琥珀色の戯言

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【映画感想】ホース・ソルジャー ☆☆☆

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あらすじ
アメリカ同時多発テロ翌日の2001年9月12日。対テロ戦争の最前線部隊に志願したミッチ・ネルソン大尉(クリス・ヘムズワース)は、12名から成る特殊作戦実行部隊の隊長に任命され、アフガニスタンへと乗り込む。反タリバン勢力を率いるドスタム将軍と協力し、テロ集団の拠点マザーリシャリーフ制圧に動きだすミッチたち。だが、タリバンの軍勢が予想を大きく上回ることが判明し、山岳地帯の厳しい自然も立ちはだかる。ドスタムは、山岳地帯では馬が最大の武器になることを彼らに教えるが……。


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※音が出ます!


2018年、映画館での15作目。
観客は僕も含めて3人でした。
いかにも「アメリカの正義」という感じの映画で、『アベンジャーズ』では、ソー役で活躍しているクリス・ヘムズワースさん主演でも、日本での興行成績は厳しいようです。


僕も観ていて、画面ではものすごい戦闘シーンが描かれているのに、なんか眠くなってきて申し訳ない、という感じだったんですよ。


たぶん、アメリカの観客にとっては、「他人事ではない話」だし、「2001年の同時多発テロに感じた恐怖と怒り、そして、アルカイダタリバンへの反撃の狼煙」というのは、血がたぎる物語(ちなみにこれは「実話に基づいた映画」です)なんですよね。


でも、日本人である僕にとっては、どちらかというと、自分とアメリカ人との温度差、みたいなものを痛感する映画だったのです。


主人公のリッチ・ネルソン大尉は、文化も考え方も違うアフガニスタン北部同盟の指導者、ドスタム将軍にさんざん振り回されるのです。
ネルソン大尉は、同盟者として協力しあいたい、という意思表示をするのですが、ドスタム将軍は、ネルソン大尉の部隊をあくまでも「客人」として遇しようとします。
おかげで、なかなか作戦がうまく進めないことに苛立っていた大尉に、ドスタム将軍はこう言うのです。


「自分たち(北部同盟)の部族は何百人死んでも構わないが、アメリカ人が1人命を落とせば、アメリカは我々を援助してくれなくなる」


映画のなかでは、ネルソン大尉の部隊の苦闘が描かれるのですが、僕がいちばん感じていたのは、「人の命っていうのは、等価ではないのだな」という苦さでした。
空爆やロケットランチャー、自爆テロで、アフガニスタンの人たちの命は、あっけなく失われていきます。
「見ろ!人がゴミのようだ」というのは『天空の城ラピュタ』でのムスカの有名な言葉なのですが、いやほんと、まさにそんな感じなんですよ。


それに対して、同じ「戦場」にいても、ネルソン大尉の部隊に所属しているアメリカ人の隊員であれば、重傷を負ってもできるかぎりの処置をされ、ひとりを後方へ搬送するためにヘリコプターまで飛んでくるのです。
そこまでやったら助かった人って、この映画のなかで死んだ人のなかには、大勢いるよね、きっと。
困難な任務とはいえ、無線で座標を指示すれば、基地から爆撃機が飛んできて、そこにピンポイントで空爆して焼け野原にしてくれるんですよ。
こんなの、わざわざ「ホース・ソルジャー」がいなくても、圧倒的な戦力で押しつぶしてしまったほうが手っ取り早くない?
まあ、それをやろうして、ソ連アフガニスタンで失敗し、アメリカもベトナムイラクで失敗してしまったのですが。
作中で「アメリカ軍が来て、現地の人たちはみんな喜んでいます。自由がもたらされました!」みたいな描写があると、ちょっとプロパガンダっぽいよな……と感じてしまいますし。


アメリカ人にとっては、「同時多発テロの敵討ち!」と、快哉を叫ぶことができる題材であり、英雄たちの苦難に思いを馳せ、熱狂できる作品なのかもしれませんが、僕は「アメリカの正義」を目の当たりにして、「これはこれで、ちょっとついていけないな……」と思いながら観ていたのです。
もちろん、テロを支持するわけではありませんが、あの空爆だけで、NYのテロの犠牲者に匹敵するくらいの人が死んでいそうです。
反撃される可能性がほとんどない空爆での攻撃というのは、やられる側にとっては、きついだろうなあ。
アメリカ側としては、「アメリカ人の命は重い」ということに配慮して作戦をすすめなければならない、というプレッシャーもあるのでしょうけど。


ミリタリーアクションが大好きな人は、そこそこ楽しめるのではないでしょうか。
というか、それ以外の人に積極的に薦める言葉を探すのが、ちょっと難しい映画なのです。


ホース・ソルジャー 上 (ハヤカワ文庫NF)

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ホース・ソルジャー―米特殊騎馬隊、アフガンの死闘

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