琥珀色の戯言

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【読書感想】スーパーファミコン&ゲームボーイ発売中止ゲーム図鑑 ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

幻の作品たち約200本をまとめて紹介!

ゲーム雑誌や展示会、チラシなどで告知されながら、実際には発売に至らなかったゲームたちを再発掘!
1990年に発売されて瞬く間に家庭用ゲームの主役となったスーパーファミコンと、1989年に発売されて長く愛された携帯ゲーム機のゲームボーイ。2機種の発売止タイトル、あわせて約200本を一挙紹介!

【第1章 スーパーファミコン
スーパーファミコンで発売されるはずだった発売中止ゲーム125タイトルを掲載(発表媒体などが不明で噂レベルのものを合わせると132本)。

【第2章 ゲームボーイ
ゲームボーイ&ゲームボーイカラーで発売されるはずだった発売中止ゲーム63タイトルを掲載(発表媒体などが不明で噂レベルのものを合わせると67本)。


 2021年4月に発売され、ファミコン世代ではかなり話題になった、『ファミコン発売中止ゲーム図鑑』の続刊、スーパーファミコンゲームボーイゲームボーイカラー)版です。

fujipon.hatenadiary.com


 僕はテレビゲームそのものだけではなく、ゲーム雑誌も大好きだったので、新作ゲーム情報などもかなり精読していたのですが、前著の『ファミコン発売中止ゲーム図鑑』には、「そうそう、こんなゲームあった!結局出なかったなあ……」という作品が少なからずありました。
 でも、今回の『スーパーファミコンゲームボーイ』に関しては、ひととおり読んでみて、登場キャラクターがアメリカでは人気があったものの日本市場では苦しいと判断され、NESファミコンの海外版)だけでの発売になったものを除けば、そんなに記憶に残っているものはなかったのです。
 ファミコン時代に比べると、ゲーム開発・販売が、ビジネスとして洗練されてきた、ということなのかもしれません。
 中には「ゲームそのものは完成していたと思われる」けれど、受注が少なかったり、市場の反応が鈍いとメーカーが判断して「お蔵入り」になったと推測されるものもあります。
 
 しかし、こうしてさまざまな「発売されなかったタイトル」を眺めていると、「発売されたけれど、ほとんど話題にならず、売れなかったゲーム」よりも、「発売されなかったゲーム」の方が、時間が経ってみると興味の対象になるものかもしれませんね。
 ものすごくつまらない、破綻している状態ながら市場に出た作品は「クソゲー」として、ある意味多くの人に愛され、語られる存在にもなっています。
 そこそこ遊べるけれど、特徴のない佳作、みたいなのが一番忘れられてしまう。まあ、わざわざそういうゲームで遊びたい、という人も「コンプリートを目指すマニア」以外には、そんなにいないでしょうし。

 今作には、発売中止ゲームソフトのタイトルや開発中(と思われる)画面写真と共に、開発者インタビューや、アニメやマンガとタイアップしたゲームでは、その関連作品も断片的に紹介されていて、昔のゲーム雑誌の雰囲気を思い出しながら眺めていたのです。
 1990年代のゲーム雑誌を、それこそ、隅から隅まで読んでいないと書けない本であり、前作同様、資料的な価値は非常に高い。
 とはいえ、僕のようなファミコンスーパーファミコンゲームボーイ直撃世代、ゲーム雑誌の新作情報大好き!だった人間にしか刺さらないはずの本なんですよね。
 にもかかわらず、これだけ話題になったり、売れたりしているのは、あの頃の「ゲーム文化」の愛好家が僕が想像している以上に多いということなのでしょう。


 1994年4月に発売予定だった、光栄の『スペースフロンティア』。

 発売元は『信長の野望』をはじめ、世界中の戦史、そして陸海空とあらゆるテーマのSLG化で成功を収めた光栄。プレイヤーは宇宙開発会社の経営者となり、月や火星など7つの惑星で人口や産業を発展させるのが目的。なお当初は『スペースマネージメント』という仮題で発売予定に掲載されていた。


 このゲーム、画面写真も掲載されていて、けっこう面白そうなんですよ。
 光栄(KOEI)も近年は、シミュレーションゲームの開発を『信長の野望』『三國志』『ウイニングポスト』、あとはスマートフォンソーシャルゲームに集約しているのですが、以前は、『ジンギスカン』シリーズや『維新の嵐』などのシリーズや、ナポレオン戦争を題材にした『ランぺルール』に、源平合戦や航空業界の経営シミュレーションなど、さまざまなテーマを扱っていました。僕は時々、あの頃の光栄のシミュレーションゲームをまた遊んでみたくなるのです。

 また、少し前にニンテンドースイッチでリメイクされて話題になった『ファミコン探偵倶楽部』のシリーズ第3作『BS探偵倶楽部 雪に消えた過去』という作品も紹介されています。
 これは「未発売ゲーム」ではなくて、スーパーファミコンの衛星通信システム「サテラビュー」の番組の時間内だけプレイでき、メモリーパックに保存できないゲームだったのです。『ファミコン探偵倶楽部』の2作をプレイし、リメイクも買った僕としては、この第3作もなんらかの形でプレイできる日が来ることを願っております。
 「サテラビュー」に関連した「幻のゲームソフト」は少なからずあるみたいで、任天堂としては「サービス普及のために、サテラビューでしかできないキラーコンテンツ」を制作したものの、「サテラビュー」そのものがうまくいかなかったために、そのためのコンテンツも「消えた過去」になってしまったのです。


 また、現在でもハードを変えながら続いている『逆転裁判』シリーズ第1作の、こんな話も紹介されています。

 企画の前身が「裁判」と「生き残り」をかけた『サバイバン』というタイトルだったのはファンの間では有名。しかし、本作は当初はゲームボーイカラー用の企画として動いていた。制作直前にゲームボーイアドバンスが発表され、その性能を受けてハードを移行したことが2019年に明かされた。


 『サバイバン』という宇宙刑事みたいなタイトルで、ゲームボーイカラーで発売されていたら、ここまで息の長いシリーズになっていたかどうか。
 ゲームボーイカラーで発売中止となった『ポケモンピクロス』の項では、「一時は発売予定ゲームが一桁にまで減っていたゲームボーイ市場を『ポケモン』が復興させた」と書いてあって、ゲームボーイも『テトリス』が大ヒットしたものの、『ポケモン』までは、そんなに盛り上がってはいなかったことを思い出しました。『ポケットモンスター』は、携帯ゲーム機と通信を利用したゲームの未来を切り開いたのです。


 よくこんなマイナーな未発売ソフトの情報を集めたなあ、と感心するのと同時に、今も昔も、テレビゲームというのは「開発中の段階で、広くアピールされる商品」であることを思い出しました。
 完成し、発売日が決まってから「今度、こういうのが出ます!」と宣伝すればいいし、「商品」としては、そのほうが発売中止などのリスクを避けられるはずなのに、「開発中のゲームの情報」をユーザーは求め続けているし、メーカーもそれを出し続けているのですよね。


fujipon.hatenablog.com

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