琥珀色の戯言

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【読書感想】一生に一度は行きたい 世界の旅先ベスト25 ☆☆☆☆


【内容紹介】
「一生に一度は早い方がいい」
私は海外旅行を実現する秘訣はこの言葉に尽きると思う。別にパンフレットを請求しなくても、窓口を訪れなくても、旅行説明会に参加しなくてもいい。ただチャンスがあるのであれば、まず「行く」と決断してから、その旅行の障壁となる事象について調整すればいい。(本文より)
――旅行会社での企画、手配、添乗に携わり延べ70以上の国と地域を訪問。後に旅行ガイドブックの編者として数々のヒットを飛ばしてきた旅のプロが、「絶対外さない」「人生が変わる」旅先ベスト25を紹介。ネットではわからない貴重な情報も多数。必要な体力、旅行代金、日程の目安付き。


【目次】
まえがき――「旅先を選ぶ」ために


1. 旅の基礎知識


2. 難易度1の旅先
1 フランス モン・サン=ミシェル
2 カナダ イエローナイフのオーロラ鑑賞
3 ネパール エベレスト(チョモランマ)
4 カナダ カナディアンロッキー
5 フランス領ポリネシア タヒチ

(以下略)


 ああ、久々に旅に出たいな……
 僕は20歳を過ぎるまで、海外旅行に出かけたことがありませんでした(飛行機が嫌いだし、言葉が通じない場所に行くのは怖いし、わざわざお金を使って遠いところに行って疲れるよりは、家で『ダビスタ』やってたほうがいい、と思っていたのです)。
 今でも、正直なところ、チップを払うために小銭を準備してタイミングを見計らったり、拙い英語で知らない人に話しかけたりするのは苦手です。
 でも、海外に出かけて、文字通り「違う空気を吸う」ことって、けっこう面白いな、とは思っています。
 もっと若くて体力があるうちに、旅行の楽しみを知っていれば、もうちょっといろんなところに行けていたかもしれないな、なんて後悔してもいるのです。
 

 この本、旅行会社勤務から、人気旅行ガイドの編集に携わってきた経験を持つ著者による「オススメの旅行先の紹介」なのですが、イタリアのローマとかアメリカ西海岸とかハワイのような、あまりにも日本人にとって一般的すぎる観光地は除かれています。
 ハワイとかイタリアは訪れたことがあり、「今度は、あまり周りの人が行ったことがない国に行ってみたい」という人には、うってつけのガイドブックです。綺麗な写真もたくさん掲載されていて、見ているだけでも、ちょっとした旅気分に浸れます。
 というか、今の僕の状況では、なかなか長期間の旅行にも出られないので、メインの目的が「旅気分に浸る」「今度はここに行ってみよう、と想像する」になってしまってもいるのですけど。


 著者は、文化的な施設(美術館とか博物館)や新しい人工の建造物や遊園地よりも、「圧倒的な自然の力を感じさせてくれる風景」や「絶景」を体験することに重きを置いているようで、「ショッピングしたいので、ブランドショップや免税店が無いとダメ!」っていう人には、あまり参考にならないかもしれません。
 まあ、そういう人は、別のガイドブックを見れば良いのです。


 この新書、25ヵ所を1冊にまとめているだけに、ひとつひとつの紹介が雑になっているのではないか、と思ったのですが、読んでみると、個々の土地はこのくらいのボリュームでちょうどいいような気がします。
 次から次へといろんな国や絶景が紹介されるのは、すごく楽しい。

 カナダの中央部にあるイエローナイフ。かつてゴールドラッシュに沸いたこの町が、世界的なオーロラの観測地として知られるようになったのは、その高い観賞率からだと言われている。観賞率とは、その観測地に3泊したうち、1回でもオーロラを見ることができる確率だ。年代にもよるが、その統計では、イエローナイフは実に90パーセント以上という、世界でも圧倒的に高い観賞率を誇っている。

 オーロラって、北欧で観るのが「一般的」だと思ってました……


 カナダのイエローナイフでのオーロラ観賞が「難易度1」になっているのを見て、僕は「ああ、生きているあいだに、一度は生のオーロラを観てみたいんだよなあ」と思いました。
 6日間、20万円くらいで行けるそうなので、これなら、なんとかなるかも。


 ちなみに、紹介されている25ヵ所のうち、僕はウルル(エアーズロック)とカナディアンロッキーの2つだけ、行ったことがあります。
 

 それぞれの場所に関して、旅の「難易度」(どのくらいの体力を要するか)や飛行機の所要時間、かかる日数や費用も具体的に示されているのも親切です。
 「旅慣れていない人は、ここへは旅行会社のツアーで行ったほうがいいですよ」なんてことも率直に書かれています。
 著者はもと旅行会社勤務なので、そう書いたのかもしれませんが、僕の実感としても、「自信がないときは、ツアーに参加したほうが無難だし、安全」だと思います。
 行かないよりは、ツアーに参加して「体験」したほうが良いこともたくさんあるし。


 この新書を読んでいて痛感するのは、現在、2015年を生きていて、それなりの体力があって、お金と時間もそこそこあれば、「世界中、どこにだって行ける」ということなのです。
 

 僕は若い頃、椎名誠さんの『パタゴニア』という旅行記を読んだことがあります(いま調べてみたら、単行本は1987年に出ていました)。
 その本のなかの「パタゴニア」は、南米大陸の最南端にあり、南極もすぐそこにある「辺境」として描かれていました。
 もちろん、地球の地形が30年くらいで大幅に変わったということもなく、いまでもパタゴニアは同じ場所にあるのですが、この本には「難易度4の旅先」のひとつとして、「パタゴニア」が紹介されていました。
 ああ、椎名誠さんが「探検」した場所に、僕だって「観光」で行けるのか……


 その他にもガラパゴス諸島(足が水色の「アオアシカツオドリ」に会ってみたい!)にだってツアーで行けるし、『南極』にだって、僕が本気で行くことにすれば、ツアーで行けるのです。
 南極のツアー代金は150万円以上だそうですし、南極点まで、というわけにはいきませんけどね。

 そもそも世界で唯一、この大陸には国家が存在しない。1959年、日本を含む12の国で採択された南極条約(2015年現在、条約締結国は50)によって、この地におけるすべての領土権主張は凍結され、南緯60度以南の地域においては一切の軍事基地の建設、軍事演習の実施などが禁止されている。したがって、南極には、入国審査という概念そのものがないのだ。

 考えてみれば、あたりまえのことではあるのですけど、南極って、入国審査とか税関がない、世界で唯一の大陸なんですね。
 もちろん、無いほうがめんどくさくなくて良いのですけど、何の障壁もなく「南極大陸」に入れてしまうというのは、すごく不思議な感じもします。
 南極の場合は、自然そのものが巨大な壁、ということなのかもしれませんが。
 ほんと、「行こうと思えば、行ける」んだよね。南極にも。
 宇宙にまでは、まだ無理だけれど、地球上の大概のところに、日本人は行けるようになっている。
 しかも、便利なツアーで。


 僕にとって、この新書のなかで最も印象に残ったのは、この話でした。

 まず「行く」と決断することが大事――それが海外旅行実現の近道だと書いたが、特に長期にわたるものは、計画から実現までに最低でも3ヵ月、できれば半年以上の準備期間があった方がいい。なぜならば、「行く」と決めて万全を尽くしたものの、最終的に旅行を断念せざるをえないケースも発生するからだ。
 経験上、その理由として最も多いのは「両親の介護」。旅行中に面倒を見てくれる人が見つからなかったというケースだ。次に多いのが自身の健康問題。最近では、予定していた旅先で大規模な災害やテロ事件が発生し、安全と言われていても、周囲に説得されて諦めるケースもあるようだ。


 そうか、「介護」なのか……
 僕の場合は、まだ8か月の赤ん坊がいるので、海外旅行は、まだちょっと難しい。
 多くの家庭では、子どもが大きくなる時期くらいには、親の介護の問題が出てくるし、それに一区切りつく頃には、自分自身の体力も、大自然のなかをトレッキングしたり、高地を散策するのは不安になってくる。
 「老老介護」というのも、ひとつの現実ではあるし、日本社会の趨勢としては「少子化の一方で、高齢者はなるべく家族が介護していく」方向に進んでいます。
 「行きたいときに、海外旅行に出かけられる時間」っていうのは、一生のうち、そんなに長くはないのです。
 ……と、気づいた時点での僕の年齢を考えて、ひとつ、ため息。


 いやほんと、みんなそれぞれ「行けない、行きにくい事情」があるのは百も承知だけれど、行きたい、という気持ちが少しでもあるのなら、ちょっと無理してでも「行ってみたいところには、行けるうちに行ったほうが良い」ですよ、うん。


パタゴニア―あるいは風とタンポポの物語り (集英社文庫)

パタゴニア―あるいは風とタンポポの物語り (集英社文庫)

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