琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】ダメをみがく: “女子”の呪いを解く方法 ☆☆☆☆


内容紹介
「女子力のなさ」を商品価値にできてありがたいです――最初の会社をパワハラで退社した芥川賞作家と、150社以上就職・転職活動した経験をもつコラムニストが、世間知らず・不器用・KYなままでも、なんとか社会で生き延びていくための技術を語り尽くす。世の中をすいすい渡っていけないことに悩む、すべての女性に捧ぐ。


「普通の人と普通の結婚がしたい」という呪い
「パーフェクトな女子であるべき」という呪い
「娘へのアドバイス」という名の呪い
「子供がいないからわからない」という呪い
「女とは面倒な生き物である」という呪い
「前から歩いてくる女全員を値踏みする女」の呪い
「おもろい女はモテない」という呪い
「私のこと好きな男なんて、すてきな人じゃない」という呪い


<目次より>
●大人だから耐えてやってるんだよ、調子のんなよ!
●「適性」「工夫」「風向き」でなんとかしのいでるだけ
●ぬるい会社がいい
●他人を使ってガス抜きするやつから逃げろ
●転職のたびに自分のキャラ設定を下げる
●夫はデブ専でブス専の変わりものです
●ありとあらゆる人間関係がダメになったとき
●一人で死ぬの嫌ですか?
●ポンコツでないふりをすることにエネルギーを費やさない
●ありもので生きる


 タイトルとか装丁とかは、「女子向け」っぽい感じ満載なのですが、アラフォー男にもけっこう面白く読めました。
 男女関係なく「ダメ」な人間にとっては、頷ける対談だと思います。
 ただ、その「ダメ」も、「非人間的」とか「下半身がゆるい」的な「ダメさ」じゃなくて、「ビジネス書的にキリキリと『頑張る』ことができない人」というくらいの感じではあるんですけどね。
 深澤さんも津村さんも「能力」は十分にある人だし、そうじゃないと流行語大賞芥川賞は獲れないでしょうから。

 
 このふたりの対談を読んでいて共感してしまうのは、僕も「人と仲良くすることが苦手な人間」だからなのかもしれません。
 津村さんは、「二番目の会社で、何年もずっと通っていて、いちおう世間話くらいはするようになったコンビニの店員さん」に、「精神的な通風孔として」けっこう救われていた、という話をされています。

津村記久子全然違うカテゴリーの人に助けられるってことがよくあります。コンビニの人も、私はその人らにすごくお世話になってるから、レジ前に列ができて待つことになってもなんとも思わへんかったし。


深澤真紀私たちは、生きていくためのどうしても具体的な味方を見つけようとするんだけど、それより傍観者とか隣人がたくさんいるほうがいいなと、最近思ってるんです。なぜかというと、時に「味方すぎる人」って、逆に敵になることがあるから。「あなたのために」と思ってくれることが仇になってしまうこともある。でも、傍観者は味方にも敵にもならないから、よき隣人は多いほうがいい。


津村:そうですね。自分の深い事情を知らないけど、関わってくれている人って貴重です。会社でどんだけ嫌なことがあっても、失敗しても、コンビニの店員さんは知らない。ただ、その場での事務的でスムーズなやりとりがあるだけ。


深澤:でも、7年も通い続けたら、お店の人も「今日、この子つらそう」ってわかると思う。「今日はカフェオレ飲んでるから元気ない」とか「炭酸買ったからこのあとがんばるんだな」とか(笑)。感情的に伴走してくれている感じ。


津村:それあると思います。彼女たちもいろいろあるみたいで、めっちゃ仕事できてお客さんもちゃんとさばくんだけど、ちょっと気が立っているときとかありましたんで。「どういうことなんかと思うわっ」「なんもわかってないですよっ」みたいなことを言いながら、正確にレジを通すみたいな。怒ってはる……私だけでもちゃんとしようって思う。


深澤:「あんたが仕事できるの知ってるで!」と。


津村:そう。すごいできる人らでした。


深澤:そういうアイコンタクト友だちみたいな存在は大事。これが女性誌とかだと、「隣のビルに勤めるイケメンから好きな人を探しましょう」と書いたりするんですけど、イケメンじゃなくても、「コンビニのおばちゃんだ」とか「お掃除のおばさんだ」とか、なにかしらつながりのある人と目だけであいさつする関係って大事。あと、コピー機の営業マンとか。

 もちろん、「絶対的な味方」が欲しいときもあるんです。
 でも、人に頼ることが苦手な人間というのは、「この人は味方になってくれる」ような人に対しては、かえって「相談すると、相手の負担になりそうだな……」なんて考えてしまって、なかなか気軽には声をかけづらい。
 そんなときに、こういう「ゆるやかな味方」の存在は、すごく心強いものがあります。
 とか言いながら、向こうが馴れ馴れしく「○○さ〜ん」なんて話しかけてきたり、プライベートなところに触れてきたりすると、ピシャリとドアを閉めてしまったりもするんですけどね。ああ、我ながらめんどくさいな本当に。


 その一方で、そのあとに、こんな会話もあるのです。

深澤:コンビニで感じ悪い客ってほんと嫌(笑)。


津村:だから私は文句言われないようにしよう、って思ってました。この人たちには嫌われたくないって。私、好きな店でも常連になるとすぐ、行くのやめちゃう人間なんですけどね。「いつもありがとうございます」って気に入ってたビビンバ屋で言われて、もう行かなくなった。


深澤:私も同じだ〜。


津村:恥ずかしい! ってなる。


深澤:なりますねえ。


津村:人として個体認識されてしまうと居心地悪くなるんです。


深澤:私も自意識過剰で人見知りなので、常連扱いされると、すぐ心のブラインドがバサッと下ります(苦笑)。


ああ、僕と同じだ……
「常連扱い」されると、すごくつらい。
「恥ずかしい」し、「常連としてのふるまい」を自分に課すことがプレッシャーになったりもして。
おいそうに食べなくちゃいけないのかな、とか、愛想良く振る舞わなくちゃいけないのかな、なんて考えてしまうのです。
好かれてしまうと、嫌われるんじゃないかって、怖くなる。
「こんなに通っているのに、自分を認識してくれない」と怒る客もいれば、僕みたいに「いつもありがとございます」だけで「この店にはもう来られない……」という客もいるというのは、店の側からみれば、なんだかとてもめんどくさい話だろうな、と思うんですけどね。


お二人は、「処世術」に関して、こんな話もされています。

深澤:津村さんは「他人を使ってガス抜きするやつから逃げろ」ってこともよくおっしゃってますよね。「子供がいない人にはわからない」とかもそうだし。


津村:私が言われたわけじゃないんですけどね。そういう物言いを見かけると、でもみんな最初は子供やったやん、と思います。


深澤:自分を肯定するために、誰かを悪く言うとか。


津村:そんなことせんと普通に好きなことしたらいいのに、って思います。


深澤:他人を使ってガス抜きする人は、どうしようもなくいるんですよ。


津村:いますよね。問題が表面化しにくいだけで。


深澤:そうしないと自分が支えられないという気持ちはわからないでもないけど、その被害には遭いたくない。だから、「他人を使ってガス抜きをする人」の被害者になったときにやるべきことがあって、それはその加害者から逃げること。それから自分は「他人を使ってガス抜きをしない」ってこと。


津村:他人を調達しなくても気が晴れることなんていくらでもありますよ。

これは身につまされる話です。
僕は比較的、「自分にしか興味がないタイプの人間」だと思うのですが、ネットとかでは、ついつい「他人と比較してしまいがち」なんですよね。
自分から負の連鎖をスタートさせることだけが問題ではなくて、「お前は○○だ」という「ガス抜き」に対して、「なんだと、お前だって××じゃないか!」というような行為も、深澤さんは「誰かが我慢しなければ連鎖は止まらないのだから、自分のところで断ち切らなければならない」と仰っています。
これはなかなか難しい。
でも、たしかにそうだよなあ、とも思います。
言い争いをしていると、自分のところで口論をストップすると「負けた」ような気分になるのだけれど、他人事として傍からみたら、言い返すのをやめた側を「ああ、この不毛な口論に付き合わない賢明な人だ」と感じることも少なくないですし。


この対談「女子」がひとつのテーマなだけに、僕にとっては「日頃あまり表に出てこない、女性の考え方」にも、興味深いところがありました。

深澤:男性がずるいのは、椎名誠グループとかサブカル男グループって、自分たちだけ少年でいたがるじゃないですか、あれはずるいと思う。


津村:名指しなんですか(笑)。


深澤:もちろん石原慎太郎みたいな本物のマッチョたちよりは、この手の男性のほうがよっぽどマシですけどね。ただ権威のある男はわかりやすいマチズモだから、女性も敵だってわかるけど、実は椎名誠とか、サブカル男グループのマチズモも女にとっても男にとっても害悪になったりするんです。たとえば「草食男子」に対しても、リリー・フランキーみうらじゅん伊集院光が急に男性代表みたいになって「そんな男はいないんだ」とか言ってましたよ(苦笑)。自分たちもマッチョ男に抑圧されてきたサブカル男なのに、そういうときだけ男の代表になっちゃうんです。


津村:そう言ってはったんですかー。


深澤:言うんですよ。サブカル男の、女や弱そうな男に対する抑圧って実はけっこうすごい。サブカル男グループって、「中2病」とか「DT(童貞)」とか言って、「男は幼稚である」「でもそこがいい」「女は現実的でつまらない」というメッセージを発信し続けている。でも「中2病」も「DT」も女子もかかる病気でもあるんですよね。「バカで幼稚」という病気だから。そして、女性も大人になっても幼児性を持ち続けることはすごく大事。


津村:幼児性は持ち続けたほうがいいですね。


深澤:女性は、その幼児性にふたをして「大人の女性」になって「大人になれない男」を支えていくものと思い込まされてるんですよね。


椎名誠グループ!
僕は自分とはかけ離れた人間だからこそ、椎名さんに憧れていますし、世の女性は、きっと椎名さんみたいな男が好きなんだろうなあ、と思っていたのですけど、こんなふうに感じていた人もいるんですね。
そして、「中2病」や「DT」は「女子もかかる病」なんだよなあ。
言われてみれば、確かにその通り。


男の側、しかもサブカル側に近いであろう僕にとっても、リリーさんやみうらさんや伊集院さんって、「言っていることはわかるんだけど、そこまで『童貞力』みたいなものを人前でガンガン押し出していくのは無理だし、自分はそこまで性欲重視じゃないんだけど……」という面はあるんですよ。
男も「マッチョ」と「サブカル」だけじゃなくて、もっと下のカーストの「無気力派」みたいなのもあるんじゃないかなあ。
「サブカル者もまた、抑圧されているように見せて、実は自分にとって都合のいいメッセージを発しているだけ」なのかもしれませんね。


いやまあ本当に、このふたりの対談を読んでいると「女っていうのも大変なんだなあ」と思います。
そして、彼女たちが「いままで表に出すことができなかった、女性週刊誌的ではない生き方」を模索しているということも伝わってくるのです。

深澤:たとえば私が講演に行くと、聴衆の女性が「先生はいつもすっぴんなの?」って聞いてくるから「テレビに出るときはメイクされてしまいますけど、普段とか講演のときはすっぴんですね」って言うと「結婚してないでしょう?」「いえしてますよ」「じゃあ、そんなことだと旦那に逃げられるわよ」って。「そうなんですかね。うちの夫は化粧してる女が苦手みたいです」って答えたら、「それはね、先生、男のや・さ・し・さ」って言われましたけど(笑)。
 その人はバツ3だそうで(笑)、中途半端な男経験がある人ほど、そういうことを言いたがる。でも世の中に30億いる男の中から1人としかつきあってなくても、100人とつきあったって、しょせん誤差レベルですからね。世の中のすべての男がわかるわけではないし。しかしほんとに、女性のこういう相互監視というか「ちゃんと化粧しろ」みたいなのは大変ですよ。

こういうのって、「自分も部活で下級生のときに先輩にシゴキを受けたから、お前もそれを受けるべきだ」というのと同じなんじゃないかと僕は思うのですけどね。
メイクしてほしいと思う男や状況は存在するでしょうけど、アカの他人が強制するようなものでもなかろう、と。
たしかに「男が30億人とすれば、1人も100人も、『統計学的な判断をするには、少なすぎるサンプル数』である」としか言いようがない。
にもかかわらず、「異性と交際した人数」で、「わかったようなこと」を言う人は、男女ともに大勢います。
バカバカしいよね、そういうのって。


書店で見かけて「男が読んでもいいのか、これ?」と思いながら衝動買いした本なのですが、なかなか興味深い対談でした。
「万人向け」じゃないとは思うけど、これを読んで「面白そう」と感じた方は、読んでみてはいかがでしょうか。

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