琥珀色の戯言

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【読書感想】プラネタリウム男 ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

内容紹介
個人製作は不可能といわれたレンズ式のプラネタリウムを、大学生にして独力で完成させ、ソニーに就職後も、二足の草鞋で、当時、投影恒星数世界最多、重さ30キロの移動式プラネタリウムメガスター」を開発した天才技術者、大平貴之。人間関係が苦手で、周囲と衝突を繰り返し、ソニーを飛び出した大平は、既存メーカーとの熾烈な開発競争などの苦難に直面しつつも、世界最先端の独創的なプラネタリウムを次々に作り出していく


 えっ、プラネタリウムって、ひとりで作れるの?
 この新書を読み始めて、そのことにいちばん驚きました。
 そもそも、自力で作ろうなんて、考えたこともなかった……
 「星座早見盤」くらいならできそうな気もしなくはないですが、いまや、スマートフォンのアプリで星の位置も確認できるんだよなあ。
 なんのかんの言っても、僕が子どもの頃に比べて、テクノロジーは圧倒的に進化しています。

 著者は、マンガやゲームには見向きもせず、化学実験の本を読んだり、試験管やフラスコ、化学薬品を欲しがるような子どもだったそうです。
 植物を育てることや工作、写真や鉱物採集にも夢中になっていたのですが、整理整頓が全くできず、忘れ物もよくする、という困ったところもありました。


 川崎市青少年科学館プラネタリウムに感動した著者は、最初、夜光塗料で部屋に星空をつくっていたのですが、それでは飽き足らなくなって、プラネタリウムの自作をはじめるのです。

 しかし凝り性の僕は次第に夜光塗料では飽き足らなくなり、科学館にあるのと同じ投影式のプラネタリウムを作りたいと思うようになった。黒い紙に孔をあけて家庭用の電球を覆ってみたがうまくいかない。そんな中、近所の書店でたまたま「たのしいミニプラネタリウム」という付録のついた本を見つけた。さっそく買い求めて試してみると、たしかに星が映った。けれど期待したような映り方ではなかった。ヒントを得た僕は、これの改良に取り組み、投影機のサイズを変えたり電球を替えたりで、結局はボール紙で、南極から北極までさまざまな土地で見える星空を再現する2球式のピンホール式プラネタリウムを作り上げるまでになった。小学校高学年頃である。


 小学校高学年で自作プラネタリウムをつくってしまう著者は、やっぱり「天才」なんじゃないかと思うのです。
 でも、一般的な「大学から社会人へのルート」に乗ろうとすると、高度なプラネタリウムをつくるのは難しく、結局、大学を1年間休学して、アマチュア自作としては前例のないレンズ投影式プラネタリウム「アストロライナー」を1991年に完成させたのです。


 それでも、プラネタリウム作りは、あくまでも趣味の範疇、ということで、著者はソニーの生産技術部門に入社します。そこで、もうプラネタリウムからは「卒業」するはずだったのですが、会社でも「事業としてやれるのではないか」と後押ししてくれる人が出てきて(結果的には、ソニーの事業としてやっていくことはできなかったのですけど)、プラネタリウム作りを続けていくことになります。
 そして、最終的には、ソニーから独立して、プラネタリウムを製作する会社を設立することになるのです。
 プラネタリウムの世界はもともと参入している会社が少なく、閉鎖的なところもあったため、当初はなかなかうまくいきませんでした。
 しかしながら、その圧倒的な性能が認められ、著者のプラネタリウムは次第に多くの科学館などで導入されています。
 ただ、技術というのは日進月歩ですし、研究開発において、小規模の会社が大きな会社にずっと先行しつづけるというのは、かなり難しいことでもあるんですよね。


 著者は、2005年4月にセガトイズから発売された、家庭用プラネタリウムホームスター」の開発にも携わっています。

 製品発表前、(セガトイズの)加藤氏と、どのくらい売れるか予想してみたことがある。僕は、1000台くらい売れればいいのかな、と話した。在来のピンホール式の家庭用プラネタリウムがさほど売れていないことは知っていたし、施設のプラネタリウムも斜陽産業と言われていた。天文に興味を持つ自分だからこそ、逆に星に特別の関心がない一般消費者が、たとえどんなきれいあ星空を映し出したとしても、そこまで興味を持ってくれるか自信が持てなかったのである。しかし加藤氏は、少なくとも1万台は売りたいと言っていた。1万台売れれば、玩具の世界ではそこそこヒット商品と言えます。きっと売れますよ、と加藤氏は笑顔で言った。自身が部屋で星空を見たいと願ってこの商品企画を立ち上げた加藤氏ならではの自信だったのかもしれない。
 かくして異変は、商品発表の直後に起きた。インターネットのホームページに、世界初の家庭用レンズ式プラネタリウムを発売、という記事を載せたのである。それからしばらくして、ホームページにアクセスができないことに気づいた。ネットワークのトラブルだろうか? しかしほかの機能に異常はない。ネットワークのプロバイダに問い合わせようと考えつつ、アクセスログを見て仰天したのである。そのニュース記事へのアクセスが殺到していて、サーバーがパンクしていたのだった。


 「ホームスター」は、その後も改良を重ねられ、2015年12月末時点で、全世界での累計出荷数は100万台を突破したそうです。
 いま、この時代にも(この時代、だからこそ?)「星空」を多くの人が求めていたのです。


 当初は、星空の鮮明さを優先し、光学式プラネタリウムを開発していた著者ですが、より美しい星空をつくり出すために、新しい技術を取り入れていきます。

 デジタル投影では、なぜ光学式に星空の鮮明さで及ばないのか? 解像度が足りない、と業界人の多くは考えていた。しかし僕は両者をつぶさに観察していてあることに気づいたのだ。デジタル投影も、解像度は年々向上している。4K、8Kという解像度も実現できるようになってくると、少なくともぱっと見ではデジタルの画像の粗さはあまり気にならなくなってくる。しかしそれでも残された、越えられない壁を作り出しているのは、実は解像度ではなく、明るい星の鋭い輝きにあることを。
 裏を返せば、デジタル投影でも、この明るい星の輝きさえ何とかできれば、この光学式とデジタル投影の間の壁を越えることができるということだ。
 ならば、明るい星だけ光学式で投影すればいいじゃないか! この発想こそが今までのプラネタリウムとも、今までのメガスターとも決定的に違う革新技術「フュージョン」の原点だった。


 この新書、すごい技術と熱意をもった著者が「新しいプラネタリウム」を開発していくサクセスストーリー、と言いたいところなのですが、それだけではありません。
 もともとあまり他人とうまくやっていくことが得意ではない著者が会社をつくっていくなかで、周囲の人たちとうまくいかなくなったり、素晴らしい製品なのに、プラネタリウム業界の閉鎖性によって、「世間の知名度は高いのだけど、なかなか採用してもらえない、という状況が続いたりと、さまざまな挫折を乗り越えていく物語でもあるんですよね。
 読んでいると、不器用ながらも、さまざまなトラブルを乗り越えて前に進もうとする著者を応援したくなってくるのです。
 何より、この人がつくったすごいプラネタリウムを見たい!って思う本でした。


HOMESTAR Classic (ホームスター クラシック) メタリックネイビー

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HOMESTAR ホームスター 君の名は。

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