琥珀色の戯言

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【読書感想】人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本 ☆☆☆

人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本 (扶桑社新書)

人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本 (扶桑社新書)

  • 作者:稲田 俊輔
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2019/11/02
  • メディア: 新書


Kindle版もあります。

人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本 (SPA!BOOKS新書)

人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本 (SPA!BOOKS新書)

  • 作者:稲田 俊輔
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2019/11/02
  • メディア: Kindle

内容紹介
食べログ3.7以上の店を経営するプロも唸った!
有名チェーン絶品メニューのカラクリを明かす

多くの人が普段から利用するであろう「飲食チェーン店」。
「チェーン店なんておいしくない」
「安くて便利だから仕方なく使うだけ」
「時間も金もないからこんなところで飯を食べている」
といったネガティブなイメージを持っている人が多いのではないだろうか。

しかし、複数の飲食チェーンを経営するプロは、チェーン店は実は「宝の山」だと指摘する。

サイゼリヤのオリーブオイルと粉チーズがスゴい!
本格派デニーズのデリーチキンカレー!
バーミヤンラーメンのスープはダシが絶品!
マクドナルドの肉はケッチャップ抜きがうまい
ご飯が食べたくなる松屋のニンニクの秘密etc

. 筆者が実際食べて見つけた知ると行きたくなる秘密が満載の1冊だ。


 チェーン店の人気メニュー開発の舞台裏を取材して書かれたもの、だと思って購入したのですが、内容は、外食業界で働いている人からみた、ファミレス、チェーン店のおすすめのメニューや食べ方の工夫を紹介した本でした。


 とくに、著者の「サイゼリア愛」には驚かされます。
 僕は自分の味覚にそんなに自信はないのだけれど、サイゼリアの料理に関しては、「まずくはないけれど、コンビニで買えるのと同じくらいのドリアだよな……安いし、ゆっくり座って食べられるから良いけど」というくらいのスタンスなんですよ。
 たぶん、ほとんどのお客さんもそんな感じではないでしょうか。
 ところが、著者は、サイゼリアのそういう「素っ気なさ」みたいなものを、けっこう高く評価しているのです。

 チェーン店に限らず飲食店で安い料理を提供しようとしたら、当たり前ですがコストを削らなければいけません。コストを削れば料理は味気ないものになってしまいがちです。なので、安さを追求するレストランは(あるいはコンビニやファストフードなんかでもそうですが)味気なくなった部分を別の何らかの方法で補おうと躍起になるのが普通です。
 例えばコストの高い食材である肉を減らせば、それを単価の安い肉エキスのようなもので補う、みたいなことです。実際はそんな単純なものではないのですが、あくまで一つのわかりやすいたとえとしてはそういうことになります。もちろんそういう類いの企業努力は大事なことでもあるのですが、その結果として安い外食はなんだか押し付けがましい、少しうんざりするような味になってしまうことが往々にしてあるのです。
 サイゼリアが独特なのは、そういう「おいしさの上げ底」みたいなことをあえてやらないというスタンスを、頑なに守っているところにあります。そしてその頑なさの根幹を成しているのは、サイゼリアの素材に対する強烈な自信であると言えるのかもしれません。


(中略)


 あくまで仮の話なのですが、もしもサイゼリアで「ただ茹でただけのパスタ」が出てきたとしましょう。そこに前述のオリーブオイルをたっぷりとかけ回し、グランモラビアチーズをたっぷり振りかけて、調味料コーナーにあるブラックペッパーをガリリとひきます。するとそれは瞬く間に絶品のパスタ料理になるのです。
 もちろんサイゼリアはレストランですから、茹でただけのパスタをそのままお客に提供することはありませんが、厨房の中ではそういうミニマルな最低限の足し算だけが施された状態で商品として提供されるわけです。そこには、素材さえ良ければ無理な底上げは必要ないという強烈な自負があります。
 人によってはそれだけでは物足りないでしょう。そういう人はサイゼリアに対し「確かに安いけど安いなりの味」という評価だけを下してしまうのかもしれません。でも普段安い外食のうんざりする押しつけがましい味に辟易しているような人々にとっては、サイゼリアは数少ない安寧の場になっているのではないかと思います。


 著者が言いたいことは何となくわかるのですが、こういうのは、マンガ『美味しんぼ』に出てくる「美食慣れしていた京極さんが、故郷のシンプルなご飯とみそ汁に感動する話」みたいなもので、僕には実感がわかない、というのが正直なところです。
 これを読んで、「そうそう!」って思える人は、この本の良い読者になれると思います。


 サイゼリアのメニューの食べ方の工夫の一例。

 リブステーキが出されたら、いささか面倒ですがいくつかの手続きが必要です。まずは鉄板の上から「ガルムソース」を取り出してテーブルの片隅に追放しその後は見て見ぬふりをします。イタリアンのフルコースに醤油味は不要なのです。
 次に付け合わせのポテト・青豆・コーンを小皿に移してしまいます。これは追放するわけではありません。これらはこれで十分いいものなのでのちほど活用します。
 さてここで鉄板の上にはステーキだけが丸々一枚残りました。これを6切れ程度にカットします。できれば、垂直にまっすぐカットするのではなく、ナイフを斜めに入れていわゆる「削ぎ切り」にすると、それっぽい見た目になります。このまま最後の仕上げに進んでもいいのですが、もうひと手間をここで加えるとより理想的です。ですがこれには一つの前準備が必要です。前菜のサラミの皿をここまで下げずに置いておく、というのがその準備にあたります。そのサラミがのっていた白皿に、カットしたリブステーキを移し替えて並べるのです。そしていよいよ仕上げです。そこにまずたっぷりのオリーブオイルを注ぎます。軽く塩を振り、多めの黒胡椒もかけます。このとき黒胡椒を皿からはみ出さんばかりに広範囲にかけるとさらにイタリアンらしくなります。理想を言えば、サラミの皿だけではんくルッコラも残しておいてここにあしらうことができると彩もよく、より完璧です。もしくは思い切ってここで彩りイタリアンサラダを追加オーダーし、トッピングのルッコラ、黒オリーブ、トマト全てを移し変えてしまうと、より完成度は高まるでしょう。もしこのときデキャンタの赤を飲んでいたらごく少量を肉と皿に振りかけるとこれもいいアクセントになります。


(以下略)


 すみません、僕はもう途中から読み飛ばしてしまいました。
 著者も「ここまで面倒なことをするくらいなら素直にステーキとして食べたい、という人もいるだろうけれど、一つの可能性として覚えていて損はないはず」と仰っているのですが、僕はまさに「いくら美味しくなるとしても、サイゼリアでこんな面倒なことはしたくない」派なので、この情熱には感銘を受けますが、実用性には乏しい、と断じざるをえません。
 サイゼリアのプリンはものすごくおいしい、というような話は、すごく参考にはなるのですが……


 飲食業界で仕事をされているだけあって、ファミレスやチェーン店の料理と原価についての考察や、「こだわりのメニュー」を創っても、お客さんがオーダーするのは定番商品ばかり、という現実などにも触れられています。
 「ファミレスやチェーン店は、どこも同じようなメニュー」なのは、店側の都合だけではないのです。


 著者は、「評価される側」としての立場も踏まえて、店選びの際の「食べログの低評価レビュー」の有用性を述べています。

 あくまで個人的な基準ですが、スペイン料理に限らずイタリアンやフレンチあたりは「オイリー」「塩気が強い」「香草がキツい」系の低評価レビューがある店に大当たりが多いようです。和食や居酒屋の「料理によって当たり外れが大きい」は、使い方が少し難しいかもしれないけれど楽しめる店。カレーやインド料理だと「コクや深みが感じられない」は、これは中華でもある程度共通します。中華といえばもう一つ「日本人には合わない」&「店員も客も中国人ばかり」のコンボも鉄板。ラーメン屋なら「ラーメンごときにこの値段はない」。あと老舗における「接客が最悪」も接待やデートでなければ狙い目。
 ……と、こんな具合に当たりに出合いやすい悪口キーワードを知っておくと、食べログでのお店選びはぐんと捗るようになるはずです。手始め
自分がお気に入りでよく通っている店の食べログページを開いて、低評価レビューを探して読んでみてください。いくつかのお店でそれをやるうちに、だんだんコツが掴めてくると思います。


 この本、著者と「食」の傾向や好みが合う人にとっては、ものすごく読み応えがあると思うんですよ。
 でも、合わない人にとっては「ファミレスやチェーン店にそこまでこだわらなくても……」で済んでしまう話なので、購入を検討される方は、書店で試し読みをしてみることをおすすめします(ちょっとて「食べログの低評価レビュー」っぽいな……)。


サイゼリヤのまちがいさがし

サイゼリヤのまちがいさがし

  • 作者:サイゼリヤ
  • 出版社/メーカー: 新星出版社
  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: Kindle

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