琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

【映画感想】スター・ウォーズ/最後のジェダイ ☆☆☆☆☆

f:id:fujipon:20171229074830j:plain

『フォースの覚醒』のその後を描いたシリーズ第8作。シリーズを通じて描かれてきた家族の愛と喪失の物語に加え、語られることのなかった衝撃の真実が明かされる。R2-D2C-3PO、チューバッカ、BB-8などおなじみの名キャラクターはもちろん、キュートな姿のポーグ、ベニチオ・デル・トロ演じるDJら新キャラクターにも注目だ。


starwars.disney.co.jp


2017年の映画館での33作目。29日のレイトショーで観賞。
2D字幕版。
観客は、80人くらいでした。


なるべく予備知識なしで観るつもりだったのですが、それでも、「問題作というか、評価が分かれているらしい」という情報は入ってきていたのです。
「ディズニーらしい映画になってしまった」とかも。


僕としては、どんな問題作であっても、『スター・ウォーズ』は、あのジョン・ウィリアムズのテーマ曲の最初の音、「ジャーーーン!」と聞けば満足してしまうところがあるのですが、今回の『最後のジェダイ』に関しては、ルーク・スカイウォーカーが登場するということで、期待と不安が入り乱れていました。


fujipon.hatenadiary.com


『フォースの覚醒』を観て、この新三部作が「エピソード4、5、6の転生版」になるのではないか、と予想しつつも、あのカイロ・レンとハン・ソロのシーンには、「なんかこういうのを見せられると、長年このシリーズをみてきた者としては、ちょっと辛いよなあ……」なんて思ったんですよね。
ということは、この『最後のジェダイ』では……
まあ、そのあたりに関しては、あえて語りますまい。
ひとつだけ言えるのは、この『最後のジェダイ』は、『帝国の逆襲』をなぞっているようで、昔からの観客の予感を裏切ってくれる作品でもあった、ということです。
なんでそんなまわりくどいことを……と思わなくもないのだけれど、そのサイドストーリーや出てくるキャラクターへのお金と手間のかけかたが、『スター・ウォーズ』なんだろうなあ、とあらためて思いました。
個人的には、「あの方」が登場しただけで満足です。☆5つです。どうかお納めください。


いろいろ書きたいことはあるのですが、以下、ネタバレ御免で感想を書きますので、未見の人は、ぜひ映画を観てください。
いろんな「落とし前」をつけようとした『最後のジェダイ』、僕はけっこう好きです。



本当に、ネタバレですからね!!


 いやほんとうに、マーク・ハミルさんがルーク・スカイウォーカー役で出演していることそのものが、長年『スター・ウォーズ』を追いかけてきた人間にとっては、ひとつの「節目」みたいな感じなんですよ。プレミア上映で、「スター・ウォーズ!!」キャストの真ん中で音頭をとっていたマーク・ハミルさん。
 マーク・ハミルという人は、『スター・ウォーズ』があまりに大ヒットしてしまったがために、ずっと役者として「ルーク・スカイウォーカーの幻影」に悩まされていたそうです。
 何をやっても、「ルークの人」としてみられてしまう。
 それが「善玉」役だっただけに、なおさら演じられる役に幅がなくなってしまった。
 『ガイバー』にマーク・ハミルさんが出演していたのをビデオで観たときには、「ルーク、暗黒面にとらわれてしまったのか……」と溜息をついたものです。
 ハン・ソロ役のハリソン・フォードのその後の大成功をみているだけに、なおさら、その「格差」について考え込まずにはいられません。
 ほんと、ディカプリオも長年『タイタニック』の亡霊に悩まされていましたし、大ヒット映画の「ヒーロー役」というのは、諸刃の剣でもあるのだよなあ。
 

 そのマーク・ハミルさんが、こうして、ルーク・スカイウォーカーに「落とし前」をつけるために戻ってきた。それだけで、もうしんみりしてしまいます。いろんな葛藤の末にここにたどり着いたというのは、まさにルーク・スカイウォーカーの人生じゃないですか。
 正直、『フォースの覚醒』でのハン・ソロの死に関しては、「ストーリーをドラマチックにするために、俺のハン・ソロを駒にするんじゃねえ!」という憤りのほうが強かったのですけど、あれで耐性がついたのか、こちらも覚悟ができたのか。今回はルークかレイア姫か……と予想してはいたんですよね。キャリー・フィッシャーさんが亡くなったけれど、シリーズの出演するシーンの撮影は終わっていた、と聞いていたので、今回はレイア姫、そして次回作でルーク、という順番を想定していたのですが、ちょっと違ったようです。
ゴドーを待ちながら』じゃないんだけど、今作を観ながら、僕はずっと「ルーク待ち」だったことを告白しておきます。
あのスノークの前でのカイロ・レンとレイのシーンで、ルークがライトセイバーを持って登場するのではないか、とか、フィンたちを助けに来るのではないか、とか、とにかく、「ルークはまだか!」ってずっと思っていたのです。でも、なかなか来ない。
あの廃坑にあらわれたルーク・スカイウォーカーには「遅いよ!」とつぶやいてしまいました。
カイロ・レン、怒りのビーム集中砲火に「ま、まさかこれは、『グラン・トリノ』か……?」と驚いていたのですが、無傷のジェダイ・マスター!さすが、すごいそ我らのルーク!
 オッサン的には、もう「世代間闘争」にしかみえなくて、「まだ死ぬなよ、ルーク!」と内心で大応援していました。
 カイロ・レンのライトセイバーで、胴体を真っ二つに……効いてないぜ!みたか若造!お前のようなポッと出の八つ当たり野郎に、天下のルーク・スカイウォーカーがやられるわけないだろ!
 これは、なんとか今作は生き残ったぜルーク!ちょっと安心した!


 いやしかし遠隔とは……すごいことができるんだなジェダイ・マスターって。
 でも、あの展開なら、「また会おう」とか言わなくても……
 だいたい、逃げろという指示+逃げ道くらい教えておく親切心はあっても良いと思うぞルーク。
 あらためて考えてみれば、レイアにとっては、久々に、ようやく会えた、希望の象徴だった兄が、出てきたと思ったらあっさり退場していったわけで、「出オチ」みたいなもんですよねあれ。
 観客はそれまでの経緯を知っているから、それなりに受け入れられるとしても。
 

 ルークのあの最期には、僕も「言いたいところ」はあります。
 なんか寂しい、とも思うし。
 それでも、あの大きな夕陽をみたとき、「ああ、これは終わりというより、エピソード4への回帰なんだな」と思ったし、ルーク・スカイウォーカーをカイロ・レンに殺させるのはしのびなかった、ということなのかもしれません。
 オビ・ワンをなぞるように、カイロ・レンにやられるのかな、と思いきや、ルークは、最後まで、「聖域」であり続けた。それに、ルークまで殺めてしまうのは、カイロ・レンもちょっとかわいそうではある。
 とはいえ、カイロ・レンは、なんというか、小物感満載で、劇中の登場人物の評価と観客の印象がこれほどかけ離れてしまっているキャラクターもあまりいないのではなかろうか。
 良血ジェダイであるカイロ・レンが、レイに「お前の両親は、何者でもなかった。酒を買う金欲しさに娘を売っただけだ」と告げたシーンは、ちょっと『ファイナルファンタジー7』っぽかったな。そうか、レイはクラウドだったのか!(たぶん違う)
 ただ、スノークを排除し、世代交代を成し遂げてしまえば、カイロ・レンがファースト・オーダーとして戦う理由がなくなるような気がするんですよね。
 もともと、瞬間湯沸かし器ではあるけれど、邪悪な人物ではなさそうだし、レイと共同統治すれば、それなりにうまくいくのではなかろうか。
 

 ルークに関しては、僕が20年前にこの映画を観ていたら、きっと、「あのルークまで、こんなふうに堕落させやがって!」って、制作陣に対して憤りを感じていたはずです。
 でも、今の40年以上生きてきた僕には、「カイロ・レンの才能と暗黒面にとらわれていく未来を見てしまったルークが、カイロ・レンを排除しようとした」という「人間としての弱さ」が理解できるんですよ。
 「何も無い、ただの若者」からスタートしたはずのルークが、英雄として崇められ続けたために、年齢とともに権威主義に陥り、頑迷になり、孤独に生きるしかなくなってしまったことも。
 「伝説」であるがゆえに、いろんな期待を背負って、「善」の代行者を演じなければならなかった男、ルーク・スカイウォーカー
 何を演じても、ルーク・スカイウォーカーの亡霊を消すことができなかった、マーク・ハミル
 人間は、完璧にはなれないし、ずっと完璧に近い存在でもいられない。
 ジェダイ・マスターでさえも。
 あの、ルーク・スカイウォーカーでさえも。
 いや、ルークは最初、向こう見ずな若者でしかなかったのに。


 「あの方」=マスター・ヨーダの登場に、僕は、映画館の片隅で、涙をこらえきれなくなりました。

”The greatest teacher, failure is.”


 「大事なのは、弱さや失敗を次の世代に伝えること」
 そんなに長い登場シーンではないのですが、このルークとマスター・ヨーダのやりとりを見ただけで、僕もなんだか「赦された」ような気がします。
 「同じことの繰り返しじゃないか!」って言いたかったんだけど、そうなんだよね、基本的に「繰り返し」。でも、その繰り返しのなかから、少しずつでも、より良い方向を目指していくのが大事なんだ。
 レイが洞窟の岩を持ち上げたシーン、マスター・ヨーダがルークを鍛えていたときのことを思い出すなあ。
 R2がルークを説得するとき、『エピソード4』で、レイアがオビ・ワンに助けを求めるホログラムが流れるのも感涙ものでした。
 

 まあ、なんというか、この映画、僕にとっては、これまで観てきた『スター・ウォーズ』を思い出すとともに、自分の半生とエピソード4〜6の主要キャラクターの運命をシンクロさせずにはいられなかったんですよ。
 僕も、バトンを受ける側から、バトンを渡す側になったのだな。


 こんなの、☆5つ付けるしか無いじゃないですか。
 もう、覚悟して見届けるしかないよね、これは(とか書くと、僕の死亡フラグっぽい……)。


スター・ウォーズ/最後のジェダイ  オリジナル・サウンドトラック

スター・ウォーズ/最後のジェダイ オリジナル・サウンドトラック

 

アクセスカウンター