琥珀色の戯言

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【読書感想】新・世界怪魚釣行記 ☆☆☆☆


新・世界怪魚釣行記

新・世界怪魚釣行記


Kindle版もあります。

新・世界怪魚釣行記 (扶桑社BOOKS)

新・世界怪魚釣行記 (扶桑社BOOKS)

内容(「BOOK」データベースより)
完全オールカラー。衝撃の写真とユーモアあふれる文章。怪魚求めて世界をさすらう破天荒釣行記、待望の最新作!


おお、ついに続編が出たのか!と喜びつつ購入。
僕自身は、自分でも呆れるほどのインドア人間なのですが、アウトドアの話を読むのは大好きで。
しかもそれが無謀で、ちょっと笑えてしまうような冒険であればあるほど嬉しくなってしまうのです。


この本の前作『世界怪魚釣行記』は、著者が世界中を、「怪魚」を求めて釣り竿を抱えて探検する、という内容でした。
実際には「釣り竿」というよりは、最新鋭の釣り具セットやボートなんですけどね。
著者の「狙いの魚を釣るためなら、身の危険を厭わない」という、あまりにも無謀な挑戦っぷり、そして、釣りのためなら、現地の人たちの懐にも飛び込んでいく、というバイタリティが伝わってきたのです。
そして、なんといっても、世界各地の「怪魚」たちのインパクト抜群の姿!


ほんとにこんな魚が、地球上に存在するのか?
しかも、「釣れる」ものなのか?


率直に言うと、この『新・世界怪魚釣行記』には、前作ほどの圧倒的なインパクトはありませんでした。
それだけ前作がすごかったから、とも言えるのですが、文章もちょっと「落ち着いた」感じになりましたし、釣り以外の行動も、そんなに無茶はしなくなったな、と。


でも、いきなりワニを釣り始めたり、カピバラ狩りがはじまったりするからなあ……
……やっぱり無茶してるか。前言撤回。


そして、豪快な「魚とのファイト」にばかり目が向きがちなのですが、著者は、狙いの怪魚に対して、かなり詳細な観察と研究を重ねているのです。

 釣果を重ねるごとに、僕はこの魚の補食の仕方を深く理解していった。とにかく激しいアクションを好むピラルクーの補食は繊細で、釣り方は奥が深い。
 まず、呼吸で水面に上がってくるのを見つけ居場所を特定し、丁寧にルアーを送り込む。ピラルクーは実によくルアーを観察していると思われ、ルアー操作はスローが基本だ。しかし、ただ単調に動かしているだけではダメだ。食い気を誘発する明確なアクションに、食わせのタイミング、微妙な間合いが大切なのだ。それを完全にモノにした時、僕のピラルクー釣りは劇的な進化を遂げた。時にはポイントに着いて即1投でヒットすることもあり、僕は最終的にこの地で32匹のピラルクーを手にすることとなった。

 ピラルクーというのは、アマゾンに生息する大きな魚で、水族館などで見たことがある人も多いはずです。
 あれをアマゾンまで言って釣るんですよ、しかも32匹!


世界の釣り文化比較、なんていうのも、なかなか興味深いものがありました。
アラスカにキングサーモンを釣りにいったときの話。

 翌朝、キーナイ川の本流に行ってみると、釣り人でごった返していた。駐車スペースはほぼ満車で、駐車にさえ苦労する。川の両岸に、ざっと見回しても老若男女100人が5mおきに立ち込んでおり、まるで日本の管理的釣り場のような混みようである。
 それにしてもアメリカ人は釣りが下手である。へっぴり腰のキャストで、仕掛けが10mも飛んでいない。しかし、度々60cm半ばのレッドサーモンが掛かり、ロッドを大きくしならせている。みな一様にドラグなど使わず、ガンガンリールを巻いて強引に引き寄せる。まさに肉食人種の釣りだ。「こんなんで釣れるんじゃあ、レッドは楽勝だな」とほくそ笑み、僕らも川に浸かり、竿を振り始めた。

「やれやれ……」と呆れながらも、それほど気分は悪くない。アラスカで出会った釣り人達は、人が居ようと居まいと、お互いラインが絡まぬ程度であれば「魚のいる所に撃ち込め!」というのが鉄則となっている。アメリカ人はあんまり小さいことにこだわらず、合理的な釣りを行う。釣り人同士のポイント争いが熾烈な日本の釣り場からやってきた僕にとっては、なんだか清々しく思えるほどだ。


 日本には、こんな怪魚はいないのだろうな、と思いきや、カムルチーという巨大な雷魚や、イトウの写真をみて、びっくりしてしまいました。
 いるじゃん、日本にも、怪魚!
 イトウなどは「怪魚」というより、神秘性を持った存在のように語られることが多いようですけど。


 最初の本ほどのインパクトはないのですが、著者がこうして「怪魚ハンター」として活動を続けていることが、僕にとってはちょっと嬉しくなる話です。
 自分にはできないことだけれど、だからこそ、他人のこういう「好きなことをやってやる!」という生き様に惹かれてしまう。
 この本のオビには、高野秀行さんの「衝撃の写真とユーモアあふれる文章。いや、凄い。面白い。参った!」というコメントが書かれているのですが、たしかにこの本は「凄い、面白い、参った!」としか言いようがない。
 理屈じゃなくて、「こういうの大好き!」っていう人は、けっこういるはず。
 もちろん、そうじゃない人も、もっと大勢いるんだろうけどさ。


いやでもほんと、マラリアとか寄生虫にだけは、気をつけたほうが良いと思います。
ご結婚されたみたいですし。


ちなみに、著者が釣り上げた「怪魚」の数々の一部の写真は、こちらで見ることができます。
参考リンク:怪魚ハンターが釣り上げた世界の怪魚・珍魚まとめ(新刊JPニュース)




前作の『世界怪魚釣行記』はこちら(シリーズ未読の方は、まずはこちらから読んでみることをオススメします。僕の感想はこちら

世界怪魚釣行記

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世界怪魚釣行記 (扶桑社BOOKS)

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