琥珀色の戯言

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『DEATH NOTE』後編〜the Last name〜 ☆☆☆☆☆

http://wwws.warnerbros.co.jp/deathnote/

「前編」のほうは、「月はこんなヤツじゃないだろ…」というようなところもけっこうあって、「まあこんなものかな……」というデキだったので、この「後編」に関しても「『原作とはラストが違う』というのも気になるし、行きがかり上、最後まで観ておくかな、時間が経ったらどこかでネタバレ見ちゃいそうだし……」という感じで、あまり大きな期待はせずに観に行ったのです。
それで、観終わった感想となのですが、面白いですよこの映画。正直、「所有権」絡みの話とかは、かなりわかりにくいし、登場人物のキャラクターはやっぱりちょっと違うかな、というところもあるんですけど、それを差し引いてもかなり面白かったです。
原作と映画の「前編」を観た人は、ぜひ、この「後編」まで観てもらいたい。


以下、ネタバレ感想です。この映画、ネタバレされてしまうと面白くもなんともなくなってしまうので、これから観るつもりの人は読まないでくださいね。



 この作品で僕が最も印象に残ったのは、やっぱり「L」なんですよね。前作では「L」役の松山ケンイチさんが、雑誌のインタビューのなかで(http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20060622#p3参照)、

僕のところに出演依頼がきて、Lを演じることになりました。そこでもう一度、漫画を読み返しました。それまで、Lは頭がおかしい人間としか思えなかったんですが、実は、人と接したことがなく、愛や情がわかっていないため、ああなんだろうと思うようになりました。

 なんてことを話していて、こいつは本当に大丈夫なのか?という感じだったのですけど、この「後編」の「L」は、すごく良かったと思います。いや、単純に僕が「L」好きだからかもしれませんが、「しかたがないので、私の命をあきらめることにしました」なんて淡々と言い放つシーンなんて、「ああ、こういう『命』よりも『このゲームの勝利』を追及するところが『L』なんだよなあ」と息をのみながら観てしまいましたし。
 そして、僕がいちばん好きだったのが、「L」が死んでいくシーンです。傍らにワタリの写真を置き、ひとりでチェスの駒を動かしながら、たぶん確実であろう自分の死を待つ「L」。何か言おうとするのだけれども何も言えない総一郎を「あなたは良い父親だったと思います」と優しく慰めたあと、「ひとりにしてください」と宣言し、「L」は従容と死んでいきます。結局、夜神月がいなくなった世界にはもう「L」とチェスで対等の勝負ができる相手はなく、ワタリのいない世界には、友と呼べる人もいない。「L」はとても優しい男だった。でも、限りなく孤独な天才だった……
 まあ、あの「L」の「死亡予約作戦」を観て「なるほど、その手があったか!」と僕たちが思うのって、原作での「その作戦をやらなかった場合の『L』の敗北」を知っているからで、その予備知識がない、映画だけでしか、この『DEATH NOTE』を知らない人にとっては、「L、それって諦めがよすぎるんじゃないの?」と思われてしまう可能性も十分あるような気もするんですよね。
 そして、これは前作からの疑問点ではあるのですが、この映画での夜神月はとにかく「自分さえよければいいし、家族や恋人も平然と犠牲にする男」でしかなくて、こういうヤツなら、さっさと「目の取引」でもなんでもやって、「L」を抹殺しちゃうと思うんですよ。『DEATH NOTE』の最大の「ルール」っていうのは、「月とLは、お互いの知力で戦う」というものだと、僕は考えています。だって、極端な話、「L」の権力があれば、本当に月がキラだと自信があるならば暗殺しちゃえばいいわけだし、月のほうはもっとシンプルに、死刑になるくらいなら寿命が半分になっても「目」を得れば確勝のはずなんだから。でも、2人はお互いのプライドにかけて、そんなことはしないのです。そして、マンガ版の「DEATH NOTE」では、そういう2人の行動は、徹底的に貫かれています。どんなに犯罪者や邪魔者を裁いても、身内には手をかけない、それが夜神月のはず。レムの行動には不確定要素が多すぎるし、最後にわざわざ大荷物のなかにノートを入れてくる海砂はかなり不自然だったしねえ。
 ちなみに、http://www.enpitu.ne.jp/usr6/bin/day?id=60769&pg=20061104
 ↑でとりあげられている原作者・大場つぐみ先生のインタビューからすると、映画版の『DEATH NOTE』は、「最後には正義が勝つ」という話になってしまっているのかもしれません。若干説教臭い台詞が最後のほうは多かったかも。
 それでも、「後編」を観終わって、僕は「面白い映画だったな!」と満足できました。「原作に忠実」ではなかったけれど、ヨツバキラとか、ニア&メロとかを描かなかったことによってストーリーはわかりやすく、ドラマチックになってましたしね。そして、原作のエッセンスをきちんと生かしつつ、ちゃんと「新しいエンディング」を創造していましたし。原作のラストの「ノートすり替え合戦」よりも、このくらいのシンプルな展開のほうが、僕は少なくとも「座りがいい」感じはしました。
 とりあえず、「素晴らしいエンターテインメント作品」だったし、「L」を観るためだけにDVDが出たら買おうと思っています。

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