参考リンク:レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―(公式サイト)
あらすじ: 西暦208年、魏呉蜀が争う中国・三国時代。孔明(金城武)の奇策で曹操軍を撤退させた孫権・劉備連合軍だったが、食料不足と疫病のために戦意も尽きようとしていた。そこに曹操軍の2000隻の戦艦と80万の兵士が逆襲。司令官の周瑜(トニー・レオン)と孔明が作戦を仕掛けようとする中、周瑜の妻・小喬(リン・チーリン)がある行動に出る。(シネマトゥデイ)
金曜日のレイトショーで鑑賞。観客は100人くらい。
いつもこのブログを読んでくださっている皆様はお気づきでしょうが、金曜日とはいえ、映画の日でもないのに、僕が平日のレイトショーで観た映画のなかでは、最高の客入りでした。客層もカップルから老若(子供はいませんでしたが)男女と幅広く、一人で観に来た40〜60代くらいの男性がけっこういました。
先週の日曜日のテレビ放映の効果もかなりあるのかもしれません(視聴率19.9%だったそうですし)。
観終えての感想。
とりあえず、冒頭のジョン・ウー監督のお説教は不要というか邪魔。こちとら花火観に来てるのだが。
やっぱりいろいろ言いたいことはあるけど、「戦闘映画」としては、かなり面白い作品です。
「赤壁の戦い」といえば、なんといっても「火計」なのですが、この映画のクライマックスで、爆炎に包まれた曹操軍の大艦隊や戦場を観ているだけで、なんというか、『地獄変』の絵師・良秀になったような背徳的なうっとりした気分になれます。
それは「破壊」の光景なんだけれども、不謹慎ながら目前で繰り広げられる「大花火大会」のような圧倒的な迫力があるのです。
「リアル」なのかどうかはわからないというか、たぶん実際の戦いはもっと地味だったのではないかと思いますが(曹操軍の撤退の主因は、戦闘での敗北ではなくて、疫病の蔓延による士気低下であったという説もありますし)、「大軍どうしの戦闘」をCG頼りではなく、これだけ多くの人間を集めて描いた作品というのは、いままで観たことがありません。
はっきり言って、ストーリーはムチャクチャです。
僕は蜀派で、尊敬する歴史上の人物は諸葛孔明と高校受験の面接の練習で答えて、「気持ちはわかるが、もっと理由を説明しやすい人物にしたほうがいいんじゃないか?」とアドバイスされたことがあるくらいなのですが、それでも、この映画での曹操の扱いはちょっとあんまりだと思います。こんな曹操じゃあ、袁術にだって勝てないだろ……
行動はすべて短絡的で、周瑜・孔明のあまりにもわざとらしい作戦に引っかかってばかり。騙されるたびに衝動的に味方に残虐行為を行う丞相!曹操側は重臣でも曹操以外は誰が誰だかよくわからん!おまけにクライマックスでは小喬に……
いや、あれはさすがに酷い。好意的に考えれば、曹操という詩人は、ああいう場面であえて面白がって付き合ってあげるような「まわりくどさ」を持っている人物だし、逆に、それが存命中に「帝位」に届かなかった理由なのではないかとも思うのですが、曹操は、あれにいきなり口をつけるほどの暇人でもバカでもなかったはずです。あまりにかわいそうで、僕は途中から曹操を応援してしまいましたよ。
戦闘シーンも、火計の場面はすばらしいのだけれど、最後は、「ラスボス・曹操を倒すダンジョンRPG」みたいになってたしなあ。
個人的には、「赤壁後」の曹操と関羽が対峙するシーンが好きだったので、あれをやってほしかったのですが、この映画の流れだと、ちょっと不自然ですね。
あと、孫権の妹はひどかった。いくらなんでも、肩車すればわかるんじゃない?『テンペスト』かよ!
144分という長さのうち、かなりの時間が、「矢がいっぱい飛んできて刺さっているだけ」とか「蹴鞠の試合」とか「雑兵どうしの殺し合い」だったりで、「それに使う時間があるんだったら、もっと入れるべきシーンがあるんじゃないか?」などと考えもしたのですが(最大のムダは孫権の妹の潜入シーン関係)、「燃えさかる曹操100万の軍勢」を大スクリーンで観ることができて、僕はけっこう満足しました。
「史実と違う!」と言い始めたらキリがないのですが、そんなことは百も承知でこの気持ち悪くなるくらい大迫力の戦闘シーンを撮り切ったジョン・ウー監督には敬意を表します。
でもなあ、これって、この映画の文脈的には「正義の孫権・劉備連合軍が、悪の曹操軍を撃退した」ってことなんですよね。
『三国志』は、そんなふうに「善悪」で語りきれないのが最大の魅力なんだけどなあ……
曹操には曹操の「未来へのビジョン」があったと思うし、「赤壁の戦い」の結果が生んだのは「さらなる混迷の時代」だったのにね。
間違いなく、この映画のもうひとつの主役は「火」です。
キャンプファイヤー大好き!とか、焚火をずっと見ていると、時間が経つのを忘れる、という人向け。
そして、『レッドクリフ Part I』が楽しめた人には、もちろんオススメです。
『三国志』ファンのなかには、あまりにオリジナリティあふれるストーリーに否定的な感想を持つ人も多いかもしれませんが、せっかくこういうド派手な「大作」が映画館で観られる時代に立ち会っているのですから、観ておいてソンはないかと。
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