琥珀色の戯言

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【映画感想】エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス ☆☆☆

あらすじ
エヴリン(ミシェル・ヨー)は優柔不断な夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)と反抗期の娘、頑固な父と暮らしながら、破産寸前のコインランドリーを経営している。税金申告の締め切りが迫る中、エヴリンはウェイモンドに並行世界に連れて行かれる。そこでカンフーマスターさながらの能力に目覚めたエヴリンは、全人類の命運を懸けて巨大な悪と闘うべく立ち上がる。

gaga.ne.jp

2023年映画館での鑑賞4作目。
休日の夕方からの回を観たのですが、観客は30人くらいでした。
アカデミー賞最有力!」と言われているので、混雑する前に観よう(そして、受賞が決まる前に感想を書こう)と思ったのです。


事前に確認したネットでの評判はあまり芳しいものではありませんでした。
movies.yahoo.co.jp

「これがアカデミー賞?」
「あまりに退屈で寝た」

「小劇場の芝居みたいな映画」なんてコメントもあったのです(それは「言い得て妙」だと思いました)。


 僕自身はどうだったかというと、正直、140分くらいある上映時間のうち、100分くらいまでは「ああ、もう早く終わってくれないかな……」とぐったりしながら観ていたのです。
 よくわからない設定、凄くも面白くもないアクションに、中途半端な下品さ。
「アカデミー会員の皆様、あなたたちの目は節穴ですか?」という、『謎解きはディナーのあとで』の決め台詞が頭に浮かんできました。

 
 序盤の「なんでも自分でやらないと気が済まない性質なのに、なんでも自分ばかりが押し付けられていると思っていて、いつも苛立っているエヴリン」(ミシェル・ヨー)をみて、「ああ、こういう人いるよなあ」とウンザリさせられ、安っぽいカンフーやマルチバースに「世界観のないタランティーノみたいな映画だな、東洋系の役者がたくさん出ているから、『これぞ多様性!』とか言ってポリコレ的に評価されているだけの映画なのか?」と感じていました。

 そもそも、「マルチバース」って、そんなに面白い?

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が大ヒットしたのは、マルチバースだからじゃなくて、これまでの『スパイダーマン』映画の主役たちが、(観客側が主役交代について想像している)恩讐を超えて一堂に会したことが、センチメンタルな感動を生み出したから、だと僕は思っています。

マルチバース」って、『ターミネーター』の3以降と同じで、「それだと、『なんでもあり』だし、いくらでも改変できるのなら、『今やっていることは意味がない』ってことじゃない?」と言いたくなってしまうのです。

日本はすでに「マルチバース大国」で、すでにさまざまな「転生もの」とか「なろう小説」が生み出され、消費されている国なんですよ。
エヴリンが、さまざまな並行世界で、カンフーなどのさまざまな能力を身につけて、「現在の世界」に戻ってくるなんていうのは、なんだかRPGの転職でアビリティを装備していくみたいな感じでした。

この映画世界のルールもよくわからないまま、いろんなことが起こっていくのですが、制作側が「これちょっと面白いんじゃない?」と挟んでくる小ネタみたいなやつが、ことごとく滑っているのです。

ああ、こういう映画、観たことあるなあ。

そうか、三谷幸喜さんの『ギャラクシー街道』!
fujipon.hatenadiary.com

いやほんと、「なんでこれがアカデミー賞最有力?」と、眠気と戦いながら、どんなひどい感想を書いてやろうかと思いつつ観ていたのです。
というか、いろんな映画賞を総なめの勢いなので、アカデミー会員だけが持ち上げているわけではないのですが。


正直、感想を書くつもりじゃなかったら、途中で帰っていたかもしれません。
映画館という逃げ場のない場所で集中して観るのではなく、配信サービスを利用して家で観ていたら、30分もしないうちに放り投げていたのではなかろうか。

これをみんな最後まで観て高得点をつけたのであれば、アカデミー会員ってみんなすごいな。

なんかもうひたすらつまらないし、登場人物に魅力は感じないし、冗長な辛い映画鑑賞。


……ただ、最後まで観ると、なぜか腑に落ちた、というか、「まあ、そんなに悪くもないかな」という後味ではあったのです。
個人的には、石のところが好きでした。
いろんな映画へのオマージュも込められているのです。

マルチバース」がテーマのようでいて、実は「マルチバースブームへの皮肉」とも受け取れるし、「結局、理由とかプロセスなんかどうでもよくて、『好きなものは好き』なんだよな、人には、今しかないんだよな」と、納得してしまったところもあり。


 ネタバレっぽくなるのですが、「これって、『シン・エヴァンゲリオン』じゃねーか!」とも思いました。
 そして、「これなら、エンターテインメントとしてもドラマとしても『シン・エヴァ』のほうが完成度が高いのではないか」とも。

fujipon.hatenadiary.com


「これを『面白い!』というのが『わかっている人』だ」みたいな流れになって、評論家は高く評価しているのだろうか。いや確かに、最後までガマンして観ると、「そんなに悪くない映画だな」とは思うのだけれど、なんかもう最近のアカデミー賞って、ポリコレ的な配慮が影響しすぎてない?


fujipon.hatenablog.com

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