あなたの町の生きてるか死んでるかわからない店探訪します (ウィングス文庫)
- 作者: 菅野彰,立花実枝子
- 出版社/メーカー: 新書館
- 発売日: 2013/02/09
- メディア: 文庫
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内容紹介
あなたが怖くて入れないそのお店、代わりに入って食べて、生きてるか死んでるか、判定しましょうーー。
ぐだぐだの日々を送っていた小説家&マンガ家の二人は、ある日友人のススメを受けて、そんな企画をぶちあげた。
まずは手始めに、近所の謎に満ちた外観の中華屋さんから。
そこから始まる恐怖とリバースの冒険とは!?
なぜか完食ルールも発生し、友人&担当ズも巻き込んだ、グルメエッセイならぬ「死んでる店」探しの突撃体験エッセイ!!
単行本未収録作品も加えて文庫化!!
この本、2006年の12月に単行本が出ているのですが、今年に入って、まさかの(?)文庫化。
近所の「やっているのか、やっていないのかわからない店」、「誰がこの店に入るんだ?なぜ営業を続けていられるんだ?という謎の店」に、仲良し小説家&マンガ家たちが突撃してみるという「実録」レポート。
いやあ、これ単行本が出たときに偶然みつけて読んだんですけど(実は感想も書いています)、そのときは「なんか、いかにも『オタク系腐女子』ってアピールするような文章で、内容はすごいし、面白いけど、ちょっと読みづらいなあ、なんて思ったんですよね。
ところが、今回は文章はそのままのはずなのに、けっこうすんなり読めました。
二回目だから、なのか、それとも、僕がこの6年くらいで、こういう文章にもすっかり慣れてしまったのか……
ちなみに、前回の単行本未収録の話も収録されていますが、よほどのファンでなければ、「そのために買う」というほどのものでもないかな、と(まあ、ローソンのからあげクンの1個セールのようなものです。もともと好きな人はけっこう嬉しいけど、嫌いな人があえて買うほどのものじゃない)。
ある「中華料理店」に突入したときの様子。
そこに立花の中華丼登場。
食べている途中で立花跳ねる。
「どうした!!」
「あはは。なんか白くてイカみたいなでも食べたことのないものが。あはは!」
「それにしても具がおかしい……八宝菜にしても中華丼にしても」
「……わかった」
そこで賢者月夜野が気づく。
「この店で今生きてるのは、白菜だけだ」
中華丼の具は……よく見ると何か見覚えが。
「後はおでんの具でごまかしてある……」
「つみれ……だいこん……はんぺん……がんも……かまぼこ……卵……ミートボール(!!)……白菜……本当だ!!」
「八つであることには拘ったのであろう」
月夜野は店主の拘りどころは八宝菜が具が八つだというところだと、独りで悟り始めた。
続いて、「ある洋食店」のレポートから。
そのうちに、大変やる気の無さそうな女性が、ふらふらふらーと中から出てきた。
メニューを出されたが、何か違和感が。
「あさりとベーコンの……インドカレー」
「パスタではなく!?」
眉間を押さえて呟いた私に、立花が既に悲鳴。
「不自然なところをチョイスして頼もう。どうせこのピザは業務用の冷凍ピザだ……頼みたくないが『あさりとベーコンのインドカレー』と」
「じゃあ私は、何故なのか『バジル』と『タラコ』のパスタ! なんだこの取り合わせ! そして見て! ここには何故かボルシチが!!」
それで『マトリョシカ』(仮名、たぶんロシア風の名前だったのでしょう。引用者註)なのか……。
「イタリア、インド、ロシア……脈絡がない。訳を聞かせて……」
そして有頭エビフライなのだが。
「エビってこんな味だっけ?」
立花が首を傾げた。
「おそらく衣をまとったまま冷蔵庫で何年も寝ていたのだろう」
「……ああ、そんな感じだ」
ところでこのエビフライは出て来た時に、
「ソースはついておりますが、他にもございますのでお入り用なら」
と、言われたがついていたソースは「キューピーマヨネーズ」だった。
「ならばもう一つのソースは『ブルドックソース』に間違いはない。……すみません! ソースください!」
間違いはなく、出て来たソースは『ブルドックソース』。
うーむ、読んでいて、「どうしてこんな店が営業できるんだ?」と思うような「迷店」が盛りだくさん。
しかも、「おいしくない」レベルではなくて、「食べると危険」なレベルのものも!
なかには「見かけはちょっとヘンな感じだけど、おいしい店」(あるいは、普通に食べられる店)も紹介されているんですけどね。
「なんとか頑張って食べたものの、帰りにリバース!」なんて話も包み隠さず書いてあるので、お食事中に読むのはオススメできません。
これを読んでいると、そういう店の場合、「店員も自分の店のレベルをある程度は自覚している」ようなのに、なんとなく営業を続けているうちに、どうしようもなくなってしまっているのだろうな、ということがうかがえます。
全然お客さんが来ないので、客観的な反応はわからないし、店をやめるタイミングもつかめなくなっている、という。
まあ、達人が介入しない状況が延々と続いている『愛の貧乏脱出作戦』のダメな店のオンパレード、といえば、あの番組を観ていた人にはわかりやすいかと。
そういえば、僕も以前「『サッポロ一番』のほうがよっぽどおいしいのに、店主は自信たっぷりの麺が伸び伸びしている味噌ラーメンの店」に入ったことがありました。
その店のテレビで、やってたんですよね『愛の貧乏脱出作戦』が。
この番組を、こんなシチュエーションで観るなんて……と、内心苦笑していたのをよく覚えています。
「ヤバイ店のファクターが四つあるのよ……」、一、ヤバい建物に店主が住んでいるということ。二、客がいない。三、とっても不衛生。四、店の人がきょどっている……」
いやまあ、ここで紹介されている「本当に死んでいる店」は、どう考えても「いちげんさんが、おいしいと思い込んで入ってしまうようなキャッチ―な店」じゃないのがほとんどなんですけどね。
好みは分かれると思いますが、好きな人は、たまらない「逆グルメエッセイ」「きたないだけシュラン」!