琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】村上T 僕の愛したTシャツたち ☆☆☆

村上T 僕の愛したTシャツたち (Popeye books)

村上T 僕の愛したTシャツたち (Popeye books)

  • 作者:村上春樹
  • 発売日: 2020/06/04
  • メディア: 単行本


Kindle版もあります。

村上T 僕の愛したTシャツたち

村上T 僕の愛したTシャツたち

村上春樹
つい集まってしまったTシャツが
本になりました!      

僕が人生においておこなったあらゆる投資の中で、それは間違いなく最良のものだったと言えるだろう。――「まえがき」より。

『ポパイ』連載のエッセイが一冊になりました! 
ロックT /レコード系/マラソン完走Tシャツ/企業もの/ビール関係/ノヴェルティ……。村上春樹段ボール箱で積み上がった膨大なTシャツコレクションをもとに、Tシャツをめぐる18篇のエピソードと108枚のお気に入りTシャツを掲載。また村上春樹と野村訓市によるTシャツにまつわるスペシャルインタビューも収録。写真:戎康友


 村上春樹さんが「Tシャツにまつわる話」を書いた連載エッセイをまとめたものです。
 『ポパイ』に載っていたそうなのですが、僕は『ポパイ』には縁がないので、書店に並んでいるのをみて初めて知りました。
 僕は「村上春樹さんに興味はあるけれど、ファッションには疎い」人間なのですが、Tシャツの写真が豊富とはいえ、村上さんのファンじゃないと、この本に2000円出すのはちょっと厳しいかもしれません。
 紹介されているTシャツは、『VOW』的な「何これ?」みたいなものじゃなくて、ごくふつうに着て外を歩けそうなものばかりです。
 マラソンの完走記念のものや書店のノベルティグッズなど、村上さんならでは、というものもありますが。
 むしろ、こういう「普通のTシャツ」って、「普通の人の暮らし」と同じで、みんながインスタグラムに写真を上げることもないでしょうし、「普通なだけに、歴史に埋もれてしまう」可能性もあって、案外貴重な史料になるのかもしれませんね。


 まえがきで、村上さんは「”TONY" TAKITANI」という文字が入った黄色のTシャツを紹介しています。
 

 このコレクションの中で、僕がいちばん大事にしているものは何か? それはやはり「TONY TAKITANI」Tシャツだと思う。僕はマウイ島の田舎町のスリフト・ショップでこのTシャツを見つけ、たしか1ドルくらいで買った。そして「トニー滝谷とはいったいどんな人なのだろう?」と考え、勝手に想像力を巡らせ、彼を主人公にした短編小説を書いて、それは映画にまでなった。たった1ドルですよ! 僕が人生においておこなったあらゆる投資の中で、それは間違いなく最良のものだったと言えるだろう。


 このTシャツの写真をみたとき、「ああ、村上さんの、あの短編小説をモチーフにしてつくられたTシャツなんだな」と僕は思ったんですよ。 
 実際は、村上さんがこの1枚のTシャツからイメージを膨らませて、『トニー滝谷』を書いたのです。
 この本のなかでは、『TONY TAKITANI』とは何者だったのか、そして、村上さんとトニーさんとの「後日談」も語られています。

 僕自身は、イベントやコンサートのグッズのTシャツを買うということはほとんどない(というか、たぶん、これまでの人生で1回だけしかなかった)のですが、村上さんが、けっこうそういうグッズを衝動買いしているそうです。
 そもそも、村上さんは、夏場の普段着としてTシャツを愛用されているとのことですし。

 そんな「何気なく集まってしまったTシャツ」のなかにも、時間が経ってみると、思い出が詰まってしまうものもあるのです。

 最後のは今は亡き安西水丸さんにいただいたTシャツ。カタカナで「ナマケモノ」と書いてある。書いてないと、この枝にぶら下がっている生き物がいったい何なのか、さっぱりわからないですね。水丸さんはよくこの手を使った。似顔絵を描いてもあまり本人に似ていないので、横に「宮本武蔵」とか「リンカーン」とか、名前を書いておく。でもいったん名前を横に書かれると、「ああ、たしかにこれは宮本武蔵だ」とか、「ああ、たしかにこれはリンカーンだ」とか思えてくるから不思議だ。考えてみれば、水丸さんは実に特殊な才能を持った人であった。


 紹介されているTシャツのほとんどが、綺麗にディスプレイされているようなものではなく、ちょっと皺が寄っていたり、パリッとしていなかったりするのが、この本の魅力にもなっているのです。

 お酒でも飲みながら、リラックスして本を読みたいときには、おすすめの一冊だと思います。
 村上春樹さんのファン向けというか、「紙の『村上RADIO』みたいな感じです。


www.tfm.co.jp

レキシントンの幽霊 (文春文庫)

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トニー滝谷

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