琥珀色の戯言

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【映画感想】シェイプ・オブ・ウォーター ☆☆☆☆

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1962年、米ソ冷戦時代のアメリカで、政府の極秘研究所の清掃員として働く孤独なイライザ(サリー・ホーキンス)は、同僚のゼルダオクタヴィア・スペンサー)と共に秘密の実験を目撃する。アマゾンで崇められていたという、人間ではない“彼”の特異な姿に心惹(ひ)かれた彼女は、こっそり“彼”に会いにいくようになる。ところが“彼”は、もうすぐ実験の犠牲になることが決まっており……。


www.foxmovies-jp.com


2018年、映画館での7作目。
観客は15人くらいでした。


第90回アカデミー賞、作品賞および監督賞(ギレルモ・デル・トロ監督)受賞作。
家の近くには、車で行ける範囲に4件映画館があるのですが、この作品が上映されていたのは1館だけ、しかも、家からいちばん遠い映画館だったんですよね。
僕も予告編をみて、「うーん、異種間恋愛映画か……もともと恋愛映画ってあんまり好きじゃないし、スルーだな……」と思っていたんですよ。
でも、ミーハー映画ファンとしては、アカデミー作品賞ともなれば、いちおう、観ておくのも礼儀みたいなものではないか、ということで。
パシフィック・リム』で、特撮・ロボットアニメ愛をみせてくれたギレルモ・デル・トロ監督への御祝儀のつもりでもありました。


正直、僕はこの映画を見る前までは、『美女と野獣』あるいは『人魚姫』みたいな内容なんだろうな、と思っていたんですよ。
しかしながら、観てみると、こりゃ「R-15(15歳未満禁止)」だよなあ、というエログロシーンがぎっしり。
しかも、この映画がすごいのは、主演のサリー・ホーキンスさんが「必然性もないのに脱いでいる」とか(たぶん、監督的には必然性はあったのでしょうけど)、敵役の差別主義者の偉い人が、不機嫌そうに自分の家に帰って、いきなり何をするかと思えば……とか、”彼”が出会った動物と……とか、観ていて、「そのエログロ、要るのか? なぜ、わざわざ間口を狭くするんだ」というような描写が、これでもか、と盛り込まれているところなんですよ。

「そのエログロ、もうちょっとセーブするか、カットしてしまえば、R-15じゃなくて、子供だって観られそうなものなのに……」と言いたくなるのです。
率直に言うと、記憶に残るのは、猫とか真っ黒な指とかばっかりなんだよなあ。
そういう意味では、成功している、とも言えるのだろうか……


フランスの恋愛映画みたいに美しいシーンがたくさんある一方で、エログロも満載。
そして、この映画をみていて面白かったのは、なんでもちゃんと「理由」があって、それを説明してくれる作品が多いなから、ひたすら、不親切だったことなのです。
なんであんな姿の”彼”を、イライザは好きになったのか? 喋ることができない自分に重ね合わせての「同情」だったのか? でも、「同情」とは違いそうだしなあ。
同情と愛のどこが違うのか説明するのは、僕には難しいのですが。
そもそも、恋愛映画って、誰かが誰かを好きになる「きっかけ」とか、「理由」がきっちり描かれていることが多いですよね。それを観て、観客も、「ああ、だから二人は魅かれ合ったんだね」と納得できる。
ところが、この『シェイプ・オブ・ウォーター』でのイライザと”彼”については、イライザがなんとなく興味を持って近づいていったら、いつのまにかそういうことになっていた。
でも、「うまく説明できないけど、好きなものは好き。いつのまにか好きになっていた」っていうのは、たぶん、いちばん真実に近いんじゃないか、と僕は最近思うようになりました。むしろ、理由とかきっかけというのは「後付け」でしかない。
ギレルモ・デル・トロ監督は、イライザと同居人の男性の関係についても、観ていて不自然なくらいに言葉にしていません(字幕でそうなった可能性もありますが)。
喋れない女と、過去に生きている男。
親子、ではなさそうだけど、夫婦なのだとしたら、あんな場面やそんな場面に遭遇して、男のほうは、ああいうリアクションをするだろうか?
マイノリティのシェアハウスみたいなところで共同生活をおくっているのか?
もしかしたら、そういう「言葉にできる関係」に疑義を呈するのが、この映画が狙っているものだったのかな……
これは、「こういうもの」なんだから、説明する必要なんてないんだ。
そうやって、言葉で説明しようとするから、かえってわかりあえなくなっているんじゃないのか?


だとしたら、僕は見事にその術中にハマってしまったようです。


ギレルモ・デル・トロ監督は、押井守監督の大ファンだそうですが、それ、わかるよなあ。押井監督も「説明しすぎる映画」が嫌いな人だし。


この映画、ヒロインのサリー・ホーキンスさんが素晴らしかった。
なんともいえない、地味エロさ、とでも言うべきか……
「喋れない人」に魅かれてしまうというのは、同情なのか、それとも、嗜虐趣味なのか・
個人的には「マイノリティは心が美しい」とかいうのもある種の「偏見」だと思うし、マイノリティ同士も差別しあっているのが世の中の現実ではある。
それでも、いろんなものを突き詰めていくと、結局のところは、個と個の「愛情」みたいなものが、すべてなのかもしれない。


この映画をみて、「ああ、明日からオフィスを掃除しているおばちゃんたちが、ちょっと気になってしまうなあ」なんて思ってしまいました。
そんなふうに「相手のことを考えてみる」きっかけになる映画ではありますね。
ただ、もともと僕は「中華料理店の水槽の魚を逃してやりたくなるような人間」だからなあ……


「純愛文芸映画」みたいなのを覚悟して観に行ったのですが、予想より、普通にエンターテインメントとして楽しめる映画でした。最後まで「この話、どこに着地するんだ?」とドキドキしましたし。


fujipon.hatenablog.com

シェイプ・オブ・ウォーター (竹書房文庫)

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