- 作者: 百田尚樹
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2011/10/06
- メディア: 単行本
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内容(「BOOK」データベースより)
「僕は、実際には存在しない男なんです」世田谷に古い洋館を構えるある家に、家庭教師として通うことになった聡子。ある日、聡子の前に、屋敷の離れに住む謎の青年が現れる。青年はときに攻撃的で荒々しい言葉を吐き、ときに女たらしのように馴れ馴れしくキスを迫り、ときに男らしく紳士的に振る舞った。激しく変化する青年の態度に困惑しながらも、聡子はいつして彼に惹かれていく。しかし彼の哀しい秘密を知った聡子は、結ばれざる運命に翻弄され―。
「ひとり本屋大賞」9冊目。
……『錨を上げよ』のあまりにも冗長+チンピラの自慢っぷりに辟易した僕としては、「うわっ、また百田さんノミネートされてる……」と思いながら読みました。
でも、この作品は、『錨を上げよ』よりは、はるかにマシでした。
……あれより、だいぶ短かったから。
本当に、こんな昼ドラにでも出てきそうな欲求不満女+「解離性人格障害」という題材の本が、なぜ「本屋大賞」に選ばれてしまうんだろう。
いちおう、「書店員さんたちが選んだ、今年ベストの10冊」なんですよね……
僕は、この物語の主人公・聡子に、まーったく感情移入できませんでした。
身の危険より、庭に出ることにこだわる女!
怖い目に遭わされても、その家での仕事を辞めようと全く思わない女!
「いままで不倫なんてしたことない」と言いながら、バッチコーイ!な女!
あまりにも無防備かつ、作者の都合で動きすぎです。
いくら見た目が良いのだとしても、この女性のどこがそんなに魅力的なんだか、サッパリ伝わってきません。
AVに出てくる、中学生を誘惑する女教師みたいな感じ。
いやむしろ、これだけ作者の都合に振り回されてしまって、聡子さん可哀想。
この本のオビに書いてある
失恋でも、破局でも、死別でもない。
かつて誰も経験したことのない永遠の「別れ」。
というのを描くための「アイディア先行」の作品だと思うんですよ。
でも、その不可能を可能にするためのアイディアが「多重人格」というのは、あまりにも、ありきたりなのではなかろうか。
それを思いついただけではなく、こうしてちゃんと小説としてまとめたのは、評価すべきなのかもしれません。
でも、それが恋愛小説であるかぎり、「魅力の無い女が、魅力の無い男と、とくに理由もなく愛し合う小説」なんていうのは、面白くもなんともない。
ストーリー、キャラクター、トリックのすべてが赤点のミステリみたいなものです。
うーん、この作者、『永遠の0』『ボックス!』は素晴らしかったのだけれども、どんどんおかしくなってきているというか、この人の良さは、取材してきたものをなるべく加工せずに引用してきた部分にあるんじゃないかなあ。
売れたおかげで、自分で書きたいように書けるようになったけれども、好きに書けば書くほどマスターベーション小説になっていっているのでは……
はっ、今気がついた。ここはどこ?私は誰?
もし、ここに酷い悪口が書かれていたとしても、これは、僕のなかに隠れている人格のひとり「トチジ・イシハラ」の所行ですのであしからず。