琥珀色の戯言

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【読書感想】なんで水には色がないの? ☆☆☆☆


なんで水には色がないの? -大人も知らない世の中の仕組み

なんで水には色がないの? -大人も知らない世の中の仕組み


Kindle版もあります。

なんで水には色がないの?

なんで水には色がないの?

内容紹介
本書は、子どもの素朴な質問から「大人も知らない世の中の仕組み」を学ぶための本です。
「なんで水には色がないの?」「どうしてお金持ちと貧乏がいるの?」「逮捕されるとどうなるの?」といった全36の質問から、実は知らなかった世の中の大切なことを楽しく学べます(扱うテーマも、自然、文化と歴史、政治経済、生物学などバラエティー豊富です)。
さらに、各項目の内容を「人にわかりやすく伝える方法」も解説しており、1冊で二度も三度もおいしい贅沢な本になっています。


Kindle版を購入。
以前、書店で見かけて、「こういう本を持っておくと、子供の不意の質問にも対応できるな」とは思っていたんですよ。

「なんで水には色がないの?」
「どうしてお金持ちと貧乏がいるの?」
「どうして人は死ぬの?」


 こうした質問をされたときに、あなたはきちんと答えられるでしょうか?
 もし正しい答えを知っていたとして、それを子どもでもわかるようにやさしく伝えられるでしょうか?


 このような本質的な問いかけに出会うと、多くの大人は「ウッ」とかたまり、「そういえば、なんでなんだろう……」と、自分が意外と世の中の仕組みを理解していないこと、また、常識に凝り固まっていたことを思い知らされます。


この本のなかで扱われている質問の「ねらい」は大きく分けて、「実は知らなかった知識や世の中の仕組みを学ぶ」こと、「今までとは違った角度で世の中を見られるようになる」こと、「どのようなポイントをおさえればわかりやすく伝えられるかを学ぶ」こと、の3つなのだそうです。


 個人的には、「なんで水には色がないの?」とか「目が見えない人はどんな夢を見るの?」というような「自然科学系」の質問はものすごく参考になりました。僕自身、自分の息子が3歳のときに「こわい夢をみた」と泣きついてきたとき、「3歳の子どもにとっての『怖い夢』って、どんなものなんだろう?」と疑問でした。
「目が見えない人はどんな夢を見るのか?」という質問は、「実体験と夢のリンク」という点で、「人は、自分が体験したこと(あるいは、そこから想像できること)しか、夢に見ないのか?」という僕の疑問にも答えてくれました。

 多くの盲目の人を対象にして行われた、どんな夢を見たかを調べた実験では、「生まれつき盲目の人」や「5歳未満の時点で目が見えなくなった人」は視覚的な夢を一切見ていないといいます。


 夢とは「脳がそれまでに記憶したことを、感覚から得た情報をもとに整理して、定着させる作業」とも言われます。
 目の見えない人は、視覚以外の感覚で世界を捉えていて、その感覚が夢に反映されているということでしょう。


 そうなのか……いちおう僕は大人なんですけど、知りませんでした。
 まあ、それはそれで、「3歳児にとっての『怖い夢』って何なのだろう?怒っている親?」という疑問は残りますし、赤ん坊が眠りながら笑っているのは、どんな心境なんだろうな、とも考えてしまうんですけどね。


「水に色がない理由」っていうのも、知っているつもりで、全く知らなかったし。この本には、具体的な「説明の際のポイント」も書かれているので、けっこう助かります。

 であれば、「水に色がない」とはどういうことなのでしょう。
 それは、水は光をはね返さないし吸収もしない性質(透過性)を持っているから「色がない」ように見えるのです。
 たとえば水の入ったコップの先にリンゴを置いてみると、赤い光だけがリンゴにはね返され、コップを通り抜けます。


 こんな説明をすると、「じゃあ、なんで海は青く見えるの?」という質問が聞こえてきそうです。
 実は、水には少しだけ赤い光を吸収しやすい性質もあります。
 ですから、海の深くまで太陽の光が進むと「緑」や「青」の光だけが残り、海底の珊瑚礁に反射されて海面に出てきたり、空の青さが海に映ったりして、海は「青く見える」のです。


 なるほど。こういうことで、こんなふうに説明すればいいのか!
 まあ、ここで紹介されているような質問というのは、自分から「なんで水に色がないか知ってる?」と「水を向ける」よりは、心の中にストックしておいて、子どもがふと尋ねてきたときに、サッと答えるとカッコいいんじゃないかな、と。


 ただ、「どうして戦争は起こるの?」とか、「どうしてお金持ちと貧乏がいるの?」というような質問については、「模範解答」通りに子どもに話すことはないかな、と。もちろん、こういう答え方がある、というのは知っておいて損はしないと思うのだけれども。


「どうして戦争は起こるの?」という質問への答えのなかに、こんなエピソードが挿入されていました。

 1990年代のボスニア紛争の際、ボスニア政府とPR契約を結んだ広告代理店は、敵対するセルビア人を非難するための言葉を開発します。
 それが、「民族浄化」。
 このメディア戦略のおかげで、またたくまに「セルビア=虐殺を繰り返す悪者」というイメージが世界中に広まったのです。

 あれは「広告代理店の仕事」だったのか……
 そのイメージがセルビアを実像以上に「悪者」にしてしまい、紛争を激しくしたのは事実なのでしょう。
 この広告代理店に、罪悪感はあったのだろうか?
 広告代理店としては、クライアントに対して、「いい仕事」をした、とも言えるのだけれども。


 親としては「自分で答えを探す人になってもらいたい」のだけれども、そのためには、子どもに「自分で考えなさい」と言うよりは、親自身が「自分で答えを探す人」としての姿を見せるべきなんですよね。
「自分は何がわかっていないのか」をわからせてくれる、なかなか面白い本でした。
 子どもが質問してくれる親でありたいものですよね。

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