琥珀色の戯言

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【読書感想】ファミコン発売中止ゲーム図鑑 ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

さまざまな事情から発売されなかったファミコンゲーム
幻の作品たちをまとめて紹介!

ゲーム雑誌の新作情報や発売予定リスト、各種広告物などで発表されながら、実際には発売に至らなかったゲームたち。ファミコン時代は特にお蔵入りとなるゲームが多く、その数は150本を超える。
開発の難航、売れ筋の変化などさまざまな理由から、開発中止・発売中止となった幻の作品たち。その情報を、各種資料から一挙紹介!
さらに、タイトル変更やデザイン変更などで発表当初から大きく変わったゲームも、多数掲載する!

【第1章 発売中止ゲーム】
雑誌やチラシなどでタイトルや画面が発表されながらもお蔵入りとなった発売中止ゲームを紹介。一部、企画内容が大幅に変更されたものや、発売元が異なるものも収録。収録本数: 151本(詳細不明のものも合わせると172本)。

【第2章 デザイン・タイトル変更】
発売前の記事や広告から内容に変更があったゲームを紹介。ゲーム内容がガラッと変わったものだけでなく、ゲーム内未使用のグラフィック、画面の細かい調整など間違い探しレベルのものも解説していく。収録本数: 167本。


 雑誌や広告で発表されたにもかかわらず、実際には発売されなかった「発売中止ゲーム」の紹介と、発表された時点から、タイトルやキャラクターデザイン、ゲームのジャンルなどが変更されたゲームの紹介が半分ずつ、という内容です。

 タイトルに「図鑑」とあるように、「ファミコンの発売中止ソフトを網羅する」ための書籍で、そのソフトの具体的な内容や、発売中止になった経緯などに関して、詳しく書かれていません。


 ファミコン以外のものも含めて、「どのようにして、発売予定だったゲームは暗礁に乗り上げ、発売中止になるのか?」を知りたい人は、こちらの『幻の未発売ゲームを追え!』のほうが面白いかもしれません。


fujipon.hatenadiary.com


 ファミコンゲーム雑誌にたとえると、採りあげられている数は少ないけれど、個々のゲームの関係者への取材がなされている『幻の未発売ゲームを追え!』が『ファミ通』だとすれば、カタログ的であまり主観が入っていないこの『ファミコン発売中止ゲーム図鑑』は、『ファミリーコンピュータMagazine』みたいな感じでした。
 読んでいて、「面白い」かと言われると、正直ちょっと微妙なところもあります。「発売中止」になるくらいですから、あの時代にファミコン雑誌毎号熟読していた僕でさえ、当時の思い出といっても、「そういえば、そんなタイトルあったなあ……」という程度の懐かしさしかないものがほとんどなんですよね。

 第2章の「デザイン・タイトル変更作品」については、読んでいて、「よくこれだけのものを集めたな」と、学術的な感動はあるのです。
 でも、「発売前の画面写真と製品版では、主人公のキャラクターがこんなに変化している!」というような内容を延々と見せられても、「そもそも、このゲーム自体やったことがないし、記憶にもないからなあ……」と、惰性で読み進めていく感じでした。

 いやほんと「史料的な価値は高い」と思うのですが……

 最初に「ファミコン初の発売中止ゲーム」として、『ドンキーコングの音楽遊び』が紹介されていて、そういえばこれ、出なかったんだなあ、と思い出しました。

 ファミコンが誕生した1983年、10タイトルの発売が予定されており、本作だけがお蔵入りになった。その要因は諸説あり、2コンマイクの技術的問題から完成に至らなかったとの説も。とはいえ任天堂からは、中止の真相について何も発表されておらず、真相は闇の中。


 「いつのまにか発売予定リストから消えてしまうゲーム」って、昔からたくさんあったんですよね。
 この本に出てくるゲームにも、「あまりにも規模が大きくなりすぎて、完成のメドが立たなくなった」「開発が遅れて、タイアップするはずだったテレビアニメや映画の公開に間に合わず、旬を逃したと判断された」「時代がファミコンからスーパーファミコンに移ってしまった」(『ファイナルファンタジー4』は、当初ファミコンで発売される予定だったですが、スーパーファミコンが主力となり、結局、スーパーファミコンで『ファイナルファンタジー5』としてアナウンスされていた作品が『ファイナルファンタジー4』としてスーパーファミコンで発売され、ファミコン版の『4』は発売中止になった、というのをこの本を読んで思い出しました)「開発はされたが、日本では世界観やキャラクターがウケないと判断され、アメリカのNESニンテンドーエンターテインメントシステム)では発売されたが、日本での発売は見送られた、など、さまざまな「発売中止の理由」が挙げられています。

 NES版では発売されていた『ストライダー飛竜』や『バットマンリターンズ』の画面写真をみると、けっこう面白そうで、日本でもそこそこ売れたのではないか、もし発売されていたら、有野課長が挑戦していたかもしれないな、と思うんですよ。
 でも、当時は「洋ゲー」って、大味で難易度がやたらと高くて面白くない、というイメージがあったんだよなあ。
 ゲーム業界で、トップを走っていたはずの日本は、いつのまにか「ガラパゴス化」してしまったのです。

 バンダイの『ルーンマスター』とか堀井雄二さん監修で期待していたのに、結局、出なかったんですよね。
 いまやカルト的な人気(?)を誇る『ラブクエスト』にファミコンで出る予定だったのか……

 なんのかんの言っても、あの頃のゲームについて語るのは楽しいし、画面写真をみているだけで、けっこう幸せな気分になります。
 ファミコン時代は、「どんなゲームでも、出せば売れる」ようなイメージがあったのですが、開発する側には、さまざまな思惑があったのです。
 今、これを読むと、「とりあえず、(日本でも)発売してみればよかったのに」というゲームもたくさんあるのだけれど、本当にあの時代に出ていたら、「何このクソゲー!」とか言っていたような気がするなあ。


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