- 作者: ヒロミ,藤田晋
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2019/01/08
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
小休止のすすめ 運を呼び込む「人生の休み方」の極意 (SB新書)
- 作者: ヒロミ,藤田晋
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2019/01/07
- メディア: Kindle版
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内容(「BOOK」データベースより)
27歳で個人事務所をつくって独立、月の売上が最高6000万円だったタレントヒロミと、26歳、史上最年少で上場を果たしたサイバーエージェント社長、藤田晋。2人の現在の成功に共通するのは、「小休止」をうまく人生に取り入れていることだ。「タレントヒロミ」を10年休んだヒロミと、厳しいビジネスの世界で、気を狂わすことなく、日常に小休止を取り入れトップを走り続ける藤田晋が教える、小休止という生き方、考え方。
タレントのヒロミさんとサイバーエージェントの藤田晋社長の往復書簡のような新書です。
このふたりの接点というのが僕にはイメージできなくて、本を売るためにつくられた「ビジネス友達」みたいなものなのかな、と思ったのです。
実際は、ヒロミさんが40歳くらいにテレビでの露出が激減して、「小休止」していた時期、ヒロミさんに「遊びかた」を教えてもらっていた年下の友人たちのひとりが藤田さんだったのです。
「遊び」といっても、夜遊びとかギャンブルではなく、釣りとかサーフィンのようなアウトドアが多くて、ヒロミさんは若いころから、忙しいスケジュールのなか、「一生懸命に遊んでいた」そうです。
ヒロミさんは18歳のときに交通事故で瀕死の重傷を負い、緊急手術で脾臓を摘出されました。
以来、ふとしたときに「内臓が1つないって、大丈夫なの?」と思うようになり、「長生きできないんじゃないか?」という不安も抱えるようになった。
「俺の人生の時間は、人よりも短いんじゃないか?」という意識が、生き急ぎがちなスタイルにつながっていたのだと思う。
仕事に対しては200%で向き合って、芸能界で売れていきたい。遊びにしても「やりたいと思ったものは、あれもこれもやっておきたい」と。
20代後半、独立して事務所を作り、レギュラー番組を何本も抱え、それでも猛烈に遊んでいた。芸能界の仕事、それもバラエティ番組を何本も抱え、それでも猛烈に遊んでいた。芸能界の仕事、それもバラエティ番組の場合、収録が午後から始まることが多い。スケジュールを調整すれば午前中が空く。そこで、朝から遊びに行くわけだ。
釣り、水遊び、ゴルフ、クレー射撃……。スタジオに15時入りなんてスケジュールなら、感覚的には1日休みみたいなものだった。24時間しかない時間をどう有効に使うかということを真剣に考えていた。
周りからは「仕事前によくやるね」と呆れられていたけど、200%で生き急いでいるから気にならない。朝から遊び、午後から事をし、夜は業界的な飲みに出る。とはいえ、内臓が1つないからアルコールは飲みすぎないようにしていた。だから、二日酔いもなく、次の日も朝から動ける。当時、身に付けた時間の使い方は今も抜けていない。50代になっても「スタジオ入りが午後」と聞くと、朝から何をして遊ぼうか考えている。
20代、30代の僕はこんなだったから、そうではない人を見ると腹が立って仕方がなかった。それはスタッフに対しても、共演者に対しても抱いていた気持ちだ。
「仕事は100%で向き合って当たり前。120%どころか、200%でやんのよ!」。そうしなければ上には行けない。短い人生で結果は出せないと思っていた。
藤田さんの回より。
藤田さんはサイバーエージェントが東証マザーズに上場後、早く会社を拡大しなければいけない、というプレッシャーにさらされるなか、ネットバブルが崩壊し、株価が下がり続ける、という状況になってしまいます。
そんなある日、買収の危機にあったサイバーエージェントを10億円の出資で救ってくれた楽天の三木谷浩史社長から、こんなアドバイスを受けました。
「外野の声に惑わされることなく、自分の信念を貫けばいい。時間をやり過ごすためにも何か趣味でも持ったら?」と。
経営の仕事は長期戦です。だからこそ、根を詰めすぎないよう適度に息を抜くための遊びや趣味を持ち、小休止の時間を作った方がいい、そんなアドバイスだったと思います。
この新書を読んでいて痛感したのは、僕には、ヒロミさんや藤田さんの「遊び」を真似する資格はないなあ、ということでした。
お二人は、人生や仕事に全力投球するタイプで、なんらかの方法で減速していかないと、壊れるまでアクセルを踏み続けそうなんですよ。
基本的に、この本に書かれているのは、そういう人たちの「遊びかた」「休みかた」なのです。
僕みたいに、仕事も遊びもダラダラやってしまう人間にとっては、ヒロミさんが15時から仕事の日は、朝からできる遊びを考えてしまうということに圧倒されるばかりです。
それじゃ、仕事が気になって遊んでいても楽しくないし、そもそも、体がもたないよ……
彼らは、ワーカホリックであるのと同じように、遊びも一生懸命にやらずにはいられない。
気分転換にはなるでしょうし、「時間をやりすごす」というのも大事なのだろうけれど。
まあでも、「遊びたい人」というのは、誰かに啓発されなくても自分で遊んでしまうものなので、「休み方」なんて本を読む必要はないですよね。
そういう意味では、「休むこと」に罪悪感を抱くようなワーカホリックな人にこそ、この新書の内容は響くと思います。
芸能界でも、一般の仕事でも、がんばっているからこそ、心のバランスを崩してしまうこともある。僕の身近なところだと、ナインティナインの岡村(岡村隆史)も一時期、精神的に疲れてしまってテレビの仕事を小休止した。
岡村とは芸能界に戻ってからよく2人で遊んでいて、うちの別荘にもときどき1人でふらっと来ていた。だから当時、「おまえ病気だからさ、もっとゆっくり遊んだほうがいいよ」とキャンプに誘い出したことがあった。周りは「ヒロミさん、今の岡村さんに、よくそんなストレートに『病気』だなんて言いますね」と焦ったようだが、僕は本人が認識することがすごく大事だと思っていた。
岡村は普段はそんなに喋る男じゃない。だからキャンプでも静かだった。「適当に過ごしてな」と伝えたら、あいつはずっと焚き火をしていた。火をじっと眺めながら、消えないように一生懸命やっていて、この真面目さで仕事を頑張り過ぎて疲れちゃったんだろうなと思った。
冠番組を持っているから、その番組に関わっている人たちのことを思って、勝手に責任を感じて、できるだけ長く続けていくために……と必死になって、そういう思いの強い人は結構やられてしまうと思う。 そういうときは環境を変えることだ。焚き火を眺めて落ち着くなら、それでいい。僕も海に山に遊びに行っている間は、動機も不安感も顔を出さない。
それは怠けているとか、サボっているとかではなく、がんばりから解放されているからだ。一生懸命になりがちだからこそ、そこから目をそらす小休止の時間を作ること。これは長く仕事を続けていく上で欠かせない息抜きの方法だと思う。
黙って焚き火を見つめている岡村さんの姿を思い浮かべてしまいます。
そういう岡村さんをそっと見守っていてくれるヒロミさんのことを、岡村さんは頼りにしていたのでしょうね。
ヒロミさんと藤田さんの話を読んでいると、「遊ぶ」といっても、ギャンブルや夜の街で痛飲するのではなく、文字通り、環境を変えて、自然の中で過ごすというのが効果的なのかな、とも感じたのです。
僕はアウトドアは苦手なのだけれど、そういう人間にこそ、「環境を変えて小休止する」ことが必要なのかもしれません。
「休みかた」の話ではないのですが、藤田さんがこんな話をされていたのが印象に残りました。
ヒロミさんも書いていますが、「見えている世界が狭くなると、そこでの常識に縛られてしまう」のです。
麻雀を打っているとき、学校で勉強ばかりやってきた人の打ち方はすぐにわかります。自分の手ばかりを見て、相手の考えを読もうとすることがなく、場の状況を俯瞰しようとする視点の高さもないので、勝負勘も働きません。
小さな世界での成功体験、経験則、自分なりのルールは外に出たときにはあまり通じません。本人もそれをわかっているので、外へ出るのを恐れるようにもなります。これは成長が止まった状態です。あるいはむしろ、縮小再生産を繰り返していると言えるでしょう。
世の中には、「働くために休む」人と、「休むために働く」人がいて、僕は間違いなく後者なんですよ。
ヒロミさんや藤田さんのようには、なれそうもない。
でも、ちょっと意識を変えれば、そういう人間でも、遊びから得られることって、少なくないのかもしれませんね。
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