Kindle版もあります。
テレビドラマ化で大人気、待望の最新作!
パーティ出席者500人
全員が証人!
時乃はアリバイを崩せるのか! ?今、日本でもっとも愛される
本格ミステリ作家が贈る「至極の作品集」時を戻すことができました。――アリバイは、崩れました。
難事件に頭を悩ませる新米刑事は、
美谷時計店の店主・時乃にアリバイ崩しを依頼する。
湖に沈められた車のアリバイ、
パーティ出席者500人が証人となった政治家のアリバイ、
容疑者の親族3人がもつ鉄壁のアリバイ......。
時乃の推理はいかに?
時乃が高校生時代に挑んだ
「夏休みのアリバイ」も特別収録。
『アリバイ崩し承ります』のシリーズ第2弾。
古書店に喫茶店にお菓子屋さんに……「小さなお店+美少女安楽椅子探偵モノ」というのは、どこまでニッチになっていくのか……
そもそも、この作品だって、「時計屋」である意味、あんまり無いような気がします。この第2弾はとくに。
アリバイを偽装するのは「時間のトリック」ではあるのですけど。
とはいえ、小さな時計店で、アンティークの時計を修理しながら、ときどき、アリバイ崩しを1件5000円で引き受けてくれる可憐な女性というのは、絵的にはやはり魅力はあるんですよね。設定勝ち、だよなあこれ。
テレビドラマ化された際には、主人公の時乃を浜辺美波さんが演じていて、もうそれだけで許す!って感じだったものなあ。
日本推理作家協会賞の短編部門の受賞作『時計屋探偵と二律背反のアリバイ』も収録されていて、「ひとりの容疑者が同時に離れた場所で2人の人間を殺害できるのか?」という謎に、警察という組織の難点を逆手にとった隠し味が加えられていて、「本当に、よくこんなトリックを思いつくものだなあ」と作者に感心してしまいました。これ、東野圭吾さんの某超有名作品っぽくない?と思いつつ。
その一方で、読んでいると、「強引にアリバイを成立させるために、犯人側が人間とは思えないくらい、キッチリと動き過ぎている」という印象もあるんですよね。ゴルゴ13とかジェームズ・ボンドでもない一般人が、犯罪をやる、あるいは加担するとして、こんなにタイトなスケジュールで予定通りに動けるものなのか。そもそも、「あいつを殺してしまおう」みたいな誘いに、そう簡単に参加してくれるのか(そして、秘密を守れるのか)。ルパン三世みたいな「変装の名人」が何人いるのか、と。
わざわざこんなまわりくどい、不自然なことをしなくても、とは思うのだけれど、2020年代は、時刻表トリックだけでアリバイが作れる時代でもないですし、リアリティよりも、精巧につくられたトリックの美しさを味わうべきなのでしょう。
こういう「論理パズルのようなミステリ」に「人間が描けていない」なんて言うのは不粋でしょうし、「時を戻すことができました」の時乃を浜辺美波さんが演じていると思うだけで、僕も「まあ、これはこれでいいか」と満足してしまうのです。
逆に、これだけ大掛かりなトリックを、人間ドラマでページ数を増すこともなく、短編で惜しげもなく使ってしまうというのは、「謎解き好き」には贅沢な読書時間でもあります。ミステリマニアではない僕にとっては、「謎解きのカタルシスにたどり着くために、400ページくらい読むのはつらいな」と思うことも多いですし。
気分転換ができる、読みやすくて短いけどそれなりに頭を使う、そんなミステリです。