Kindle版もあります。
“底辺でも自分らしく生きられる”
30歳までどん底ニートだった私が、
異国の地で駐在員になって
生きづらさから解放された話。<収録内容>
第1章 どん底ニート、実家で病を患う
第2章 ゼロスキルでもアメリカ移住、キラキラのないNY生活
第3章 コロナ禍でクビに! 結局なんとかなった
第4章 アメリカで学んだ節約暮らし
第5章 ラスベガスで在宅勤務、YouTuber になる
第6章 ギリギリ消耗しない生き方
and more……!!!
書店で見かけて購入。「消耗しない生き方」という言葉には、消耗しっぱなしの僕を惹きつけるものがあったのです。
著者は、『US生活&旅行』という動画を配信しているYouTuberなのですが、僕はこの本を読むまで、この方と動画を知りませんでした。
この本を読んで、何本か動画を見てみたのですが、YouTube界は広く、まだまだ僕の知らないコンテンツがたくさんあるなあ、と思い知らされました。
僕自身がふだん見ているYouTubeの動画は、結構賑やかな感じのものが多いのですが、こういう落ち着いた雰囲気の動画もいいですね。
死ぬまでに、一度は飛行機のファーストクラスに乗ってみたいものだなあ、と思います。でも、「そのお金があったら、最新のゲーミングノートPC買えるよなあ」とか、考えてしまうんですよね。
さて、この本なのですが、著者は、いわゆる「Fラン大学(本人談)」から就職し、「とくに希望とかはないまま、なんとなく就職した」そうです。
その会社で営業の仕事になじめず、それでも「3年くらいは頑張ってみよう」としたものの、病気でリタイアしてしまいました。
ようやく病状が安定した20代後半で、人生を再起動するために何かしなければ、と悩んだ結果、アメリカに語学留学をして、その流れでラスベガスの日系旅行会社に勤めることになったのです。
一般的には、12か月の「J1ビザ」で米国に滞在しているインターンの異動はございません。しかし、米国の日系旅行会社は慢性的に人手不足状態なのです。
私がインターンをしていた会社も中高年の社員が多く、当時30歳の私が最年少(今でも最年少)。同業他社を見ても、30歳以下はまずいません。
若手の採用ができず慢性的人手不足になっている原因は、お給料の安さです。
米国の平均年収は約6万ドル(日本円で約850万円程度)でございますが、日系の旅行会社は到底そのレベルに及びません。
欧州や中国など平均年収が高い国の旅行者をターゲットにしている旅行会社では給与レベルも高いですが、平均収入が低い日本人は旅行に使う金額も低くなりますので、日系旅行会社の収益はそう上がらず、私のような末端の社員の給与も低くなるわけでございます。
もちろん日本人にも富裕層はいらっしゃいますが、それがごく一部。全体的に見ると、日本円の価値が落ちていることもあり、残念ながら日系旅行会社の給与は低く、上向く要素もあまりございません。
具体的に言うなら、インターン時代の月の報酬は「日本の大学生が授業の合間にめちゃくちゃ頑張って1か月バイトした」っていうときくらいの金額でございます。
米国の若い人たちは給料がいいIT関連や金融関連企業を狙い、旅行業は選びません。そのため、米国の旅行会社はインターンシップ制度のビザスポンサーになってインターンを採用し、人を補充しているという側面もございます。
1年限定になってしまいますが、正社員やパートタイムで人を雇うよりも時給を安く抑えられるからです。
そうでなければ、20代の大半をフリーターとして過ごした私に、面接のオファーが10件以上も届くわけがありません。
日本人がヨーロッパの高級ブランドショップで「爆買い」した時代は遠くなりにけり……と、若い頃『課長・島耕作』を読んで、「僕もサラリーマンになればよかった!」と夢想していた僕には、感慨深いものがあります。
日本は、すでに「物価も人件費も安く、良質のサービスが低価格で受けられる国」になってしまっていることを思い知らされます。
海外に留学する日本人が減っている、という話をよく耳にするのですが、学ぼうという意欲だけではなく、円安もあって留学できるお金がない、というのもその理由なのでしょう。
「海外勤務」といえば、エリートコースのイメージがあるのですが、著者の勤務先は、おおらかで働きやすい職場ではあったものの、高給とはいえず、かなりの節約生活を送らなければならなかったようです。
その節約術や、海外のマイレージシステムをうまく利用してちょっとした贅沢をする方法なども紹介されています。
個人的には、マイレージは貯めたいけれど、そのためにいくつも口座やカードを作ったり、加入したり辞めたりするのは、なんか面倒だし嫌だな、とは思いました。
結局、「お得なシステムを利用する」には、上客であるか、マメに立ち回るしかないのかもしれません。
著者は自らの仕事へのスタンスについて、こう書いておられます。
旅行業におけるトラブルは、天候不順や交通機関の乱れなど、どうにもコントロールできない部分があるため、スキルやキャリアを積んでも発生するものです。トラブルの電話は24時間入る可能性がありますし、なかにはモンスタークレーマーと思えてしまうお客さまもおられます。
だからでしょうか、若い人の中には、旅が好きで旅行業についたのに、トラブル対応に疲れてしまい転職してしまう人が少なくありません。旅行業に限らず、どんな仕事にも楽しい陽の部分があれば、きつく感じる陰の部分があります。
「旅行が好きだからこの仕事を選んだのに、時間外対応やクレームが多くて……」と陰の部分が大きく見え始めてしまう人は、仕事に対する理想、目標や期待が大き過ぎるのかもしれません。
私も若い頃は「営業成績を伸ばしたい」「仕事で評価されたい」と期待ばかりして、思い通りに物事が運ばないと落ち込んでいました。
何事でも、人間は期待していたものを下回る結果が現実として突きつけられると、ひどく落ち込むものでございます。
バセドウ病が治ったあたりから、私はハードルを下げると言いますか、ハードルを設けない、つまり目標や夢を設定したり、何かに期待することはやめました。自分に負荷をかけ、高いハードルを乗り越えていくタイプの人もいるでしょう。
しかし私は、夢や目標を設定せず、小さなことにでも目の前にあるできることをコツコツと積み重ねていくほうが性に合っていたのです。
目標を持たずに生活し、仕事をするのは外道と考える方もいらしゃると思いますが、私は目標をおかず、大きな期待をせず、身近なできることを淡々とやっていたほうが、物事が終わったときに良い結果が出ていたケースが圧倒的に多かったです。
ああ、これは僕もそうだなあ、と。
世の中では、大きな夢や理想に向かって「圧倒的な努力」をしていく人がもてはやされがちですが、実際は、著者のように「身近なできることを淡々とやる」ほうが多数派だし、世の中を下支えしているのです。
正直、この本を読みながら、「なんか普通のことばかり書いてあるな」と思っていました。
でも、ネットの普及によって、いちばん変わったのは「普通の人が、普通に生きている様子」が発信されることになったことなのかもしれません。
「普通」に見える人でも、それぞれ「普通じゃない部分」を抱えながらも、外からみれば「珍しくもない人生」を過ごしているのです。
最近のネットでは、黎明期ほど「普通の人生」に目が向けられなくなってきた(既存のマスメディア化してきた)ようにも感じますが。
仕事が終わってから2、3時間編集作業ができればいいほうですので、動画をアップするのは、早い時で2、3週間に1本。仕事が忙しい時は1か月に1本程度になってしまいます。
YouTubeでの収入は、本業の収入のや3分の1〜半分くらいでしょうか。YouTubeだけで食べていくのは到底難しいですが、医療費の多い社会でございますので任意医療保険など生活費の足しとしております。他余ったら、次のYouTube動画の制作資金や、撮影機材更新に充てております。
専業YouTuberになろうと思ったことはないので、今のペースで視聴者の方に喜んでいただける動画をアップし、両親にも元気な姿を伝えられたら幸いでございます。
著者は人気YouTuberですが、収益についてはこのくらいなんですね。もっと更新すれば、専業YouTuberとしてもやっていけそうな気もしますが、専業となると話題作りのためにいろいろ飾らなければならないところも多くなり、続けていくのはかえって難しくなる可能性もありそうです。
僕自身にとっては、すごく参考になる、とか、役に立つ、という内容ではないのですが、こういうふうに生きていくこともできる世の中は、案外懐が広いのかもしれないな、と思える本でした。