琥珀色の戯言

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「ごちそうさま」が不快な店員、客のボヤキに過剰反応する社長


参考リンク(1):店員に「ありがとう」「ごちそうさま」と言う奴の気持ち悪さは異常 働くモノニュース : 人生VIP職人ブログwww


発端はこのエントリでした。
僕は大概、食事をして会計を終えたあと「ごちそうさまでした」と言うので、「えっ、気持ち悪がられているのか……」と、けっこうショックだったんですよ。
家族で食事しているときはさておき、ひとりで食事をしたあとなんかは、「自分がどう見られているか」って、ちょっと気になるじゃないですか。


ちなみに、昔からそうしていたわけじゃなくて、大学に入ったときに、先輩がそうしているのをみて、「なんかカッコいいな」と思ったので、真似するようになりました。
「先にごちそうさまって言っておけば、不快に思われないんじゃないか?」という自己防衛の気持ちもあって。

まあ、こう書きながらも、僕自身も、「たぶん、大部分の店員さんは、「ごちそうさまでした」が不快じゃないはずだ、と楽観してもいるんですよ。
そう言う人のナルシズムみたいなのは「気持ち悪い」かもしれないけれども、少なくとも「ごちそうさま」って言って帰っていく人が、問題を起こす事は少ないはずだし。
でも、女性の場合とか,僕のようなキモイ中年男が「ごちそうさま」ってやると、「うわ、なんかカッコつけてて気持ち悪い」のかやっぱり。

そう考えると、「ごちそうさまでした」って言うのも、なんか躊躇ってしまいますね。


で、次に読んだのがこれ。
参考リンク(2):職業明示するなら自主規制して欲しいわー。(はてな匿名ダイアリー)


いやもう、これは僕自身もずっとなんとなく自覚しながらも、他人に指摘されると「日本に医者が何人いると思っているんだ!みんなそれぞれ違うにきまってるだろ!」と反論してしまうのですが、この「『ごちそうさま』を気持ち悪いという店員」の話を先に読んでいると、こういう「職業を明示して書くことのリスク」みたいなものを思い知らされるわけです。
「そりゃあ、個々の店員さんによって違うというのは、頭ではわかっているし、『ごちそうさま』嫌いは、たぶん10%もいないとと思うけど、その10%が目の前にいるこの人だという証拠はないしなあ……この人も、休憩時間に同僚と、「今日、キモイ客がいてさあ、『ごちそうさま』とか言ってるんだよ、笑える〜」とかやってるかも……なんて、要らぬ想像をしてしまうんですよ。
そんな話、聞かなきゃ気にしないのに。


だからといって、みんなが「営業トーク」とか「公式見解」しか述べないようなインターネットはつまらない、のだけれども、特定の集団に所属していることを明示して発言すると、それが「集団としての見解」最低でも、「その集団には、そういう考えを持っている人がいる」ことの証明にはなってしまうわけです。
それこそ、実名であれば、「○○はこんな仕事をしているくせに、けしからん!」という個人攻撃で済むのかもしれませんが……


その後、こんなのが、ネットで話題になっていました。
参考リンク(3):自社のサービス利用者に対して、社長自ら暴言で対応したZOZOTOWN(BLOGOS)


これを読みながら、僕は「なんだこのガラの悪い社長は……」と呆れていたんですよ。
しかも、自分のところに直接@で送られてきたのではなく、エゴサーチで見つけて、相手に突っかかっていったのだとか。
うーむ、知らんぷりしておけばいいのに。


ただ、この社長の口調や、商売人としては下の下だなあ、とは思うのだけれど、言っていることそのものは、そんなに悪いことじゃないと思うんですよ。
「買ったものがあなたのところには、それを届けてくれる人や輸送機関が必要で、それはもちろんタダじゃないです。その人たちへの報酬をあなたが払うのは、当然のことなんですよ」
Amazonやジャパネットは「送料無料」じゃないか、という意見もあるでしょうが、ああいう大きな企業だって、タダで宅急便の人たちが運んでいるわけじゃなくて、発生している運送料を料金のなかのどこかに埋め込んでいるだけのことです。
もちろん、スケールメリットというのがあって、「大口契約で運送料を安く設定してもらっている」とか「注文が多量に来るから、売り上げのなかから運送料を出すことができる」というような面もあるのですけど。


まあでもたしかに、1000円のものを買って、送料700円というのは、割高な感じがしますよね。僕だってちょっとボヤキたくなりそう。


世の中には、飲酒運転している人のツイートを見つけ出して通報する人なども存在していて、そういう場合「twitterに書くことは、世界に向けて発信することだから、そんなつもりじゃなかった、は通用しない」と多くの人が言うわけです。
このお客さんのツイートの中にある「詐欺」っていうのは、まあ、あんまり穏当な言葉じゃないというか、名誉毀損ではあるんですよね。
「まっとうな商売を、世界中に『詐欺だ!』って広められている」とも言える。
個人的には、「そんな目くじら立てなくても……」というのが僕の見解なのですが、「有名人」だったらどうなのか、とか、フォロワー何人以上だったら、「有名人扱い」になるのか、とか、まあ、いろいろ考えてみたりもするわけです。


「お客さんだからと言って、何を言ってもいい」かというと、そうじゃないと思うんですよ。
でも、日本人の(というか、僕は日本以外の世界をよく知らないので、とりあえず「日本人」として語ります)


「店は客に感謝すべきだ」その観念はみんなが共有していると思います。
でも、「お客は店に感謝すべきか?」ということについては、残念ながら、みんなそれぞれ考え方が違うようです。
「お金を払っている側なんだから、やってもらって当たり前」
それはちょっと傲慢な気がする。
気持ちのいいサービスには、感謝の言葉をかけてあげたい、そう思う客もたくさんいます。
しかしながら、店から「客は店に感謝しろよ」って押しつけられたら、「金払っているのに、そんなことを言われる筋合いはない!」と反発してしまうのも事実です。


個人的な意見としては、大人が若者や子どもに対する姿勢としては、「お客なんだから、『ごちそうさま』なんて言う必要はない」というよりも、「お金が介在するとしても、少なくとも自分が満足しているのなら、『ごちそうさま』って言ってあげると、お互いに気持ちが良いよ」というほうが好きだし、生きていきやすいのではないかと思います。
いまみたいに、どんどん安い給料で、非正規社員で補償もなく使われ、イライラしている店員が多い時代なのに(だからこそ、なのか?)、客の権利ばかりが重視されるというのは、かえって殺伐さを増すだけです。
この社会では、どんな人でも、お客になったり、店員側になったりするのですから。


『さいごの色街 飛田』という本のなかで、飛田で働く女性が、他の店の店員にやたらと厳しくあたる描写がありました。

 本書には書かなかったある女の子と、ミナミの居酒屋で会った時、彼女は生ビールのジョッキが汚れていたとアルバイトの若い女性を頭ごなしに怒り、料理の運び方がなっていない、客をバカにしているのかと声を荒らげた。自分が”上”の位置にいるとの誇示と、普段抑圧下にいるストレスの発露だと思う。そうした幼稚な言動は、時として、差別用語となって露呈する。「あいつは朝鮮や」「あいつら部落や」「(生活)保護をもらう奴はクズや」といった耳を疑う言葉を、飛田とその周辺で、幾度となく耳にした。

自分が苦しんでいる原因ではなく、自分よりさらに弱いものを責めることによって、心の平安を得ようとする人々。
人は、自分に余裕がないと、他者への「想像力」を失ってしまう……


僕はこの社長の「暴言」言い方が悪いし、商売人としては最低だと思うんですよ。
でも、ひとりの大人として、社長の言いたいこともわかるのです。


僕は、この事件を「この社長、脇が甘いな、バーカ!」っていうような視点だけじゃなくて、
給食費を払っているから『いただきます』なんて言う必要はない」って、次の世代に教えていいのか?
ということを考える機会にしたいな、と考えているのです。
「お金を払っているのに、感謝するなんて損だ!」
そういう人が増えていくのは、やっぱり悲しい。
それこそ、感謝するのは、タダなんだからさ。


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