琥珀色の戯言

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ないものねだり ☆☆☆☆


ないものねだり (幻冬舎文庫)

ないものねだり (幻冬舎文庫)

内容(「MARC」データベースより)
日々奔走、時々放浪? 刑事に詐欺師、情婦にエルメス。さまざまな人生に身をまかせるひとりの女優の台本のない日常。『アンアン』連載「男子禁制!?」に加筆訂正して単行本化。

 僕は中谷美紀さんが演じているものも書いているものも好きなのですけど、このエッセイ集には、中谷さんの魅力が詰まっているような気がします。ああ、こういうのが「女優という生き方」なのかなあ、などと遠い目をしながら読みました。
 まあ、中谷さんのような「きっぱりした人」とは、たぶん現実で知り合う機会があったとしても、僕は友達にはしてもらえないんじゃないかとは思いますが……
 この本、ヨガとか茶道とかインドとか、「いかにもアーティスト!」みたいな話のあとに、「Y子の涙の愛情レシピ」のような、ネタなんじゃないのこれ?とツッコミたくなるようなエピソードが書かれていたりして、中谷美紀さんに興味がない人でも、けっこう楽しめそうですし。もっとも「中谷美紀なんて、カッコつけてて大嫌い」という人は、ちょっと受け付けないかもしれないけれども。

 「女優という職業をしている人」のなかで、これだけ自分の言葉で語れる人、語ろうとする人って、けっこう珍しいですよね。あとは室井滋さんくらいじゃないでしょうか。バラエティ番組とかに出るのではなく、文章の中だけに存在する、「素顔の中谷美紀」は、やっぱり魅力的なのです。
 いやまあ、男としては、「こういう女性には、手が届かないよなあ」と嘆息するしかない面もあるんですけどね。『アンアン』を読んでいる女性たちは、どういう気持ちでこういうエッセイを読んでいるんだろうなあ。

 実は私にとって、呼び間違えや人違いは今に始まったことではなくて、常日頃から、「藤谷美紀さんですよね、握手してください」なんて言われている。
 ある日沖縄の空港で乗り継ぎ便を待っていた時のこと、お土産屋さんのおばちゃんが手を振りながら、満面の笑みで近づいて来た。化粧もせずに気分はすっかりバカンスで、表情筋も緩みまくりのだらしない顔をしていたであろうに「あぁ! 握手してー! サインちょうだい!」なんて言われると逃げ出したくなるものだけれど、「私大ファンなの! いつも観てるわよ……Dr.コトー」という声を聞いて、思わず噴き出しそうになった。
「それ、私じゃないと思います」なんて言うのも面倒だから、いっそのこと、この場は柴咲コウのフリをしてしまえ! と、差し出された色紙にいかにもそれらしき風に”柴咲コウ”と書いてから、おばちゃんの手をしっかりと握り締め、「Dr.コトー最後まで観てくださいね」と言って飛行機に乗り込んだのでした。

 中谷さんは、よく柴咲コウさんに間違われるそうです。そんなに似てるとも思えないのですが。
 それにしても、女優って、いや女性って、本当に怖いですね…… 

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