- 作者: 山崎一夫,西原理恵子
- 出版社/メーカー: 日本文芸社
- 発売日: 2014/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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内容紹介
お気楽極楽ヌルくてユル〜い温泉紀行
箱根、熱海、草津、有馬といった有名どころから、
後楽園ラクーア、二子玉川といった近場の湯まで……
ギャンブルライター・山崎一夫と無頼派マンガ家・西原理恵子の
人生崖っぷちコンビが贈るなんともユル〜い温泉逃避行!?
舐達磨親方こと島本慶氏との特別鼎談『湯探歩トリオの言いたい放題』&
読み切りマンガ『本日も飲酒』収録!
「銀玉親方」の異名で知られるギャンブルライター・山崎一夫さんによる温泉旅行記。
西原理恵子さんがイラストを描いていますが、温泉に同行されているわけではありません。
このコンビなら、読んで「役に立つ」ことはなくても、「退屈する」ことはなかろう、と思いつつ読み始めたのですが、正直なところ、あんまりまとめて読むような内容じゃないなあ、と。
『湯探歩』は、『漫画ゴラク』に連載されていたものだそうなのですが、漫画雑誌のなかで、1本ずつ読むと、いい気分転換になると思います。
ただ、続けて読んでいると、なんだか飽きるというか、同じような話ばかりになってしまうというか。
なんのかんの言っても、「温泉縛り」である以上、起こることに、そんなにバリエーションが豊富なわけではないし、山崎さんは「温泉の料理には、あんまり興味がない」と仰っています。
西原さんの漫画があるので、多少は飽きにくくなってはいるものの、「温泉選びの実用書」としては、データが豊富でもなく、「娯楽作品」としては、あまりに平和すぎる、そんな感じ。
それは、山崎さんもわかっておられたのか、この本のなかで面白いのは、温泉そのものに対するコメントより、温泉地の現状を、現地でみたレポートのほうなんですよね。
私は以前からスキーに来るたびに、越後湯沢一帯に林立するリゾートマンションが気になっていました。
バブル時代に建築が始まったマンション群ですが、その当時から、たとえクリスマスやお正月でも、あまり使われていないように見えました。
夜、ほとんどの窓に電気が灯らないんです。
「こんなガラガラ状態でだいじょうぶなのか?」
バブルの時代でさえそうだったリゾートマンションですが、この不況でいったいどうなってるんでしょうか。ちょっくら調べてまいりました。
駅前の不動産屋さんによると、苗場あたりのマンションは、建築時は2000万円以上した物件が、今では100万円くらいのがゴロゴロしてて、まるで百円均一ならぬ百万円均一の「百均」状態だというんです。
ブッブー。
バスに乗って40分ほどで目的地に到着。
旧三国街道の国道17号線を時おり車が通るものの、生活道路や商店やマンションの近くに人影はほとんどなし。
そして。
スキー場の近くの高層マンションの一室は、なんと35万円の激安ぶり。
中古の軽自動車並みじゃないか。
オーナ―はほとんど首都圏の人で、元々投資目的で買ったケースも多く、なかには一度も使わずに、多大なローンだけが残った人もいるそうです。
確かに激安物件ですが、管理費や固定資産税などで年間30万円くらいかかるのは、う〜ん考えものですね。
バブルの残滓、か……
マンションが35万円!ってすごいな、と思ったのですが、現実的に使い道もないのと、所有しているだけで年間30万円もかかってしまうというのは、かなりの負担ではありますよね。
手放したくても、マンションをゴミ捨て場に捨てるわけにはいかないし、書い手がつかなければ、維持費を払いつづけるしかない。
これって、けっこうキツいよなあ。
こういう現象は、越後湯沢にかぎったことではないのでしょう。
働いているシェフや板前やウェイトレスも素晴らしい。若いウェイトレスの接客用語の発音は、東京の若者と変わらないんです。
「地方の若者は方言を使わないのかも」
と思って名札を見ると、なんと外国人でした。
彼女たちは日本語で接客しているのですが、日本語が分からない外国人が来ると、もちろん母国語で対応しています。きめ細かいサービスで、外国からの団体客が多いのも、うなずけます。
彼女たちの多くは、近くにある立命館アジア太平洋大学の留学生だそうです。観光の国際化のビジネスモデルとしても、素晴らしいと思います。
「安い労働力」としての外国人労働者ではなくて、観光業では、こんなふうに「サービスの一環として、さまざまな国の言葉に対応できる人を雇う」ことが一般的になりつつあります。
僕も、外国で「日本語が通じるスタッフ」がいると、安心するものなあ。
あと、箱根の天成園というホテルで、あの「ものまね四天王」の「清水アキラ・ショー」が連日行われ、にぎわっているというのもこれを読んで知りました。
なんと、宿泊客のみならず、日帰り客も「無料」でステージを観ることができるそうですよ、そりゃ人もたくさん来るよね。
温泉というのは、旅行者にとっては「癒しの場所」だけれど、温泉地というのは、日本の観光、過疎化などの「最前線」でもあるのです。
基本的には、お堅い内容ではなくて、とくに予定もない昼下がりとかに、ときどきウトウトしたりしながら、少しずつ読むのに向いている本、なんですけどね。