琥珀色の戯言

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【読書感想】仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

内容紹介
生存率51%! あなたは生き残る側? どうすれば仕事が消滅しても人間は幸福か? いま最も必須の知識! 2025年 まずドライバーの仕事が消滅。金融ではAIファンドマネジャーが人間を駆逐。2030年 銀行員、裁判官、弁護士助手など専門的頭脳労働者がAIに換わる。2035年 経営者、中間管理職、研究者、クリエイターもAIに


 「AIやロボットによって失われる人間の仕事」というのを、新聞や雑誌、ネットなどで見たことがある人は多いのではないでしょうか。
 「マックジョブ」と揶揄されるようなマニュアル通りに動けば良いサービスの仕事や工場での単純労働などがまず駆逐され、法律家や医療関係のような高度な知識や資格が必要とされる仕事がなくなるのは、かなり時間が経ってからになる。
 あるいは、芸術家などのクリエイティブな仕事は、なかなか機械には置き換えられない。
 ……と、僕も思っていたんですよね。
 自分の子供世代はともかく、いま40代半ばくらいの僕は、なんとか逃げ切れるかな、子供たちは、どんな仕事をやればいいのだろうな、って(それこそ、子供たちにとっては余計なお世話でしょうけど)。


 著者は、人間の仕事がAIやロボットに奪われていく「タイムスケジュール」をこう想定しています。

 2025年には世界中でタクシードライバーや長距離トラックのドライバーの仕事が消滅する。セルフドライビングカー、つまり完全自動で運転が行われる自動車の登場がその原因だ。日本国内ではこれによる消失する仕事は123万人の雇用に相当する。
 同じ頃、デイトレーダーの仕事は絶滅する。株式のトレードでもFXのトレードでも人間はAIに勝てなくなるからだ。金融機関でも人間のトレーダーはAIにとってのカモに堕ちていく。


 2030年頃にはパラリーガルと呼ばれる弁護士助手の仕事、銀行の融資担当者、裁判官といった、主に「頭を使う専門家の仕事」がAIにとって代わられ消失する。
 頭を使う専門家の仕事の最もたるものが学者である。2030年代を境に、ノーベル物理学賞はAIしか受賞できなくなるだろう。


 2035年頃になるとAIは汎用的な思考ができるようになり、その結果、研究者やクリエイターといった仕事も消失していく。世界中の病院や医院では最終的な診断を下すのは医者ではなくAIになる。そして会社では判断や評価を下す管理職の仕事もいらなくなるだろう。
 同じく2035年頃にはロボットの足と単純な手の性能が人間の能力に近づく。ロボットを導入することで倉庫の中の作業や宅配などの肉体労働の仕事の一部はロボットに移行していくだろう。


 2045年から2050年頃にはいよいよ頭脳から指先の動きまで人間と同じ能力を持つロボットが実用化されるようになる。そしてそのようなAI搭載ロボットの価格が数百万円程度にまで下がったときには、人類の90%の仕事が失われることになる。


 冷静に考えてみると、いまから30年前に僕が想像していた「30年後の世界」と、いま、2017年はかなり違ったものになっていますから、こういうのは、あくまでも「想像」にしか過ぎないんですけどね。
 著者もこの本のなかで、トラックの自動運転にとても、アメリカではトラックドライバー協会の政治的な影響力が強いので、自動運転化はそう簡単にはいかない可能性が高い、と仰っています。
 どんどん人間の仕事がなくなるような技術革新を、既成勢力の側がそう簡単に受け入れるとも思えません。
 とはいえ、技術的な進歩のスピードには、驚くべきものがあるんですよね。
 自動運転車も、かなり実用レベルに近づいてきているようです。
 そして、ひとつの仕事が人間の手から離れるというのは、その仕事に従事する人たちだけの問題ではありません。

 20年以内になくなる仕事のリストを見ると、なくなるのは「機械に置き換わる仕事」だけではない。そもそもいらなくなる仕事というのが結構な数、存在する。
 実はここが「仕事消滅」の本当に怖いところなのだ。
 ひとつわかりやすい例を挙げてみよう。自動運転者(セルフドライビングカー)が登場し、タクシーやバス、長距離トラックの運転手が失業したとする。仮に日本全国で123万人のドライバーが失業したとする。これが直接機械に置き換わることでなくなる仕事だ。
 ところがこの自動運転車は別の失業を生み出す。自動車保険業界が消えるのだ。
 人間という不正確で不注意な者が運転するから交通事故は起きるのであって、AIが運転を始めれば自動車事故はほとんど起きなくなる。そうなれば自動車保険はいらなくなる。少なくとも審査不要の自賠責保険だけで補償は十分になる。
 だから保険業界で働く人の仕事がいらなくなる。


 そうなると、運転免許はいらない、という人も増えるでしょうし(安全性を考えると、自動運転車と人間が運転する車が混在するよりは、すべて自動運転車にしてしまったほうが、たぶん、事故を起こすリスクは減るんですよね)、自動車学校というのも縮小、消失してしまいそうです。
 

 著者は、AIやロボットでは、「足」「脳」「腕」「顔」「指」の順に人間レベルの機能が完成していくだろうという、現時点での専門家の予測を紹介しています。
 「高度な知的労働」よりも、「指先の微妙な感覚や精緻な動き」のほうが、機械で再現するには難易度が高いのです。
 

 2040年以降の世界に残された人間の仕事は何か?
 知的労働の半分はなくなるそして人類に残された仕事の大半は、ロボットより優れた指先が必要な単純労働の仕事に絞られていくようになるだろう。
 本書の予測するシナリオ通りにAIとロボットが発展すれば、2035年には、人類に残されたロボットに対する唯一の優位は「指先の器用さ」だけになる。たとえば2035年の世界では、バティシエが菓子を造形するような仕事が「高度な技能職」として世界で一番給料が高いレベルの仕事になるかもしれない。
 もっと大衆的な仕事で言えば、コンビニの店員のように大量の商品をバックヤードから店頭に運んで陳列するような仕事は、指が未熟なロボットでは無理だろう。マクドナルドの仕事も有望だ。熱い鉄板の上にミートを並べ、焼き目をつけてひっくり返しながら、バンズにケチャップとマスタードをドレスして、その上にピクルスを載せる。手先が器用でなければそう簡単にはできない仕事だ。「スマイル」という、ロボットにはまだ難しい表情が重要な付加価値となる仕事も、2035年の時点では残されているだろう。
 日本の産業界ではマクドナルドの仕事のように、マニュアル通りに行うことで任務を達成できる仕事のことを「マックジョブ」と呼んでいる。2035年以降の世界では、人類に残されたわずかなマックジョブを、労働力人口全体が競うように奪い合う。そんな時代がやってくるのだ。


 僕はずっと「ホワイトカラーの仕事のほうが機械に置き換えられるのに時間がかかる」と思い込んでいたのですが、実際は、指先の微妙な感覚(触っただけでものの種類や固さ、摑むのに適当な力などがわかる)のほうが、いまの機械にとっては「難易度が高い」のです。たくさんの情報の処理や価値判断などは、むしろ、AIの得意分野ともいえます。
 そして、「マックジョブ」のほうが、知的労働とされる専門職よりも、現状では安いコストで人を雇えるだけに、あえて機械に置き換えるメリットに乏しい、という面もあるのです。
 飲食産業での人手不足の状況が慢性的になれば、そういうところからロボットが利用されるようになるかもしれませんが。


 このままでは、人類には仕事がなくなってしまう。
 そのとき、人類はどうすれば良いのか?
 遊んで暮らす、ということが現実的に可能なのか?
 そもそも、仕事がなくなれば収入も途絶え、生きていけなくなってしまうのではないか?


 著者は、現時点での未来予想図と、それに対して世界がとるべき方策をいくつか提示しています。
 うまくやれば、人類は、「働かなくても好きなことをして生きていける」ようになるかもしれないし、悪い方向に行けば、格差がより一層拡大して、「機械を打ち壊して、仕事を確保しなければならなくなる」こともありえるのです。
 ただ、これからの時代というのは、「AIやロボットはどんどん進化するけれど、それを使う、あるいはその利益を享受するのは、肉体的にも精神的にも限界を抱えている人間である」ということが、最大のボトルネックになってくるような気がします。
 SF小説的ではありますが、「AIにとって最良の選択をするためには、人間が邪魔、というか、人間は非効率的すぎる」のではなかろうか。

 
 まあでも、「これまでの人類が見たこともない世界」が未来に待っているというのは、それはそれで興味深いものではありますよね。
 人類が存続している限り、未来というのは、そういうものであるのだとしても。


fujipon.hatenadiary.com
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