
- 作者: BUBBLE-B
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2013/07/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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内容紹介
「いつもと味が違う……(気がする……)」。
ラーメンチェーン、天下一品・総本店のラーメンを食べた時から、この男の旅は始まった。
どの店も同じ味なはずの飲食チェーン。しかし、1号店だけはなんだか違う?
誰にも頼まれていないのに、北は北海道から南は福岡まで、BUBBLE-Bが自腹でめぐった珠玉の本店。 巡礼の果てに見たものは、1号店に宿る熱き「想い」だった……
「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」“本店道特集"をはじめ、
メディアで話題沸騰の新感覚グルメガイドにして日本飲食業界の歴史の教科書的一冊!
◎掲載店舗
吉野家、松屋、東京チカラめし、フレッシュネスバーガー、マクドナルド、ロッテリア、モスバーガー、サブウェイ、CoCo壱番屋、ロイヤルホスト、ガスト、ジョナサン、ベル、びっくりドンキー、ステーキけん、サイゼリヤ、洋麺屋五右衛門、カプリチョーザ、和食さと、夢庵、大戸屋ごはん処、かつや、とんかつ新宿さぼてん、とんかつ和幸、てんや、はなまるうどん、丸亀製麺、名代富士そば、ゆで太郎、天下一品、来来亭、ちりめん亭、坂内食堂、リンガーハット、餃子の王将、バーミヤン、大阪王将、日高屋、牛角、安安、しゃぶしゃぶ温野菜、元禄寿司、くら寿司、がってん寿司、元気寿司、ミスタードーナツ、プロント、道とん堀、築地銀だこ(掲載順・敬称略)
どんな有名チェーン店にも「最初の店舗」があります。
やはり「ルーツとなった店」というのは、何か違うのではないか?とか、考えてしまいますよね。
その一方で、チェーン店というのは、原則的には「どの店で食べても同じ」であるはずです。
「このチェーンの最初の店って、どんな感じだったんだろう?」
そんな興味を持ったことがある人は、少なくないはず。
でも、実際に「あえて一号店をめざす人」は、そんなに多くはありません。
せっかく遠出するのなら、「食べ慣れたチェーン店」よりも、「その地域にしかない店」に行ってみたくなるのが人情というものですし。
著者は、さまざまな有名チェーン店の「一号店」あるいは「ルーツとなった店」に行くために全国をまわり、この本を書いています。
「現在もある『本店』には、お客の側の思い入れ以外の『特別なもの』があるのか?」
吉野家の築地店は、さまざまなチェーン店の「一号店」のなかでも、かなり知られているのではないかと思います。
吉野家の創業は1899年。関東大震災のあと、新設された築地市場に移転したのが1926年のことです。
築地店の店長さんにお話を伺った。
ここ築地店は見ての通り築地のプロの常連さんがほとんどであり、そこに応えるべく営業をしてきたという。
築地で働く常連さんは常に急いでいるし、味にもシビアだ。ほんの少し味が変わっただけで、帰り際に「今日のはちょっと味が違ったね」と一言言って帰ることもあるのだという。
そんな常連さんの時間を無駄にしないため、どのお客さんがどんな注文をするか、店長の頭の中には500人ほど顔とメニューが暗記されている。そのお客さんが入り口のドアから入ってくる瞬間に店長が指示を出し、作り始めるのだ。お客さんの中には、入店してから店を出るまで、一言も言葉を発さない方もいるそうだ。
築地市場の全盛期などは、1000人の顔をメニューを暗記している店長さんもいたそうだ。また、お客さんも座る席の定位置があり、その場所が空くまで座らなかったりすることすらあるらしい。
この築地店は、狂牛病が問題となり、吉野家が牛丼を中止していた時期にも、国産牛を使った牛丼を提供していたことでも知られています。
でも、この本を読んでいると、吉野家のような「特別な存在の一号店」というのは、そんなに多くないみたいなんですよね。
他のチェーン店ととくに差別化はされておらず、店に入り口に「本店」とか「発祥の地」と書いてあるプレートがある、くらいの場合も、けっこうあるんですよね。
この本では、まだ歴史の比較的浅いチェーン店もかなり採りあげられていますし。
また、さまざまなチェーン店の「ちょっと懐かしい話」がたくさん出てくるのも、読んでいてすごく懐かしくなりました。
『CoCo壱番屋』の回より。
少年の頃、CoCo壱番屋は憧れの存在だった。当時は「1300グラムを20分以内に食べたらタダ!」という強烈なサービスがあり、入り口に飾られた巨大な1300グラムのカレーのサンプルに圧倒された。そして、それを平らげた猛者たちのポラロイド写真が壁一面に貼られていたのだ。
「大人になったらいつかは俺も完食して、壁に貼られたい!」そう思っていた。しかし、2003年にこのサービスは廃止され、夢が叶うことはなかった。
このサービス、僕もよく覚えています。
さすがに自分で挑戦しようとは思いませんでしたが、店内にベタベタと貼られていた成功者たちの写真をみて、「世の中には、1300グラムを食べられる人が、こんなにいるのか……」と呆れたものです。
いつのまにかあのサービスはなくなってしまったような記憶があるのですが、2003年、いまから10年前に廃止されたんですね。
実際に挑戦した人の話も聞いたことがあるのですが「最後の100グラムくらいが、本当につらかった」とのことでした。
1300なんて、中途半端な量だな、と思っていたのですが、実は「食べられるかどうか、ギリギリのところ」をちゃんと狙っていたのでしょうね。
ああ、でもなんだか、あの頃のCoCo壱番屋には「学生御用達のカレー屋」みたいな雰囲気がありました。
ちなみに、世界には「観光地になってしまった1号店」もあるそうです。
本書には諸般の理由で収録できなかったが、スターバックスの1号店などがまさにその例だ。
スターバックスは、アメリカのシアトルにて1971年に創業したコーヒーのチェーンである。その1号店は、シアトルの観光地であるバイクプレイスマーケットで今でも営業している。ろくに座れる場所もないような狭小店舗だが、世界中で発行されているシアトルの旅行ガイドブックには必ず掲載されている。そして、「ぜひ1号店でスターバックスラテを!」と思っている全世界から集まった大勢のスターバックスマニアのお客さんが常に列を作っている。
この1号店には、オリジナルコーヒーや限定グッズが並んでおり、マニアたちがそれらを買っていくそうです。
チェーン店も世界規模になると「ルーツ」は、「聖地」になるんですね。
とりあえず、読んでいるとお腹がすいてきますし、さまざまなチェーン店の1号店の写真を眺めているだけでも楽しい本になっています。
あたりまえのことなんですが、チェーン店もみんな最初は「一軒の店」だったのです。