琥珀色の戯言

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【映画感想】ゴールデンカムイ ☆☆☆☆

日露戦争での鬼神のごとき戦いぶりから「不死身の杉元」の異名を持つ杉元佐一。ある目的のため一獲千金を狙う彼は、北海道の山奥で砂金採りに明け暮れていた。そんなある日、杉元はアイヌ民族から強奪された莫大な金塊の存在を知る。金塊を奪った「のっぺら坊」と呼ばれる男は、捕まる直前に金塊を隠し、その在処を暗号にした刺青を24人の囚人の身体に彫って彼らを脱獄させた。金塊を見つけ出すべく動き始めた杉元は、野生のヒグマに襲われたところをアイヌの少女アシリパに救われる。彼女は金塊を奪った男に父親を殺されており、その仇を討つため杉元と行動をともにすることに。一方、大日本帝国陸軍第七師団の鶴見篤四郎中尉と、戊辰戦争で戦死したとされていた新選組副長・土方歳三も、それぞれ金塊の行方を追っていた。


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2024年映画館での鑑賞2作目。 平日の8時台からの上映で、観客は20人くらいでした。
僕は『ゴールデンカムイ』の原作マンガは全く読んだこともなく、アニメも未見なので、比較はできないのですが、この実写映画に関しては、けっこう面白かった!という感じです。

おそらく、作品的には、これでプロローグというか、登場人物が一通り出揃った、というところまでなのだと思います。
北海道の大自然や派手になりすぎておらず、痛みが伝わってくるのと同時に何をやっているのかわかるアクションシーン、個性的すぎるキャラクターに、古典的ではあるけれど、「宝探し」の魅力、アイヌの文化をちょっと知ったような気分になれる細部へのこだわり、2時間ちょっとの長すぎない上映時間など、「悪いところが目につかない、完成度の高いエンターテインメント映画」でした。

主役の「不死身の杉元」を演じるのが山﨑賢人さんで、『キングダム』と比較してしまうのではないか、と危惧していたのですが、『ゴールデンカムイ』では、杉元以上に周りのキャラクターのアクが強く、『キングダム』の信と比較して云々、みたいな気持ちにはなりませんでした。
むしろ、物語の狂言回しとして、かなり抑え目に演じている印象で(戦争で心に傷を負った人物だから、というのもあるのでしょう)、山﨑さんって、僕が思い込んでいたよりもずっと達者な役者さんだな、と。

アシリパ役の山田杏奈さん、名前を聞いた時は「誰?」と思ったのですけど、存在感と美しさと可愛さを併せ持っていたことに驚きました。
「上手い!」って感じではないのだけれど、上手すぎないのが、この役にはちょうどいいのかもしれません。
正直、山にしょっちゅう入って狩りをしている割には、お肌も綺麗て顔も美しすぎないか?という違和感はあるのですが、じゃあ、そういうところをリアルにすればこの映画が面白くなるか、と言われれば、そうではないでしょうし。

敵役も玉木宏さんが鶴見中尉を怪演(褒めてます)していて、舘ひろしさんの土方歳三まで出てくるなど、サービス満点。
それにしても、土方さんという人は、本人が実際にやったこと以外にも、フィクション作品でいろんな役割で出てくることが多くて「新撰組の生き残りで、五稜郭まで新政府軍と戦った」というのは二次創作意欲をかき立てるものがあるのでしょうね。
いわゆるアメコミの敵役のような「フリークス」も立ちはだかってきて、アシリパが「殺すな」と杉元に縛りをかけてくるところなど、『るろうに剣心』を思い出します。『帝都物語』も入っているかも。
そういえば、『剣心』の敵役も「明治維新で時代に取り残された人々」が多かった。

鶴見中尉は見た目もやることもかなり無茶苦茶なのですが、その行動の根底には「戦争で無謀な突撃を繰り返し命じられ、大きな犠牲を払ったのに報われることがなかった兵士やその家族の憤り」があるのです。
戦地に行かずに、その結果だけを享受した者たちには、「叛逆者」にしか見えないのだけれど、彼らには彼らなりの経緯や理がある。
映画『ジョーカー』のように。
杉元やアシリパも「搾取された側」で、「正義」というより、自分たちの目的を果たすために動いている。
「正義」の息苦しさがないからこそ、この映画は面白いのかな、とも思います。

とりあえず、映画を観て、未読だった原作マンガをすごく読んでみたくなるくらいの作品でした。
映画の続きも楽しみではあるけれど、『キングダム』と同じで、映画が一区切りつくには、何年かかるかわからないしなあ。


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