琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】エースの覚悟 ☆☆☆☆


エースの覚悟 (光文社新書)

エースの覚悟 (光文社新書)

内容紹介
「今が全盛期」と思ったところで成長は終わる――常にそこへ向かう途中です


WBCベストナインに選ばれ、常に成長を求め続けるマエケンの“エースの心得"を大公開!
人のマネはしない/個性を大事にする/「全盛期はまだ」という意識を保つ/自分の記録よりもチームの勝利/緊張・プレッシャーを味方にする/ 最大の敵はネガティブ思考/勝ち運を呼ぶ“ルーティン"を欠かさない――
12年シーズンはノーヒットノーランを達成し、自己最高の防御率を記録。そして、第3回WBCでは周囲の不安を払拭し、ベストナインにも選ばれる活躍を見せた“マエケン"こと広島カープのエース前田健太。今や日本球界のエースとなったマエケンによる本格投球論がついに登場! ストレートへのこだわり、スライダー中心の変化球術、独自のトレーニング法、田中や坂本ら同世代への ライバル心など、正確には知られてこなかった自らの“本当の考え"を披露。野球ファン待望の一冊。


第1章 “いい経験"ではすまされない! ――悔いだけが残った12年シーズン
第2章 プロになるまで――サッカー少年、ボーイズリーグ、PL時代
第3章 ノーヒットノーランの秘密――マエケン式投球論
第4章 謎の「1球体験」と自己流スライダー――マエケン式トレーニング法
第5章 マエケンをつくった人たち――家族、親友、恩師、妻
第6章 88年世代の一人として――僕の人物論
第7章 未完に終わった世界一への挑戦――第3回WBCで得たもの

マエケン復活記念!
いまや「カープのエース」だけではなく、「日本のエース」と言っても過言ではなくなった前田健太投手の著書。
マエケンのブログでは、けっこうシンプルかつポジティブなメッセージが多いのですが、この本にはどんなことが書いてあるんだろう?まさかメジャーに行きたい!とか書いてあるんじゃないか……(カープの選手が活躍すると、FAまであと何年だったっけ……とかつい計算してしまうのが、僕の悪いクセです)


この本を読んでいると、マエケンというのは、本当に「有言実行の人」なのだなあ、と感心してしまいます。
そして、常に目標を設定して、そこに合理的なアプローチを行っていく。
自分を過信しないけれど、萎縮することもない。
なんというか、すごくフラットで、しなやかな人だなあ、と。

 WBCの結果に限らず、僕は自分のことをまだ本当のエースとは言えないと思っています。個人タイトルはいくつか獲りましたが、カープは優勝どころかクライマックスシリーズに進出できる3位以内にも入ったことがないのです。僕自身も、真のエースとしての活躍が求められる場面ではまだ投げていないことになります。
 投球にしても足りないところはたくさんあります。変化球の精度を挙げなければならないし、ストレートのスピードももっと出したい。シーズンを通してコンスタントに働ける体力もつけたい。課題は山積みです。
 それでもこの本に「エースの覚悟」というタイトルをつけたのは、本当のエースを目指して努力している前田健太という投手のいろいろな面を知ってほしいと思ったからです。
 僕にはいつも自分に言い聞かせている言葉があります。
「僕はまだ全盛期じゃない」
 投手のタイトルを全部獲り、日本シリーズで優勝して大きな契約を結んだとしても、そこで「自分は今が全盛期だ」と思ってしまっては成長がありません。投手としてもっともっと成長するために、いつも「全盛期じゃない」と言い聞かせているんです。

マエケンは、自分のことを「パワーピッチャーというより、技巧派に属する」と考えているようです。

 三振の数が目安じゃない。では、何で自分の出来を判断しているのか。それはストレートです。僕の場合、変化球の出来はどの試合でもあまり差がありません。スライダーでもチェンジアップでも、だいたい自分の平均点ぐらいを投げる自信があります。
 ちょっと自慢みたいになりますが、僕は投手になってからコントロールに苦労したという記憶がほとんどありません。あるとすれば、最初に投手をやった小学生のときぐらいでしょうか。父や監督、コーチから、「みんなが後ろで守ってくれているんだからともかくストライクを投げて打たせろ。四球は絶対出すな、ヒットを打たれるよりも悪い」とよく注意されたことを覚えています。今でもそれが染み付いているのです。

 プロ野球の世界でも「コントロールに苦労したことがほとんどない」というピッチャーは、ほとんどいないのではないでしょうか。サラッと書いていますが、これは本当にすごいことです。
 この本のなかでは、マエケンが決め球のスライダーを習得するまでのプロセスも書かれていたのですが「他のひとの意見を参考にしながら、そのままマネするのではなく、自分で投げやすいようにアレンジして完成していった」そうです。
 マエケンは「ダルビッシュさんのマネは、そう簡単にはできません」と書いてありますが、マエケンの学習能力をマネできる選手もあまりいないのではないかと。
 抜群のコントロールがあればこそ、シーズン中の登板の合間にも、そんなに多くの投げ込みを必要としないのです。
 そして、マエケン自身による、WBC前に囁かれていた「肩の不安」の真相も紹介されています。
 まあ、結果的にシーズン序盤からローテーションを何回か飛ばすような形になってしまったので、WBCが負担にならなかったというのは嘘になるのでしょうけど、マエケンにはそれなりの計算があったのは事実なのでしょう。
 ただし、マエケンは野球教室などでは、子供たちに「みんなが自分と同じようにできるわけではない」ということをちゃんと認識しながら指導しているんですよね。それだけに「どう教えるか」には、頭を悩ませてもいるようです。

 
 普段はあまり語られることのない、食生活の話とかも出てきます。
 広島の街は狭くて、野球選手が集まる店も限られ、カープの選手は顔を知られているので、選手寮を出てから食事には苦労していたのだとか。
 独身時代の食生活について。

 一番お世話になったのはカレー専門店「CoCo壱番屋」(通称ココイチ)の宅配。僕はもともとカレーが大好きなんです。ココイチの宅配が「鉄板メニュー」で、週に5日お世話になることもありました。

 いまは、結婚して奥様がキッチリ栄養管理をされているようで、カープのためにも、よかったなあ、と思わずにはいられません。
 僕もココイチ好きですけど、さすがに週5日は飽きそう。
 

 飽くなき向上心と、茶目っ気と。
 現代っ子らしいところもあれば、勝負師として、ここまでやるの?と思うほど当番日の「決まり事」を守ってもいる。


 カープファンとしては、ちょっと怖かったんですよ。
 もうメジャーに行く!みたいな内容だったらどうしよう、って。
 いや、この本の中にも「カープ地獄練習の真実」とか「お金がないカープ」など、半ば「自虐ネタ」っぽい話も出てくるのですけど、マエケンは、そういうのも「自分を活かすための武器」にしているような気がします。

 まずは、目の前のペナントレースで今回得たものを生かし、優勝を目指します。何としてもあのビールかけをカープのみんなと味わいたいと思っています。

 マエケンは、いつかカープを超えていく選手なのでしょう。
 でも、その前に一緒にやりたいよね、ビールかけ。

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