琥珀色の戯言

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【映画感想】君の膵臓をたべたい ☆☆☆☆

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高校の同級生・山内桜良(浜辺美波)がひそかにつづる闘病日記「共病文庫」を偶然見つけた僕(北村匠海)は、彼女が膵臓(すいぞう)の病気で余命わずかなことを知り、一緒に過ごすようになる。彼女の言葉をきっかけに母校の教師となった僕(小栗旬)は、桜良が亡くなってから12年後、教え子と会話をしていた際に、桜良と過ごした数か月を思い出す。一方、結婚を控えた桜良の親友・恭子(北川景子)も、桜良との日々を思い返し……。


kimisui.jp


 2017年の映画館での19作目。夏休み中+行ったシネコンのサービスデーということもあり、観客は80人くらいと賑わっていました。
 まあ、どうせお涙頂戴ものの青春映画で、『セカチュー(世界の中心で、愛をさけぶ)』みたいなもんだろ、とは思っていたのだが、なかなか評判が良いのと、『トランスフォーマー』って気分でもないのとで、これを選んだのです。
 原作に対しては、「こんな子に向こうから言い寄られて翻弄されるっていうのは、内向的な男子の夢だよね、でも、実際にそんな女の子いないから!感じの良い子はみんなイケメンに行くから!
 そもそも僕は男子校だったし、はいはい」みたいな斜に構えて読んでいたのだよなあ。
 映画版でも、主人公の男の子はけっこうイケメンだし、大人になったら小栗旬だぞ!てめー人生スーパーイージーモードじゃないかっ!
 

 すみません、私怨というか、うらみそねみねたみを書き連ねてしまいました。
 でも、この映画、そんな僕でも楽しめました。すごく良かったです。
 

 今回、この映画を観て痛感したのは、人は文章で書かれた物語は比較的客観的に受け取ることができるけれど、映像で観せられると弱い、ということなんですよ。
 『世界の中心で、愛をさけぶ』も、小説を読んだときには、「この時代にベタな難病ものかよ、しかもそれがこんなに大ヒットするなんて」と思っていたのです。でも、映画で長澤まさみさんの闘病姿を観ると号泣してしまいました。
 

 正直、こんなことも考えてしまったんですよね。
jp.wsj.com
 この3歳の男の子が亡くなった写真が、ヨーロッパの世論を動かし、難民受け入れに消極的だった国の姿勢を変えた。
 同じような悲劇は、それまでもたくさん起こっていたのです。
 それでも、「実際に苦しんでいるひとりの子どもの写真や映像」は、新聞で伝えられる何十人、何百人の死よりも、人びとの心に訴える力が強い。
 人は「データとして伝えられる客観的な事実」よりも、「自分が目の当たりにしたもの」に影響されやすい。


 そんなことを思いつつも、僕はこの映画から、目が離せませんでした。
 原作は読んでいるから、結果を知っているはずなのに。
 浜辺美波さん、かわいいじゃねえか。表情の変化がまた良い。ほんの少し無理しているというか、陰があるのも良い。


 正直、僕が高校生だったら、こんなの見せられたら、「こんな女の子、いるわけないだろ、ベタな難病もので感動スイッチ連射しようとしやがって!」と苛立つと思います。

 でも、僕はもう40代半ばのオッサンなので、ファンタジー小説みたいなものなんですよね、これ。
 『ロード・オブ・ザ・リング』に、エルフとかドワーフとかホビットなんていねえよ!なんて言うのは不粋じゃないか。
 浜辺さんが演じる山内桜良を観るための2時間。だが、それがいい、それでいい。


 余命短い病人のはずなのにあまりやつれていなくても、この映画版で付け足された「その後」をみると、桜良が周囲の人に与えた影響とは何だったのか、と言いたくなっても、結局、危なくなさそうな男子を翻弄してみたかっただけなのではないか、と疑問になっても、浜辺美波さんが魅力的だから許す。すべて許す。
 しかし、『タイタニック』でも長年疑問だったのだけれど、なんで映画って、いちいち「後日談」を付け加えたり、「登場人物が、昔を振り返る形式」にしたがるのだろうか。少なくとも、この映画に関しては、「こいつら、結局12年停滞してたのか?」としか思えない。いやまあ、急に明るい社交的な人物になったら、それはそれで嘘くささ全開なんだけど。


 僕が高校生のときにこの映画を観ていたら、もう少し心を開いてみよう、と思ったかな。
 でも、そうやって、「人と触れ合うことに喜びを感じていた」はずの桜良がああいうことになってしまうのは、作者の皮肉なのだろうか。
 他者と積極的に接しようとするならば、「無差別に振りかざされる悪意」をぶつけられるリスクも高くなるのだし。
 「そういうリスクを乗り越えて、人は人とつながるべき」という主張なのか、それとも「意外性」を狙っただけなのか。
 いろいろ、「なんで?」って言いたくなる作品ではあるんですよ。
 でも、長年いろんなコンテンツに接してみて感じるのは、ずっと心に残るのは、そういう「のどごしの悪いところ」であることも多いのだよなあ。
 

 それにしても、こんなに「病気を描かない難病もの」っていうのも珍しい。
 個人的には、浜辺美波さんの勝ち!って感じです。


fujipon.hatenadiary.com

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