琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

武士道シックスティーン ☆☆☆☆


武士道シックスティーン (文春文庫)

武士道シックスティーン (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
武蔵を心の師とする剣道エリートの香織は、中学最後の大会で、無名選手の早苗に負けてしまう。敗北の悔しさを片時も忘れられない香織と、勝利にこだわらず「お気楽不動心」の早苗。相反する二人が、同じ高校に進学し、剣道部で再会を果たすが…。青春を剣道にかける女子二人の傑作エンターテインメント。

青春小説! 女子剣道モノ! 映画化!
もう、これだけのキーワードで、僕にとっては、「本屋大賞候補作にでも入っていないかぎり、絶対に手に取らない、チャラチャラした本」だったのですが、つい魔がさして(?)文庫を購入。
読んでいて思ったのは、これまで僕が読んできた「傑作青春スポーツ(あるいは部活系)小説」、『一瞬の風になれ』『強く風が吹いている』『ボックス!』『船に乗れ!』などに比べると、題材としている競技についての著者のこだわりがあまり感じられない、ということでした。
「剣道」というのは、多くの日本人が学生時代に体育の授業で一度は「体験」しているものなので、ボクシングやオーケストラよりは、なんとなくイメージしやすいので、結果的に「目新しさ」が少ないのかもしれませんが。
『一瞬の風になれ』や『ボックス!』のような「競技している人間が上手くなっていくプロセス」や「競技者心理」に関しては、この『武士道シックスティーン』は、「ちょっと浅いなあ」と感じずにはいられません。
この競技には、こんな面があるのか!という驚きはほとんどありませんでした。
早苗がなんでこんなに突然強くなっていくのか、香織はなぜスランプに陥ってしまったのか、ちょっとよくわからなかったし。

ただし、この『武士道シックスティーン』、「スポーツ小説としてのリアリティ」は乏しいのですが、ストーリーはベタベタながらも(ベタだからこそ?)、滅法面白いんですよね。
この作品、漫画化され、現在映画も公開されているのですが(北乃きいの早苗は、ちょっと観てみたい)、面白いスポーツマンガを小説にしたら、こんな感じなんだろうな、と。
香織と早苗のキャラクターにしても、まさに「類型的」ではあるのですが、その2人がお互いに影響しあっていく姿は、なんかすごく良いんだよね。読んでいて楽しい。
実際に剣道をやっている人たちは、「そんな甘いものでも、厳しいものでもないよ」って思うのかもしれません。
「こんなヤツいねーよ!」って言いたいのだけれど、「いね―ヤツを描く」のもまた、エンターテインメントなわけで。

この連休の移動中に「肩のこらない、面白い本」が読みたい方にはけっこうオススメです。

アクセスカウンター