琥珀色の戯言

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三谷幸喜のありふれた生活5〜有頂天時代 ☆☆☆

三谷幸喜のありふれた生活〈5〉有頂天時代

三谷幸喜のありふれた生活〈5〉有頂天時代

 三谷さんが朝日新聞に連載中のエッセイをまとめたものです。僕は三谷さんが書かれる作品は大概観ているのですけど(もちろん、全部が全部大傑作だと思っているわけではありませんが)、このエッセイには「作家・三谷幸喜の孤独」と「人間・三谷幸喜の照れ」が端的にあらわれていて、毎回興味深く読んでいます。ただ、この「有頂天時代」は、どちらかというと外向きの「仕事の話」が多くて、三谷さんの内面好きな僕には、やや物足りないところもあったのですけど。この巻では、むしろ「脚本家・三谷幸喜が語る『役者像』」が一番面白かった気がします。
「育ちの良い野生児」という項で、松たか子さんのことがこんなふうに書かれていました。

 稽古場の彼女は、「無防備」とか「無頓着」といった表現がぴったり。こっちが勝手に抱いている「松たか子」像をことごとく崩してくれました。一対一でダメ出ししている最中に、僕の目の前で、Tシャツの中に手を入れてお腹をぽりぽり掻いた女優は、はっきり言って彼女だけです。いちご大福を食べていると、「あ、私にも一口下さーい」と寄って来て、僕の手の中のいちご大福にいきなりかぶりつくと、全体の3分の1を食い千切り、呆然と佇む僕を尻目に嬉しそうにスキップで去って行った女優も、今のところは彼女だけ。どこまでも自然体。どこまでもフリーダム。それはそれでとても魅力的ではありましたが。僕はそんな彼女に「育ちの良い野生児」の称号を密かに与えました。

「ヘビースモーカー疑惑!」とか、一時はバッシングされ気味だった松たか子さんなのですが、本人的には、「普通にタバコ吸ってるだけ」だったのかもしれません。『ロングバケーション』のときは、「おお、お嬢様!」って感じで、「お嬢様が竹野内豊に弄ばれてる!くーっ!ちくしょー!」とテレビの前で憤っていたのになあ。

ちなみに、松さん自身は、以前、あるラジオ番組で、「自然体」について、こんなふうに仰っておられるのです。

「自然体」といわれるけれど、私にとっての自然体というのは、その場の雰囲気を読んで、それにあった行動をすることなんです。

 ああ、なんだか途中から松たか子話になってしまって申し訳ない。でも、僕も自分のいちご大福を3分の1、松さんに食べてもらいたい! 家宝にします。

「ありふれた生活」は、「3」「4」あたりが、僕はいちばん好きです。

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