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- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/09/08
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- 作者: 野田力
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内容(「BOOK」データベースより)
今日、自分は死ぬかもしれない―。内戦の続くコートジボワールで著者は死を覚悟したという。その名の通り、主に外国籍の兵士で構成されるフランス外人部隊。6年半、在籍した日本人がその経験を余すところなく書く。
僕は外人部隊といえば、新谷かおる先生の『エリア88』を思い出してしまうのですが、この本では、マンガや映画のなかの話ではなく、実際にフランス外人部隊に6年半所属した日本人「ノダ・リキ」さんが、その体験を語っているのです。
外人部隊というと、「行き場のない訳ありの荒くれものたちが、延々と激しい戦闘を繰り広げる」という感じなのかと思いきや、そうでもないみたいなんですよ。
最近は外人部隊に入ることを考える日本人が増えていると聞きます。そういう人たちがどこまで外人部隊を理解しているのかといえば、十分ではない場合が多いのではないかと思います。認識があまり状態で外人部隊への入隊を志願するのは決して勧められることではありません。まずはよく知ってもらいたい。
外人部隊に入ろうといった考えがない人に対しても、外人部隊がどんなところなのかを誤解しないでほしい気持ちもあります。
私のように戦地に派遣される場合もたしかにあります。しかし契約期間中、一度も戦地に派遣されないでいる部隊兵も少なくありません。戦地に派遣される場合にしても、在籍しているあいだのごく限られた期間だけです。それ以外の時間はどのように過ごしているのかといえば”鍛錬と我慢の毎日”です。大抵の人のイメージとは程遠いと思います。多くの時間は、掃除などをはじめとした雑用をしているのが現実なのです。
外人部隊とは何か?
それを正しく理解してもらうためにも、戦地にいるよりはるかに長い日常の時間についても知ってもらいたいと思います。
これを読んでいると、僕がイメージしていた(そしておそらく、著者もイメージしていた)「フランス外人部隊」と、現実の外人部隊とのギャップに驚かされると思います。
外人部隊は、10人に1人くらいしか正規採用されない狭き門で、入隊しても、掃除ばっかりさせられているのです。
『すきやばし次郎』の修行みたいだ……
著者は、アフガニスタンに派遣されたときのことを詳しく語ってのですが、アフガニスタンのフランス軍は、最前線を除いては、僕が想像しているよりもおいしくて温かい食事をとり、ベッドで眠れているということが意外でした。
第二次世界大戦の頃の「国をあげての総力戦」ではなく、平和維持活動としての派兵ということで、物資は比較的充実しているし、戦死者が大勢出るわけでもない。
それでも、そこは戦場であり、敵襲のリスクはあるし、油断したり、運が悪かったりすれば、命を落とすこともあるのです。
平和維持活動に従事する軍隊というのは、敵を殲滅するためだけの軍隊とは違うスタンスで活動しなければならない難しさもあります。
歩哨所で警備に就いていた兵士が不自然な様子のアフガニスタン人を見つけた際、追い払うために威嚇射撃をしていいかと迷うこともあったのです。
あとから上官に確認したところ、そうした際にも絶対に発砲してはならないということだったのです。
そのとき警備に就いていた兵士は「もしあのアフガニスタン人がRPG(携行型対戦車ロケット)などを取り出してこちらに向けて発射していたら、どうなったと思う?」と納得がいかない顔をしていました。
ドラマなどでよく聞かれるセリフのようにこんな言い方もしていました。
「こういう規定は、現場を知らないお偉いさんがエアコンがよく効いたオフィスで決めてるんだから現実的じゃないんだ」
彼の言いたいことはわかります。ただ、それに同意はできません。
どうしてかといえば、私たち兵士の仕事とは「オフィスのお偉いさん」が決めた規定を守り、それにもとづく命令に従うことだからです。その範囲内で自分なりのやり方などを考えるにしても、そこから逸脱することは許されません。
規定に従い戦死することになったとしても、ある意味、仕方がないのだと思います。
威嚇射撃が禁止されていることについても、理解はできます。威嚇した相手が民間人である可能性を考えれば、簡単に発砲はできません。現地の人たちとは良き関係を築くべきなのは当然だからです。現地の人たちがISAF(国際治安支援部隊)に対して悪感情を持ったりすれば、フランス政府にとってもマイナスになります。私たちは好き勝手に武器を使って戦うために派遣されているのではないのです。
「作戦地域には民間人も多く住んでいる。民間人を撃ってはいかん。発砲することになっても、やみくもに撃つな。標的の位置が不明なら撃つな。撃つときは、弾がどこへ飛んでいくか把握しながら撃て」
こうした注意も受けました。
基本的には攻撃を受けた場合に限って応戦してもいいということで、民間人などは絶対に誤射してはならないということです。
「民間人に犠牲者が出たら、我々の負けだ」とも念押しされました。
「戦力」には大きな差があるのですから、「皆殺しにする」つもりになれば、それも可能なのでしょう。
でも、だからこそ、民間人に犠牲が出ないように、フランス政府は、厳しく「自制」を前線に求めているのです。
とはいえ、民間人のふりをして攻撃してくる敵もいるわけで、兵士たちにとっては、自制するのも恐怖心や危険との闘いなんですよね。
これは、本当にストレスやプレッシャーがかかる仕事です。
著者のように「それで戦死してもしょうがない」と割り切れる人ばかりではないはず。
劣勢、あるいは互角の戦場であれば、死ぬことを覚悟できても、味方が有利で、勝てそうだとなると、ここで死ぬのは割に合わない、と考えてしまう。
ただ、アフガニスタンのような「戦場に出ること」は、外人部隊にとっても「非日常」であることを、著者は繰り返し述べているんですよね。
外人部隊に入ることを考えている人に対して私はよくこう言います。
「雑用が9割の日々になるので、行くなら、清掃スタッフになるつもりで行くべきだ」
海外派遣によって戦場を経験した者にしても、その期間を除けば、訓練と雑用に追われる毎日に近くなります。それが現実です。
「戦場に行くことがないまま5年間を過ごし、除隊する」という隊員も少なくないそうなんですよ。
それを、ラッキーだと思うかどうかは、人それぞれなのですが。
著者は「せっかくここまできたのだから、『現場』を体験してみたい」という思いもあって、契約期間を延長して、アフガニスタンに行ったそうです。
アフガニスタンに行ったことに関しては、個人的にはマイナス点を思いつかないほどよかったと思っています。これまでの人生において、最も充実していた日々だったとも振り返ることができます。もちろん、大きなケガなどをすることなく、無事に帰れたからこそ、そういえるのだとはわかっています。
アフガニスタンに行って人間として成長できたのかといえば、自分ではわかりません。アフガニスタンで人生観が変わったというようなことはなかったと思います。ただし、外人部隊をきっけかに変わったことはあり、その延長線上にアフガニスタンがあったといえるのかもしれません。小さなことは気にしなくなり、大胆になった気がします。
いざという場面を迎えたときに、逃げずに向き合える自信を持てました。
死生観や覚悟といった大げさなことではありません。目の前のやるべきことをしっかりやろうと考えていれば、恐怖心は誤魔化せるだけです。少なくとも私はそうでした。
著者は、あくまでも「自分においてはそうだった」というスタンスであって、戦場でのPTSDに苦しんでいる元兵士たちについても言及しています。
しかし、この本を読んでいると、フランス外人部隊に入る前、著者が自衛隊を何度も受験したのに、なぜ合格できなかったのか、わからないんだよなあ。
外人部隊を除隊した、「その後」の話を読むと、こうして修羅場をくぐってきたはずの人でも(だからこそ?)、日本で平凡な日常を過ごすというのは難しいのかと、考えこんでしまうのです。
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フランス人は自分たちで争わない: フランス外人部隊日記 日記シリーズ (ノンフィクションライトノベル文庫)
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