琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

県庁おもてなし課 ☆☆☆



あらすじ: 観光の促進を円滑にするために高知県庁は「おもてなし課」を設立。若手職員・掛水(錦戸亮)を中心としたメンバーたちが何をすべきかわからず困惑していると、地元出身の作家・吉門(高良健吾)から役所気質と民間感覚のズレを痛烈に批判される。発奮した掛水は柔軟な発想力を持つアルバイトの多紀(堀北真希)と共に、本当のおもてなしを見つけ出すべく奔走する。

参考リンク:映画『県庁おもてなし課』公式サイト


2013年14本目。
平日(火曜日)の夕方からの回を鑑賞。
ちょうど夕食時だったこともあり、久々の「シアター内ひとりぼっち」でした。


原作本をつい先日(2週間くらい前)読んだばかりなので、原作と比較しながら観たのですが、原作でけっこう感じ悪かった吉門先生の「上から目線の掛水への粘着っぽい『数々のアドバイス』」とか、「とにかく公務員ダメ、民間万歳!」連発とかは、ほとんどカットされていたのが印象的でした。
原作では「観光大使」の名刺や県内施設への割引に対するやりとりが前半をかなり占めているのですが、この映画の脚本では、掛水が「先日ご指摘いただいた名刺の件ですが……」などと電話でいきなり説明的に喋りだし、駆け足で流されてしまいましたし。


500ページ近い原作を2時間の映画にまとめようとすれば、どこかを端折らなければならないわけですが、原作の記憶が生々しいと「どこを生かして、どこをカットしたのか」がよくわかるという面白さがあったんですよね。
ストーリーは原作のダイジェスト版、という感じで、これ、原作未読でも意味わかるのかな?とも思いました。
ただし、ネットでの反応をみていると、「わかりづらい」という人はほとんどいませんでしたので、ディテールにこだわる人でなければ、むしろ、この映画の脚本のほうが「楽しい」かもしれません。


この映画『県庁おもてなし課』って、なんというか、けっこう「割り切ってつくられた作品」だと思うのです。
原作の「恋愛」「高知の街や大自然の風景」をメインに置き、「おもてなし課の仕事」や「公務員批判」は大胆にカット。
原作を読んだあとだと、あまりに無味無臭な感じがして、ちょっと寂しいというか、物足りない気もしました。
原作を読んだときには「なんか感じ悪いな」とか思っていた部分なのにね。


で、どんな映画になったかというと……
堀北真希さんと錦戸亮さんのファンは、彼らを観ているだけで、とりあえず満足。
そして、カップルで観て、「今度、いっしょに行きたいね、高知。うふふ」とかベタベタしながら帰っていくのに最適な映画。


僕も「大画面で堀北真希さんと高知の大自然、そして、いかにも地方都市、という懐かしい雰囲気の街並みを観ることができて、とりあえず満足」だったんですけどね。
逆に言えば、「堀北さんにも錦戸さんにも高知にも興味がなく、カップルでもない人」にとっては、「まあ、2時間スペシャルテレビドラマでもいいんじゃない、これ」というような「映画」でもあります。
ジョニー・デップアンジェリーナ・ジョリーが共演していた『ツーリスト』って映画があるじゃないですか。ストーリーはよくわからないけど、超有名スター2人とヴェネツィアの景色が堪能できる、ただそれだけの映画。
それをほのぼの風味にした高知版、という印象です。
ただ、「気軽に観ることができる、デートムービー」って、別に批判されるようなものではないし、そういう映画も(いや、そういう映画「こそ」?)必要なんですよ。
そして、この映画は、まぎれもなく「良質のデートムービー」なのです。
観終えると、それなりに爽やかな気分になるし、「郷土愛」っぽいものも再確認できるし。
僕自身は親が転勤族で「故郷」を持たない人間なので、こういう「ふるさと」に愛着を持ち続けている人たちは羨ましい、とも思いました。


それにしても、僕にも明神さんがアシスタントについてくれないかなあ……そうしたら、もう少し「しごとしたーい!」って気分になるんじゃないかな……
しかしこの映画、穿った観かたをすれば「県庁の職員がお気に入りの女の子をアシスタントにして、観光の研究の名目で2人でデートし、遊びまくり、ひたすら楽しそうにしている」ようにも見えますよね。
だから公務員は!


ああでも、観ているとやっぱり、高知に行ってみたくはなります。20年ぶりにあのカツオのたたきを食べたいなあ。


県庁おもてなし課 (角川文庫)

県庁おもてなし課 (角川文庫)

原作の感想はこちらです。

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