあんまりかな、とは思うんですけどね。
 「女性の権利」が向上したのも、クリミア戦争で「看護婦」として活躍したナイチンゲールらによって、女性の職業進出が促進されたこと、そして、2つの世界大戦が総力戦となり、女性も国に「徴用」されたことにより、権利意識が高まっていったということも書かれています。
 「戦争のおかげで、平等意識が高まった」というのは、皮肉な感じもしますが、歴史には、そういう面もあるのです。


 この新書のなかでは、1998年の京都大学で出題されたという、こんな問題も検討されています。

 20世紀の二つの世界大戦の間に、イタリアとドイツでは、ファシスト党ナチスがそれぞれ一党独裁を実現し、ファシズムと呼ばれる全体主義国家体制を樹立した。このような国家体制が両国において成立した理由について、19世紀後半の国家統一以来の両国の歴史を視野におさめながら、300字以内で説明せよ.句読点も字数に含めよ。

 橋下市長に対して「ハシズムを許すな!」なんて言っている人もいますし、僕も「橋下さんって『独裁』をやりそうで怖い」なんて考えてしまうのですが、あらためてこう問われてみると、僕は「ファシズム」について、あまりにも無知だなあ、と。
 「ファシズム」は、なぜ、あの時期にイタリアとドイツで成立したのか?
 逆に、なぜイギリスやフランスではそうならなかったのか?
 では、いまの日本で、「ファシズム政権」が成立しうるのか?


 「歴史に学ぶ」ことは大事なのですが、正直、まだ学び足りないことだらけ、なんですよね。
 それを確認できただけでも、読んだ価値はあったのではないか、と思います。


 ただし、総括的な歴史の知識を深めたり、受験生にとっての「参考書」にしたりするには向かない本だと思いますので、「歴史好きがつまみ食いするための新書」だと割り切ったほうがよろしいかと。



もういちど読む山川世界史

もういちど読む山川世界史

 もう一度歴史を総括的に学び直してみたい社会人には、とりあえずこれをおすすめしておきます。
 なんのかんの言っても、まずは教科書が最強、なんじゃないかな……

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