- 作者: 新井貴浩
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2016/03/16
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
Kindle版もあります。
内容紹介
8年ぶりに広島カープに復帰し、全力プレーでファンの心をわしづかみにした新井貴浩選手が、自身のカープ復帰の決断や、チームへの想い、2000本安打の期待もかかるなかでの今後の目標など、すべて激白する!
新井貴浩選手、2000本安打達成、おめでとうございます!
いろいろあったけれど、カープのユニフォームで達成してくれたことが、カープファンとして、すごく嬉しい。
新井がカープに帰ってくる、と聞いたときには「何そのエイプリルフール?」と、思ったものでした。
ファーストにはエルドレッドにグスマンもいるし、サードには堂林もいる。阪神で出番がなくなった「裏切り者」が来ても、チームの和が乱れるだけだろう、と。
何よりも、「カープが大好きです」と涙を流しながらFA宣言した会見の「なんだこの茶番は」という印象は、ずっと心に刻まれていて。
ところが、いざ帰ってきてみると、情が移るというか、やっぱり嫌いになれないというか。
外国人選手が相次いで怪我でリタイアしていくなか、カープ打線の4番に座ったのは、新井さんだったんですよね。
まあなんというか、帰ってきてくれてよかった、としか言いようがない。
これで優勝できていれば、これ以上ないドラマだったのだけれど。
この本は、新井選手が、これまでの野球人生や、カープ復帰の舞台裏、黒田博樹投手をはじめとするチームメイトのことなどを語り尽くしたものです。
個人的には「なぜ、あのときFA宣言をして涙を流しながら阪神に移籍したのか?」を知りたかったのですが、残念ながら、そのことについての詳細には触れられていません。
それが知りたかった、というのは事実なのだけれど、それでも、いま、新井さんがキャリアの最後を赤いユニフォームで過ごしてくれているのは、紛れもない事実なわけで。
それにしても、プロ野球って、所属する球団によって、そんなに違うものなのか……
7年間プレーしたタイガースでは、本当にいい経験をさせてもらった。カープから移籍が決まった時、金本(知憲)さんから「全く世界が違うぞ」と言われてが、その時は「大げさだな。そんなことはないでしょう」と笑っていた。
しかし、実際にタイガースの一員になると、まさに聞きしに勝るというか、「本当にこんな世界があるんだ!」と感じることばかりだった。球団の仕組みも、カープとは全然違った。とにかくいろいろな部署があり、さまざまな肩書のついた人がたくさんいて、何をやるにもこれは大変だろうな、と感じた。監督やコーチ、フロントなどの人間関係も複雑で、言い方は変だが、ドロドロした昼ドラのような世界もあった。
「プロ野球選手になったのだから、どこの球団でも一緒」というわけでもないみたいなのです、実際に経験した新井さんによると。
人気球団というのは、やりがいがあるのと同時に、めんどうなことも多いみたいです。
新井さんは、2014年のシーズンオフ、阪神から減俸を提示されたのを蹴って、自由契約を選択しました。
年俸の問題ではなくて、出場機会が激減していることに悩んでの決断だったそうです。
ゴメス選手が活躍し、まずゴメス選手起用ありき、という状況で、競争させてもらえなかった、と。
当時の新井さんの立場からすると、大減俸とはいえ、出来高もついていた阪神の提示額は、けっして低すぎるものではなかったと思います。
実際に新井さんがカープでもらっていた年俸は、その提示額よりもはるかに下でした。
自由契約を選んだ新井さんは「どこかに移籍するとしても、カープだけはあるまい」と思っていたそうです。
自分がFAで出て行ったチームであり、阪神移籍後も大ブーイングを浴びせられてきた古巣に戻ることは、できないというか、想像もしていなかった。
ところが、阪神の南球団社長は、そんな新井さんに言ったのです。
「カープがお前のことを気にかけていたぞ」
「わかりました。それなら一度、電話をしてみます」
南社長と別れると、すぐにカープの鈴木清明球団本部長に電話を入れた。
「さっき南社長と話をして、カープが僕のことを気にかけてくれていると聞いたのですが、本当ですか?」
鈴木球団本部長はひと言、広島弁でこう答えた。
「そういうことじゃ。帰ってこい」
僕は本当にびっくりして、「ええっ!」と心の中で叫んでいた。
黒田博樹投手のカープ復帰に関しても、粘り強く声をかけつづけてきた、鈴木球団本部長!
この人と駐米スカウトのシュールストロムさんこそが、カープの宝なのかもしれません。
新井さんは、この言葉をきいて、すごく嬉しかったのと同時に、やっぱり、かなり悩んだみたいです。
「いまさら戻ってくるなよ!」って言われると思うよね。僕もそう言ったもの。
黒田さんも、新井さんのカープ復帰を後押ししてくれたそうですよ。
「さすがだね。本当に全く違和感ない」
そう笑った緒方監督だったが、実は前にカープにいた時は、大勢で一緒に食事に行ったりすることはあったが、基本的にはあまり接点がなかったというのが本当のところだ。現役の時の緒方さんは、とにかく怖くて、こちらからはとても話しかけられない、そんな雰囲気だった。当時のチームでは、前田智徳さんも同じような印象だった。二人とも、とてつもないほどの練習をやっていて、寡黙でストイック。後輩から見ると、近寄りがたいオーラがあった。
新井さんからみると、「監督になった緒方さんは、本当にイメージが変わった」そうです。
だいぶ人間が丸くなったみたいです。
丸くなってこれかよ!と、カープファンとしては申しあげたいところではありますが。
新井さんは、同じ年にカープに復帰した黒田投手について、このように語っています。
近年は投手分業制が確立され、先発投手の球数制限などもあり、昔の野球とは変わってきている。昔は先発完投が当たり前、という時代だったが、今は勝ちゲームでクローザーが出てくるのは、当然のことになっている。
黒田さんは、そういった考え方が、日本よりも浸透しているメジャーで7年もプレーしていたのに、復帰してからは甲子園で140球ぐらい投げた試合もあったし、中4日で何度も先発していた。前にカープに居た時は「ミスター完投」と呼ばれていたが、アメリカでバリバリやって帰ってきても、根本的な部分は全く変わっていなかった。
甲子園での試合は、連投が続いていたリリーフの中崎翔太を気遣っての100球超えの投球だった。試合終盤にマウンドに集まった時も「ザキは大丈夫ですか?」と自分のことを気遣っていた。
中崎を今日は休ませてやりたい、その一心で投げ続けていたのだ。そこがエースたるゆえん、そして黒田さんが黒田さんたるゆえん、だと思う。
これを読んで泣かないやつは、カープファンじゃない!
ああ、これぞ黒田博樹!
東出選手の意外な素顔とか、駒大の先輩だった高橋尚成投手との信頼関係とか、コーチ陣とのつきあいかたとか、いまやカープの、いや球界の重鎮となった新井さんだからこそ語れるエピソードが散りばめられています。
新井さんは2000本安打の偉業を達成したけれど、個人としての記録以上に、カープで優勝することを「選手生活の総決算」にしたい、受け入れてくれたカープファンへの恩返しをしたい、という気持ちが伝わってくるのです。
僕は正直、新井さんに対して、わだかまりがありました。
でも、こうしてお互いに年を重ねて、また巡りあってみると、なんだか、いろんなことが必然だったような気もするんですよね。我ながら、なんて御都合主義!
ほんと、カープファンって、カープの選手って、難儀だよなあ。
でも、だからこそ、やめられないんだ。
- 作者: 黒田博樹
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2015/03/21
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (2件) を見る
- 作者: 野村謙二郎
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2015/02/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (2件) を見る