思い立ったが絶景 世界168名所を旅してわかったリアルベスト (朝日新書)
- 作者: 吉田友和
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2016/03/11
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
思い立ったが絶景 世界168名所を旅してわかったリアルベスト (朝日新書)
- 作者: 吉田友和
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2016/04/20
- メディア: Kindle版
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内容(「BOOK」データベースより)
有名な絶景は数あれど、写真を見るだけで満足してはいないだろうか。「行きたいなあ」とうずうずしてきたら、それが絶景旅のタイミングだ。本当にすごいところはどこ?限られたお金と時間で楽しむには?読み終えたら、きっと旅の計画を立てたくなる。
『3日もあれば海外旅行』(光文社新書)などの著書がある「旅のエキスパート」による「絶景」論。
たしかに、ここ数年、絶景ブームという感じで、世界や日本の「絶景」を集めた旅行ガイドや写真集を書店でよく見かけます。
まあ、実際にはなかなか行けないからねえ、なんてページをめくってみるのですが、いまは「物理的に行くことが不可能」って場所は、世界のなかでもごくわずかしかなくて、「お金と時間とやる気さえあれば、南極大陸にだって行ける」のですよね。
「行ける」と「行く」には、けっこうな距離があるのも事実なのですが。
この本の前半部は、その「絶景」ブームを踏まえての「絶景本の分析」が主になっています。
いま、日本で出版されている「絶景本」で人気の場所はどこなのか? どういう背景があって、絶景がブームになっているのか?
著者は23冊もの「絶景本」を集めて、そこで紹介されている絶景のランキングをつくっているのです。
最も多くの絶景本に掲載されていたスポットはどこなのか――。
ウユニ塩湖、カッパドキア、ギアナ高地。
栄えある第一位に輝いたのは、ずばりこの三箇所である。
著者は、もちろんこの3箇所に行った経験があり、それぞれの印象や体験を書いています。
正直、この3箇所に関しては、旅行本好きの僕にとっても「行ったことはないけれど、このあたりが上位なんだろうな」という予想通りの結果ではありました。
(行ってから言えよ、って話なのですが、旅行本をたくさん読んでいると、「行ったつもり」になってしまいがちなんですよね。「絶景本」って、ある意味「トラベルポルノ」みたいなものかもしれません)
すばらしい景色であることと、到着するまでの経路が、ちょっと想像しにくいスポット、というのは、いまの「絶景」なのかもしれませんね。
「行きにくさ」みたいなのも、「絶景」の重要な要素なのです。
そのあと、著者は自選の「絶景ランキング」を紹介していて、これがこの新書のいちばんの読みどころだと思います。
よく知られた観光地から、そんなところを「観光」するのか、という場所まで、行ってみた人の実感がこめられた感想になっています。
イスラエルのエルサレムがランクインしていて、こんなふうに書かれています。
行ってみて驚愕だったのが、それぞれの宗教ごとに住むエリアが明確に線引きされていること。ユダヤ人街からアラブ人街へと一歩足を踏み出すと、世界がガラリと変わった。まるで国境を越えて別の国へ移動したかのような錯覚を抱くほど。
これぞ絶景と感じたのは、礼拝者で埋め尽くされた「嘆きの壁」だ。金曜の夕暮れどき、敬虔なユダヤ教徒たちが続々と集まってくる。彼らが身にまとう漆黒のマントのような衣装が、まるでおとぎの国から飛び出てきたようで、現実感を喪失させる。
ちなみに、著者が行ったときには、拍子抜けするほど緊張感はなかったそうです。
もちろん、そのときの情勢次第、ではあるのだろうけれど。
こういうのは「旅慣れた人が面白いと思う場所」なのかもしれません。
でも、旅慣れているとは言いがたい僕も、行ってみたいな、と思いました。
この本の後半は、著者が中国の絶景「九寨溝(きゅうさいこう)・黄龍(こうりゅう)」を旅したときの詳細なレポートになっているのですが、そのなかで「中国の人にとっては、この絶景も身近な観光地なのではないか」という話をされています。
あまり近くにあったり、観光地化されすぎていると、ありがたみがないのも事実なのです。
絶景といっても、所詮は金を払って観光する対象にすぎない。昨日黄龍でそのことに気がつかされたが、九寨溝もやはり同様らしい。いざ突入するにあたって、まず感じたのが、そう、入場料の高さだった。
まるで旅行会社のオフィスのようなしっかりとした建物のチケット売り場で、大人一人分の入場料として支払った金額は三百十元。日本円にして6000円近い。正直、べらぼうな高値だと思ったが、ここまで来て引き返すわけにもいかない。
「ディズニーランドの入場料とほぼ同じぐらいかな」
などとブツブツ文句を言いながら入場ゲートへ向かう。すると、入場ゲートの外観もまるで遊園地のようなつくりで、さらに唖然とさせられる。
これを読んで、観光地の入場料6000円って、高いな!と驚いたのと同時に、そんな金額でも大勢の観光客が訪れるほど、中国に中流〜富裕層が増えたのだな、と実感しました。
後半の旅行記は、わざわざ新書の3分の1くらいのページをこれで埋めなくても……という感じではあったのです。
でも、絶景旅行に興味がある人は「本当に行った人の絶景ランキング」として、参考にできるのではないかと思います。