- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/12
- メディア: 文庫
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内容(「MARC」データベースより)
中学2年生の1年間で、あたし、大西葵13歳は、人をふたり殺した-。これは、ふたりの少女の、血の噴き出すような闘いの記録。痛切なストーリーが胸を抉る衝撃作。
本当に「痛切」という言葉がこれほど似合う小説は無いような気がします。僕はこの小説『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の前に発表されたものだとばかり思い込んでいたのですが、こちらのほうが新しい作品なのですね。
正直、「物語」としての完成度というか、「まとまり」に関しては、『砂糖菓子』のほうが高いと思います。『少女には向かない職業』では、主人公の母親や男友達など、「物語の核になるはずなのに、途中で投げ出されてしまった登場人物」が目立つような気もしますし。
それでも、心にすごく重く響くことばが、この作品にもたくさん散りばめられているのです。
先日、『トップランナー』で桜庭さん自身が朗読されていた。
ママはこのまま、葵のママじゃなくなってしまうのかな、と、ふと思った。
あたしはママがいちばん大事な人が誰か知っている。それは娘でも、死んだ夫でもないし、あの新しい恋人でもない。きっと”若いころの自分”なんだ。都会にいて、何者かになるはずだった、若くって美人の女の子。その子は永遠にママの心の中で生き続けている。若くてきれいで生意気で、可能性に満ちあふれたままで。ママはこんなつまらない島にいるこんな自分じゃない、べつのなにかになりたいんだ。そのためなら、いまからだって、いつだって、ママはいくらでも捨てられる。ママはほんとにここじゃないどこかに行ってしまうかもしれない。
でも、ママ……。
あたしはここにいる。
ママが認めても、認めなくても。愛してても、うまく愛せなくても。つまらない現実の象徴みたいに、”ママの娘”はここにずっと存在しちゃってる。
重荷と思わないで。なるべく軽くなるから。
もうすでに子供を持つ親であっても全然おかしくない年齢にもかかわらず、自分の子供を愛する自信が持てない僕にとっては、なんだかとても『重い』文章です。「自分の子供から見た、親としての自分」みたいなものを想像すると、本当に気が滅入ってしまうんですよね……
やはり僕には、人の親になる資格がないのだろうか……
桜庭さんのファンにとっては、「とりあえず読んでおくべき作品」ではあると思います。ミステリ・マニアにとっては、ちょっと物足りないかな。