琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

しんぼる ☆☆☆


『しんぼる』公式サイト

あらすじ: 家族と幸せに暮らすプロレスラー、エスカルゴマンはメキシコのとある町でいつもと変わらぬ朝を迎えていた。一方、水玉のパジャマを着た男は、目を覚ますと四方を白い壁に囲まれた部屋に閉じ込められており、途方に暮れ出口を必死に探すが見つからない……。

松本人志、第二回監督作品。
公開初日(9月12日)の13時からの回を観に行ったのですが、観客は十数人。こんなに少ないのか、とちょっと驚きました。まあ、雨天でしたし、土曜日の昼に映画を観に行くことはほとんどないので、他の作品との比較はできないんですけど。

観終えての感想。
僕は『大日本人』のほうが面白かったな……
いや、今から考えてみると、『大日本人』は、けっこう楽しかったような……

たぶん松本さんは、いままでの「ハリウッド映画のお約束」みたいなものを打ち破りたいという意思で映画を撮っているのではないかと思うんですよ。
大日本人』というのは、いままでの映画の文法を「茶化す」という作品だったのですが、この『しんぼる』は、「何が起こるかわからない世界」を描いてみたかったのかもしれません。
でも、それはこの作品の「面白さ」には、あまりつながっていないのです。
「笑い」を期待している観客(僕もそうだったのですが)にとっては、「次に何が起こるか興味はあるけれど、個々の『起こること』は、テレビでやっているコントをちょっと大掛かりにしたレベル」だし、深刻な雰囲気なのと時間が長いので、どうも退屈になってしまう。
「テーマ」らしきものがありそうなので、笑っていいのかどうか、よくわからないし。

メキシコのエピソードも、「なんかもったいぶっているわりには……」って感じですし(まあ、もったいぶることそのものが「仕掛け」なのでしょうけど)。

すみませーん、もう、かえりたいんですけどー!

という松本さんの台詞があるのですが、観ながら、「ああ、僕も、もう帰りたいんですけど……」とか思ってしまいました。

「あまり観たことのない映画」ではあるんですよ、きっと。僕は昔セガメガドライブ(メガCD)で出ていた『SWITCH』というゲームを、ちょっと思い出しました。
ただ、それは「オリジナリティがある」というよりは、「大学の映画サークルの脚本家志望者が思いつきそうな話なんだけど、それを具体的なものにできるほどの力がなくて形になることがない作品」のように思われます。これを「商業映画」として全国ロードショーで公開できることこそが、松本人志さんの「力」なんじゃないかなあ。
監督・主演が松本人志だから成り立つ映画ではあるけれども、そうであるがゆえに、「松本さんは、『神』になりたがっているのか?」というような想像を観客がしてしまうところもありますよね。
そういうふうに、主役=松本人志自身、という見方をされてしまうのは、たぶん、不本意なのではないかと思いますが、それがないと(あっても?)興行的には難しい映画だろうしなあ。

僕は、年に1本くらいは、こういう「ヒット映画の公式を無視しようとする作品」を観てもいいかな、と思っていますし、せめて松本人志さんにくらいは、こういう映画が撮れる映画界であってほしいと考えてはいるのですが、正直、「そんなに映画は観ないけど、たまに観るなら面白い映画がいい」という人には、オススメしにくい映画です。
個人的には、「なんかちょっと気になる作品」ではあるし、最近の「内容は薄いのに、120分に引き伸ばしている日本映画」に比べると、すごく潔さを感じるので、「嫌いじゃない」のですけど。

まあ、「変わった映画を観てみたい」人や「松本人志と心中してもいい」という人以外は、DVD待ちで良いと思います。
そうなると、次回作はなくなってしまうかもしれませんが……

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