琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

傷だらけの店長 ☆☆☆☆


傷だらけの店長 〜それでもやらねばならない〜

傷だらけの店長 〜それでもやらねばならない〜

内容紹介
出版業界唯一の専門紙『新文化』で話題になった異色の連載が大幅加筆修正を施し待望の書籍化!

■解説
 カリスマ書店員の話でもなくかしこまった書店論でもない、ただ実直にただ本が好きな一書店店長の不器用な生き方をリアルに描いた自伝的連作短編。
 書店員なら誰でも直面する諸問題、プレッシャーをかける上司、うまく扱えないアルバイト、繰り返される万引き、毎年やってくるノルマ、強要される全国データ、色々なものに迫られ、疲弊していく姿に共感を生み、そして、励まされる一冊です。


■あらすじ
 伊達雅彦は、本が好きで、頑固な昔気質の店長だ。
日々、忙しい業務にいそしみ、上司に部下に、時に客に文句を言いながらも、誠実に書店員 を続けていた。
しかし、近隣にライバルの大型店が出来ることになり、事態は一転する。

   俺は、なぜ、 書店員 になったのか?

 そして、書店員 を続けることができるのか?

内容(「BOOK」データベースより)
出版業界専門紙「新文化」の異端連載が待望の書籍化。最後まで抗い続けた書店店長のどうしようもなくリアルなメッセージ。

ある書店店長の日常の苦闘から、競合店の登場によって、閉店に追い込まれ、店長が書店員であることをやめるまでの記録。
僕も子どものころ「いくらでも好きな本がタダで読めて、お客が来たらレジを打つだけでいいから、本屋さんになりたいなあ」と思っていた人間のひとりなので、この本で描かれている「書店員の現実」に、「ああ、本屋さんにならなくてよかったなあ」と思わずにはいられませんでした。
 安い給料、長い労働時間、重い本、万引きとの終わりなき闘い、本部からのしめつけ、そして、強力な競合店の出現……

 結局のところ、書店員であることの喜びというのは、自分の店のなかに、自分好みの棚をつくって、世界に見せびらかすことができる、ただその一事に尽きるのかもしれません。

 これを読んで痛感したのは、現在の日本の「書店」というのは「本好き」たちの「本に関する仕事がしたい!」という情熱を安く買いたたいて人を雇っている商売なんだなあ、ということでした。
 そして、なんのかんの言いながら、「本があるところで働きたい!」という人は、けっこうたくさんいるのです。
 その結果、「本好き」を自負している僕ですら、この労働条件ではちょっとムリだな、と感じるくらいの仕事になってしまっているようです。

 楽しいことなど何もありはしない。日々送られてくる荷物の山、増えていく一方の負担。すべてを完全にこなし、質の高い仕事をしようとすれば、到底正規の時間内では終わらない。それでも残業代はカットされ、力技の連発で無理を重ねてやり遂げた先に待っているのは、会社からのリストラの脅しと減給宣言。そして各方面から寄せられる「本屋は努力が足りない」という”建設的”意見。

 この本を読んでいると、「Amazon電子書籍に比べて、既存のリアル書店は企業としても、個々の書店員も努力が足りないから、淘汰されてもしょうがない」と訳知り顔に言う人たちに、憤りを感じてきます。
 現場では、ギリギリに人員で日々の業務に追われ、本を並べてレジ打ちをするだけで一杯一杯で、工夫する時間も人手もないのに……
 でもたぶん、Amazonを支えている人たちも、かなり厳しい状況で働いているんですよね。

 書店はいま、「少数派」のためのものになりつつある。
 よく「面白い書店が減った」「個性的な書店が消えていく」という声を聞くが、それは面白さや個性では書店の経営が成り立たないからである。それらを評価し、お金を落としてくれる客はほんのひと握りであって、その少数派だけでは「面白く」「個性的な」書店は続けられない。書店は公営図書館ではない。利益を上げて、初めて生き残れるのである。当たり前だ。
 これも当たり前だが、多くの書店は、「多数派」のための書店をめざす。取次や出版社の思惑も反映しているのだろうが、データを重視して仕入れ、販売する方が効率的だ。多くの客にとっては、自分がいま欲しい本があるかないかだけが重要なのである。
 バブルまでの、売上がよかった時代は「書店はこうあるべき」「文芸や人文のカタい本をきっちり売ってこそ本屋」などと理想を語っていた経営者の中にも、余裕がなくなってくるとかつての主張など忘れたように、「金になりさえすればなんでも置く、なんでもやる、という者が現れる。人件費を削りまくり、負担はすべて現場に投げる。
 「仕入れに時間をかけず、自動発注にしなさい」「レジはバイトに任せて、社員はちゃっちゃと棚に本をぶちこめ」「文庫はどうせ番号順だ。夜のバイトに、暇なときにバンバンと入れさせとけばいい」
 とりあえず店の体裁だけ整えておけ、という主旨の発言を平気でする。
 本に愛情がない、こだわりがない、あるいは捨てた者が、経営者にも書店員にも、客にも増えつつある。客のせいにしたら商売は終わりだ、とよく言われる。だが、やはり客も昔と変わってきてしまった、と私は思う。
 「仕方ないんだよ、倒産するよりはマシだろ? 甘えたことを言っていられる時代じゃないんだよ」
 書店経営者たちの、そんな声が聞こえてくる。

 「リアル書店」の凋落というのは、もう歯止めがきく状況ではなくて、一部の大規模チェーン店だけが生き残り、「リアル書店で本を買うのは贅沢」で、「都会の人の特権」になる時代が、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。
 それにしても、書店員たちの労働環境は、もう少しどうにかならないものなんでしょうか。

こんなにボロボロの人たちに「いい仕事」はできないよね……

読んでいて、とても疲れるし、悲しくなる本でした。
でも、これがまさに「書店のいま」なんだろうなあ。

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