年末恒例の企画、映画篇。
今年僕が観た映画を振り返ります。
今年は37本観ました。去年より1本減りましたが、ほぼ横ばい。
では、さっそくランキングの発表です。
第5位 風立ちぬ
- アーティスト: 久石譲,読売日本交響楽団
- 出版社/メーカー: 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 発売日: 2013/07/17
- メディア: CD
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あらすじ: 大正から昭和にかけての日本。戦争や大震災、世界恐慌による不景気により、世間は閉塞感に覆われていた。航空機の設計者である堀越二郎はイタリア人飛行機製作者カプローニを尊敬し、いつか美しい飛行機を作り上げたいという野心を抱いていた。関東大震災のさなか汽車で出会った菜穂子とある日再会。二人は恋に落ちるが……
宮崎駿監督の長編アニメーション引退作。
僕にとっては、作品そのものだけでなく、解釈のしかたとか、宮崎駿監督がはじめて「自分の映画」をつくったことへの反響も含めて「印象的な映画」でした。
もしかしたら、「堀越二郎の生きかたが、正しいのかどうかわからない」という疑問を投げかけること、そして、「では、自分はどう生きるべきなのか?」と考えさせることこそが、この映画で宮崎駿という「矛盾の人」が目指したことなのかもしれません。
「答えはない」ことが、「答え」なんだ。
宮崎駿もまた、72歳になっても、悩んでいる。
この岡田斗司夫さんの「解釈本」も面白かった(この本への僕の感想はこちら)。
『風立ちぬ』を語る 宮崎駿とスタジオジブリ、その軌跡と未来 (光文社新書)
- 作者: 岡田斗司夫 FREEex
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2013/11/15
- メディア: 新書
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こちらはKindle版です。
『風立ちぬ』を語る?宮崎駿とスタジオジブリ、その軌跡と未来? (光文社新書)
- 作者: 岡田斗司夫FREEex
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2013/11/15
- メディア: Kindle版
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あらすじ: 申し分のない学歴や仕事、良き家庭を、自分の力で勝ち取ってきた良多(福山雅治)。順風満帆な人生を歩んできたが、ある日、6年間大切に育ててきた息子が病院内で他人の子どもと取り違えられていたことが判明する。血縁か、これまで過ごしてきた時間かという葛藤の中で、それぞれの家族が苦悩し……。
この映画の僕の感想はこちらです。
ひとつだけ言えるのは、この映画のタイトルが、『そして父になる』だということです。
母親は、たぶん、子供が胎内に宿った時点で「母になる」のだと思う。
でも、いつ父親になるのか、いつの間にかなっているのか、男って、よくわからない。
なんだかすごく、モヤモヤしっぱなしの映画です。
ラストがまた、ハッピーエンドのようで、本当にそうなのか?と考え込んでしまうところもあって。
でもこれはたぶん、モヤモヤしてほしい映画、なんだろうなあ。
カンヌで評価されたのも、世界の半分は、多かれ少なかれ、モヤモヤしているから、なのかもしれません。
第3位 レ・ミゼラブル
あらすじ: 1815年、ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、19年も刑務所にいたが仮釈放されることに。老司教の銀食器を盗むが、司教の慈悲に触れ改心する。1823年、工場主として成功を収め市長になった彼は、以前自分の工場で働いていて、娘を養うため極貧生活を送るファンテーヌ(アン・ハサウェイ)と知り合い、幼い娘の面倒を見ると約束。そんなある日、バルジャン逮捕の知らせを耳にした彼は、法廷で自分の正体を明かし再び追われることになってしまい……。
この映画の僕の感想はこちらです。
「セリフの合間に歌う」のかと思いきや、何かセリフを喋りだしたと思ったら、いつのまにか歌っているという、ほとんど歌で占められているミュージカルです。
そんな芝居がかった(というか、芝居なんですけどね)ものって、観ていてバカバカしくなるんじゃないか?
ところが、役者さんたちの圧倒的な歌と演技、そして、『レ・ミゼラブル』という物語の「強さ」で、全く退屈することなく、158分を完走。ああ、これは久々にすごい作品を観た。
映画って、こういうつくりかたが、まだあったんだな、と感動しました。
それにしても、『レ・ミゼラブル』という物語の普遍性というか、人の心のツボをついてくるような骨組みの強さを、あらためて思い知らされました。終わってから考えてみると、そんなに意外などんでん返しがあるわけでもなく、かなり御都合主義な展開も多いと思うのだけれど、ぐいぐいひき込まれてしまったのです。もちろん、歌の力もあって。
むしろ、「古典」だからこそ、こういう「大仰な作品」であることに、違和感が無かったのかもしれません。
2012年の12月下旬公開だったのですが、僕が観たのが2013年になったからだったのと、外せない作品だと思ったので今年のランキングに入れました。
もし、こちらのほうを最近観ていたとしたら、1位にしていたかも。
第2位 『かぐや姫の物語』
あらすじ: 今は昔、竹取の翁が見つけた光り輝く竹の中からかわいらしい女の子が現れ、翁は媼と共に大切に育てることに。女の子は瞬く間に美しい娘に成長しかぐや姫と名付けられ、うわさを聞き付けた男たちが求婚してくるようになる。彼らに無理難題を突き付け次々と振ったかぐや姫は、やがて月を見ては物思いにふけるようになり……。
この『かぐや姫の物語』は、宮崎駿監督の『風立ちぬ』と対になっている映画なんですよ。
堀越二郎の視点から、「美しいもの=飛行機」を見たのが『風立ちぬ』なら、「飛行機の側から、堀越二郎を見た映画」が『かぐや姫の物語』なのではないかと。
第1位 ゼロ・グラビティ
あらすじ: 地表から600キロメートルも離れた宇宙で、ミッションを遂行していたメディカルエンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)とベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)。すると、スペースシャトルが大破するという想定外の事故が発生し、二人は一本のロープでつながれたまま漆黒の無重力空間へと放り出される。地球に戻る交通手段であったスペースシャトルを失い、残された酸素も2時間分しかない絶望的な状況で、彼らは懸命に生還する方法を探っていく。
すごいものを観ました。
なんというか、とにかくすごいので、なるべく予備知識少なめで、ぜひ映画館で3D版を観てもらいたい。
この映画、宇宙の、あるいは無重力の映像表現は素晴らしい。
ただ、それは「人を驚かせるための映像」としてだけ機能しているわけではないのです。
宇宙空間の広がりや、自分の力では、動けない、止まれないという無重力の世界(ほんと、観ていてもどかしくてしょうがなくて、いつのまにか四肢を突っ張りまくっていることに気づきました)、そして、人間の小ささ。
この映画のいちばんすぐれたところって、「映像表現」が、「宇宙とはどんなところか?」というテーマを、何よりも饒舌に語っているところなんですよね。
技術自慢じゃなくて、「宇宙」を理解するための映像を徹底的に作ったら、こんなにすごくなってしまった、という感じ。
観ながら、『アストロロボSASA』の動きって、けっこうリアルだったんだな……とか考えてしまいましたよ。
【総括】
去年の総括では「不作だ……」と嘆いていたのですが、今年、2013年は僕にとっては大豊作の一年でした。
とくにトップ3の『ゼロ・グラビティ』『かぐや姫の物語』『レ・ミゼラブル』は「映画館でしか味わえない、映画の愉しみ」を存分に味合わせてくれました。
そして、幸運なことに、1位、2位の作品は、まだ、この年末年始も映画館で観ることができるのです(地域によっては『風立ちぬ』もやっているかも)。
騙されたと思って、ぜひ、映画館で観てみてください。
とくに『ゼロ・グラビティ』という映画は「圧巻!」のひとことです。
昨年の「総括」で、こんなことを書きました。
『アバター』以来の映画界には「3Dバブル」みたいなのがあって、今年公開された作品にも3Dはたくさんありました。
でも、残念ながら、3Dの限界みたいなものも見えてきて、僕は「眼鏡の上に3D眼鏡をかける」ことの煩わしさもあり、「別に2Dでもいいや」と思うことが多くなりました。
そもそも、3D映画も、昔ほど「ほれほれ3Dだぞ!」っていうような見せ方をしなくなってきましたし。
今年の映画は、そういう視覚的な効果のことばかり考えてしまっていた、っていうわけじゃないんでしょうけど……
ところが、『ゼロ・グラビティ』は、「観客も体験できるアトラクションとしての映画」として、すごく魅力的な作品だったんですよね。
娯楽として、体験としての映画の世界には、まだいろんな可能性があるのではないか?
『かぐや姫の物語』のアニメーションによる「動き」の表現とか、『レ・ミゼラブル』の舞台では実現できないような豪華なセットと圧倒的な歌の力とか。
もしかしたら、2013年というのは、これからの映画の歴史において、「ターニングポイントになった年」として語られることになるかもしれませんね。