琥珀色の戯言

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【読書感想】禁断の魔術 ガリレオ8 ☆☆☆☆


禁断の魔術―ガリレオ〈8〉

禁断の魔術―ガリレオ〈8〉

内容紹介
『虚像の道化師 ガリレオ7』を書き終えた時点で、今後ガリレオの短編を書くことはもうない、ラストを飾るにふさわしい出来映えだ、と思っていた著者が、「小説の神様というやつは、私が想像していた以上に気まぐれのようです。そのことをたっぷりと思い知らされた結果が、『禁断の魔術』ということになります」と語る最新刊。
「透視す」「曲球る」「念波る」「猛射つ」の4編収録。ガリレオ短編の最高峰登場。


内容(「BOOK」データベースより)
湯川が殺人を?「自業自得だ。教え子に正しく科学を教えてやれなかったことに対する罰だ」。ガリレオシリーズ初の完全書き下ろし。


ガリレオ』シリーズ第8弾。
このシリーズも、これでとりあえず一区切りとなるようです。


僕は『ガリレオ』シリーズは『真夏の方程式』以外はすべて読んでいるのですが、最初は「佐野史郎さんをイメージしていた」(東野圭吾さん談)という湯川准教授が、テレビドラマをきっかけに、どんどん福山雅治っぽく、スマートにカッコよくなっていると感じていました。
作品も「人情」とか「感動」の要素が強くなってきて、読後感も爽やかです。


その一方で、特徴であったはずの「科学トリック」はあんまり印象に残らなくなってきているんですよね。
どうも、科学トリックをきちんと描こうという東野さんの熱意も減退してきているようで、前作の『ガリレオ7』では、「まだ実用化されていない、想像上の機械」まで登場してきました。
これはもう「反則技」だなあ、と。


「科学トリック」の要素が薄まって、「人情ミステリ」となれば、これはもう加賀刑事シリーズとの書き分けが難しくなってきているのだろうな、とか想像してしまいます。
この8巻も、『猛撃つ』以外は、『科学美味しんぼ』みたいで、湯川の毒気も抜けてきています。

だからつまらない、っていうわけじゃないし、『猛撃つ』は、シリーズの区切りにふさわしい、アツい作品ではあるんですが。

「だからそれが間違っている。僕以外にいないのではなく、僕もいない。頼むから、そんな話は持ち込まないでくれ」
「そういうなよ。それに、じつに興味深い話だとは思わないか? テレパシーだぜ。ネットで調べたところだと、科学者の間でも、テレパシーが存在するかどうかはまだ結論が出ていないそうじゃないか。それを明らかにしたら世紀の大発見だ」
 ふん、と鼻を鳴らす音が聞こえた。
「君にいいことを教えてやろう。科学者の間では、幽霊が存在するかどうかもまだ結論が出ていない。ネス湖の恐竜もそうだ。いや、そういう意味でいえばサンタクロースも同様だ」
「じゃあ訊くが、もし幽霊の写真があったらどうだ。見たいと思わないか? 本物のサンタクロースに会ったという人間がいたとしたらどうだ。話を聞きたいと思わないか? もし思わないんだとしたら、その理由は何だ。そんなものは存在しないと決めつけているからじゃないのか。それは科学者の姿勢としてはどうなんだ。どんなことも中立的な立場からアプローチするのが真の科学者じゃないのか。おまえはいるもそういってるぞ」
 草薙の詰問に少し沈黙してから、「驚いたな」と湯川はいった。

こういう会話も、しばらくは読めなくなるかと思うと、やっぱりさびしくはありますね。


ここで一発、「湯川准教授VS加賀刑事」みたいな飛び道具を繰り出してくれると面白いんだけどなあ。

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