- 作者: 若竹七海
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内容紹介
有能だが不運すぎる女探偵・葉村晶シリーズ第4弾。
苦境にあっても決してへこたれず、ユーモアを忘れない、史上最もタフな探偵の最新作。
〈甘いミステリ・フェア〉〈サマーホリデー・ミステリ・フェア〉〈風邪ミステリ・フェア〉〈学者ミステリ・フェア〉〈クリスマス・ミッドナイトパーティー〉など、各回を彩るユニークなミステリの薀蓄も楽しめます。
好評の「富山店長のミステリ紹介ふたたび」も収録。
解説は大矢博子氏。
このシリーズを読むたびに、「ああ、僕がミステリマニアだったら、もっとこの作品の「小ネタ」を堪能できるのになあ、と少しだけ悔しくなります。
でも、そんな「『このミス』上位で気になる本くらいは、おさえておく、というミステリ読み」の僕も、この『静かな炎天』は、けっこう楽しめました。
葉村晶シリーズの前作、『さよならの手口』も読んだのですが、面白かったものの、かなり複雑な謎解きになっていて、「えっ、で、この人は本当は誰だったの?」と混乱してしまったんですよね。
今作は短編集なので、『さよならの手口』よりはシンプルなつくりになっており、「ミステリに自信がない人」には、こちらのほうが読みやすいかもしれません。
個人的には、表題作『静かな炎天』の「なんだかすべてがうまくいっているときの気持ち悪さ」の描写に、すごく魅かれたんですよね。
僕がネガティブ思考だからなのでしょうけど、うまくいっているときって、「これはおかしい、自分らしくない、何か裏があるんじゃないか?」と、かえって不安になるんだよなあ。
だからといって、全然うまくいっていないときは「なんでこんなにやることなすことうまくいかなんだ……」と落ち込んでしまうわけで、結局、どちらにしても、という話なんですけどね。
『聖夜プラス1』も、読んでいて、「ついてないというか、頼み事を断れないというか……」と苦笑しながら読みました。
『血の凶作』は、僕にとっては「ややこしくなりすぎ」だったかな。
この短編集を読んでいると、フィリップ・マーロウのことを思い出します。
マーロウもやたらと巻き込まれる人で、頼み事を断れない、そして、いつも自分の行動にツッコミを入れないと気が済まない、そんな探偵でした。
今作で、すごいな、と思ったのは、恋愛的な要素がほとんど感じられなかったことなんですよ。
探偵(役)が女性の場合、なんのかんの言っても、おばあちゃんでもないかぎり、仲良しの男性が出てくることが多いのです。
ところが、葉村晶は、ちゃんと「生活」をしているけれど、少なくともいまは「恋愛臭」みたいなものはない。
ああ、「恋愛」を無理に絡めなくても、面白いミステリって、書けるんだよな、って。
ただ、ミステリの蘊蓄が語られていたり、ちょっと謎解きの経過が複雑なものがあったりするのも事実なので、「日頃あまり本を読まない人が、アメトークの『読書芸人』で紹介されていたからと手に取るには、ちょっとハードルが高いのではないか」という気はします。
読み始めたら、けっこうすんなり読めてしまうのかもしれないけれど。
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