琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

WALL・E/ウォーリー ☆☆☆☆☆


参考リンク:『WALL・E/ウォーリー』公式サイト

あらすじ: 西暦2700年の地球。宇宙に逃れた人間が残したゴミを、700年もの間片付け続ける“地球型ゴミ処理型ロボット”WALL・E(ウォーリー)。ある日、地球にイヴという名のピカピカのロボットが現れた。ずっと孤独だったウォーリーはイヴに恋をするが、イヴが宇宙船にさらわれてしまい……。(シネマトゥデイ

金曜日のレイトショーで鑑賞。観客は20人弱。
公開翌週の週末だったので、もっと賑わっているかと予想していたのですが、あまりに空いていて拍子抜け。
もっとも、この映画の本当の勝負どころは、冬休み期間中なのかもしれませんけど。
そういえば、ちょうど今夜はピクサーの大ヒット作『Mr.インクレディブル』の地上波初放送だったので、時間が重なっていたために観客が少なかったのかな。

作品を観終えての率直な感想は、「映像最高、音楽最高、ストーリー微妙」だな……というものでした。
本当に、この『WALL・E/ウォーリー』の映像は素晴らしい。前半の「ゴミの山に埋まった地球」の姿は、まるで壮大な古代遺跡のよう。その巨大な「文明の残骸」というモニュメントの中をルイ・アームストロングの『バラ色の人生』をBGMに飛び回るイヴ。
とにかく「そのシーンを観ているだけで楽しい、DVDを買って観直したくなる」場面が満載なんですよ。
ルービックキューブやマックの起動音といった小道具の使い方にもニヤリとさせられます。

後半もたくさんの種類のロボットが出てきて、映像的には「面白い」のですが、前半に比べたら、「宇宙」という題材はメジャーなため、ややステレオタイプな印象もあります。でも、消火器でうまく飛ぶのはかなり難しいんじゃないか、と『ファイナルファンタジー8』の宇宙漂流シーンで何度もゲームオーバーになった僕は思ったんですけどね。

そして、ベタベタなんだけど感動のラストシーン。
角が多くて「汚染物質」まみれのウォーリーと卵型でツルリとしたフォルムのピカピカのイブ。
まったく正反対のようにみえる2つの「命」は、ウォーリーの懸命な呼びかけのおかげで、深く結びついたのです。
「心」があれば、見かけや立場の違いがあっても、わかりあうことはできるはず。
……そうであってほしいな、と僕も願わずにはいられませんでした。

でも、正直なところ、この映画のストーリーをつまらなくしているのは「人間の存在」ではないかと。
僕はこの映画のなかでの人間たちの「選択」に対しては、「そんなの大部分の人たちは望まないし、そもそも適応できないだろ……」と思ったんですよ。
しかしながら、ディズニーは、そこで「人間を絶望させるような映画」は作らない、いや、作れない。
強引にエコの話を取りこんでしまうところが、「アメリカっぽい」のですが、僕からすれば、「これなら『風の谷のナウシカ』のほうがよっぽど観客の人生におけるエコ意識を高めるんじゃないか?」と。
さまざまな「社会派ドラマ」のアニメーションを見届けてきた日本の観客と、『ダークナイト』が「斬新なストーリー」と評価された国の観客とでは、「これは深いドラマだ……」と感じるストーリーは異なるのが当然でしょう。
2体のロボットの「言葉に頼らない」コミュニケーションは本当に素晴らしかったし、やたらひねればいい、ってものでもないんですけどね。

僕が不満だったところはこのあとの「ネタバレ感想」で書きますが、それでも「アニメーションが好きな人」にはぜひ観ていただきたい作品です。
なんのかんの言っても、これはまさに「歴史に残る映像作品」でしょう。
僕も「これはいつか、自分の息子に見せてやりたいなあ」と思っています。

そういえば、僕はウォーリーが「野比のび太」に見えてしょうがなかったんですよね。
あの目はのび太だよねえ(僕だけ?)



以下はネタバレ感想です。


本当にネタバレですよ!

ほんと、映像・音楽は最強なんだけど、なんであんなストーリーにしてしまったのだろう?
この映画、後半の「宇宙編」で人間たちが出てきてから、ものすごくつまらなくなってしまうんですよ。
あっさり「改心」する船長、即座に「手と手を握り合い、ふれあうことの大切さ」を理解する乗客たち。
草1本を見つけたことによって、「ゴミの星」に戻るなんて、「暴挙」だとしか思えません。
あの人たちがいまさらすぐにあの地球環境に適応できるとは絶対思えないし、「農業」をやって地球環境を快復させることに喜びを見出せるかも疑問です。
宇宙船内での生活で免疫力も低下していそうですから、地球に戻ってきたとたんに感染症で壊滅するとか、地球に帰りたくない人たちが船内で反乱を起こすとかのほうが自然なのでは。
そういえば僕は『マトリックス』を観ているときにも、「あんな原始時代のような『真実の世界』で生きるよりは、機械に生気をチューチュー吸われながら夢をみているほうが幸せなんじゃないかな」と思っていたのです。
いずれにしても、人間の「体験」なんて、感覚器が受容した刺激を脳が解釈しているだけのことで、自分が「リアルに感じる」のであれば、それが現実かどうかに、そんなに大きな違いはないような気がします。

なんかこう、無理やり「人間の善性を信じましょう!」って説教されてるみたいで、ウォーリーやイヴの「人間らしい感情」に比べて、この物語で「人間として描かれている生き物」の感情が、なんと薄っぺらいことか!
(これはわざとそうしているのかもしれません)

この映画に『人間』が必要だったのかなあ……
そういえば『ハッピーフィート』という躍るペンギンの映画も、最後は「人間様のお情けでペンギンたちが救われる」というオチにしらけきってしまった記憶があります。

あと『2001年宇宙の旅』のあのBGMが流れてくるシーンには思わずニヤリ。

それにしても、ピクサーの技術は本当にすごい!
「アニメは日本!」だと僕はずっと思ってきたけれど、少なくとも「(お金をかけて)絵を描き、動かすこと」では、日本のアニメより上のように感じました。
確かに、こういうのを見せられたら、宮崎駿監督も「手書きで独自性を出す」方向に行くしかないかもしれないなあ。

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