琥珀色の戯言

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作家とは何か/小説の書き方 ☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
ベストセラー作家が綴る、文壇の裏側と作家の心理。異色の作家論。作家の時間管理、人間関係、原稿執筆から出版社・編集者との力関係、流行作家の権力、財産、異性関係まで、作家の人生を赤裸々に綴る、小説では読めない「作家という職業」のすべて―。


内容紹介
人気作家の森村誠一が、小説の構成、アイデアからプロットの立て方まで、小説を書くための基本を徹底的に解説した小説講座の決定版。

購入した時点では知らなかったのですが、もともと、「小説道場」として、2007年に小学館から出ていた単行本を2冊に分けて新書にしたもののようです。
「自分ではなかなか書けずに、毎月『公募ガイド』を読んで、書いたような気になっているどうしようもない人間のひとり」である僕は、こういう「小説の書き方」の本が大好きなのですが、この森村さんの本には、「なんか古めかしい本だなあ」と思わずにはいられませんでした。書いてあること、とくに「実践編」である『小説の書き方』で例題として挙げられている文章にはたしかに納得できますし、『忠臣蔵』や『新撰組』のような「古典」から学ぶべき、というのもよくわかるのですが、率直に言うと、「これを読んで森村さんの真似をしても、いまの時代に食える作家にはなれないだろうなあ」としか思えませんでした。当の森村誠一さんの作品そのものが、いまは以前ほど読まれていないわけですし。
僕はこれを読みながら考えたのですが、いまは、「実体験をもとに書く職業作家」には難しい時代ではないかと思うのです。
生き残っているのは、「本や映画やネットを取り込んで、それを作品にできる作家」であり、「実体験派」は、「一生に一作だけ、自分の得意体験を語る」のが限界。
いろんなものが高度に専門家・細分化されてしまっていて、「ちょっとした実体験」では、かえってウソになってしまうことが多いように思われます。

ちなみに、この2冊のうち、僕が面白かったのは『作家とは何か』のほう。
こちらは、「一昔前の売れっ子作家の生活や考え方」を知ることができる貴重な資料です。

しかし、この新書のもとになった『小説道場』が2007年に出ていたと知って、僕はちょっと驚きました。
読んだ印象では、少なくとも10年、もしかしたら20年くらい前に出た本だと感じたので。

僕のような「小説の書き方本マニア」以外にはちょっとオススメしがたい本なのですが、興味がある方は、『作家とは何か』のほうだけ、少し読んでみてはいかがでしょうか。

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