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2025年第23回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作
余命宣告された人々が集まる山荘で起きた、ある一人の突然死。
自然死か殺人か――。超新星の二度読み必至「館」ミステリー!「最初から最後までずっと罠ばかり。最大の罠は作風そのものかも」麻耶雄嵩(作家)
(あらすじ)
探偵業を営む七隈は、余命宣告された人々が集う交流会のゲストとして、助手の律と共に山奥の別荘に招かれた。
二人は交流会の参加者と食事をし、親交を深める。しかし翌朝、参加者の一人が不審な死を遂げる。
自然死か殺人か。殺人であれば、余命わずかな人間をなぜわざわざ殺したのか。七隈たちは死因の調査を始め――。
やがて明かされる驚愕の真相とは?
これを書いた人、ミステリ好きなんだろうな、というのが、読み終えての僕の感想でした。
有名ミステリの有名なプロットを彷彿とさせるところが多々あって、そういう「元ネタ探し」的に楽しめるかな、とは思います。
余命宣告を受けた人間ばかりが山荘に集まり、そのうちの一人が死んでしまう。
とはいえ、「普段は元気そうでも、いつ病状が急変してもおかしくない人たち」ばかりだし、医療関係者もいる。
でもこれ、いくら癌で闘病中でもけっこうそれまでの活動性が高い人ばかりだし、家族や身内もいるだろうから、さすがに救急搬送するなり、司法解剖の対象になるんじゃない?なんか杜撰だよなあ、書いた人は医者もしくは医療関係者っぽいのに……
「最大の罠は作風そのものかも」という麻耶雄嵩さんの評は、まさに言い得て妙だと思います。
最初の事件がいつ起こるのだろうと思いいながら読んでいたけれど、けっこう長い間何も起こらず、『ゴドーを待ちながら』的なミステリなのか?と不安になってきたり、これ冒頭に部屋割りの図面が載せられていて、「ああ、『館もの』の密室ミステリなんだな」と思っていたら拍子抜けさせられたり……
長さの割に、登場人物のキャラクターが立っていない、とか、糖尿病に関する知識がないとわかりにくいのではないか(知識があるとそんなに都合よくいくものだろうかとも思う)、などと読みながら色々考えていました。
これが「このミス文庫大賞の受賞作」ということもあって、「まあ、新人の作品だからなあ、多少『詰めが甘い』ところがあるのもしょうがないよね」と、ちょっと上から目線で読んでいたんですよ。
そういう意味では、「やはり、『このミス』の文庫グランプリに選ばれるくらいのクオリティはあるな」という、「やられた感」はありました。
やや拙い書きっぷりに感じるところも、どこまでが「演技」なのか?
こんなまわりくどいこと、わざわざ、やる?
という疑問はあるにせよ。
いや、「余命が限られた人たち」だからこそ、あえて、こういうまわりくどいことをやってみたくなった、という解釈もできるのかな。
例えば、博多から大阪まで新幹線で移動することになって(大体2時間半くらい)、何か一冊、移動中に読み終えられて、そんなに気張らなくてもいい文庫が欲しい、という状況であれば、この『どうせそろそろ死ぬんだし』は、ちょうどいいような気がします。
あれこれ言いたくなるところも含めて、話の種にはなるミステリではありますし。
個人的には、世の中の「たぶん病死なんだろうけれど、絶対に病死だとまでは言い切れない死」を、それなりの数見てきたなあ、とあらためて思ったのです。
末期がんの患者さんが終末期を過ごしている自宅で夜間、呼吸が止まっていて、救急車で搬送されてきたが、もう冷たくなって心臓は止まり、瞳孔が開いていた。
明らかな外傷がなければ、「事件性」は無い、ということで病死の死亡診断書を書いてきたけれど、そういう事例のなかには、「検死」すべきものがあったかもしれません。
ただ、そういう事例はかなり多くて、そをすべて司法(病理)解剖するには、監察医、病理医の人手が全然足りない。ご遺体に傷もつけてしまう。
実際、撃たれた、とか刺された、というのならともかく、異状死は解剖すれば死因が100%わかる、というわけでもない。
「どんでん返しのためのどんでん返し」には食傷気味ではあるのですが、これを最後まで「書き切った」のはたいしたものだと思います。










