琥珀色の戯言

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【映画感想】バズ・ライトイヤー ☆☆☆

スペース・レンジャーのバズ・ライトイヤーは責任感も強く有能だったが、あるとき自分の能力を過信したことから、危険な惑星に不時着する羽目になる。1,200人の乗組員たちを全員地球に帰還させるため、彼は相棒である猫型の友だちロボット「ソックス」と共に超高速のハイパー航行に挑む。そしてたどり着いた62年7か月と5日後の世界で、バズは新たな仲間となるイジーらと出会う。


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2022年14作目の映画館での鑑賞です。
平日の夕方の回で、観客は3人。本編上映直前まで、「これは久しぶりにシアター独り占めか……?」という状況でした。
興行成績的に、キャラクターの知名度の割には苦戦している(アメリカでも)という話は聞いていたものの、ここまで人がいないとは。
(僕が観た1回だけの結果で、しかも平日の夕食どき、新型コロナウイルスの感染拡大という条件下ではありますが)。

観終えての率直な感想は、「つまらない、箸にも棒にもかからない駄作」ではないけど、映画館で2000円近く払って観なくても、公開からそんなに間をおかずに配信される『ディズニープラス』とかで観れば十分だな、というものでした(僕は『ディズニープラス』には入っていないのですが、わざわざ入ってまで観るほどの映画でもない。)。

ガラスへの周囲の景色の写り込みとか、キャラクターの動きのスムースさとか、技術的には、おそらくものすごいことをやっていると思うんですよ。
それでも、『トイ・ストーリー』を初めて観たときの「これが動くのか!」という感動は、もう無いんですよね。
それはピクサーが悪いというよりは、技術の進化のインパクトというのは、そういうものなのでしょう。

僕が若かりしころ、1980年代前半のマイコンアドベンチャーゲームは、「女の子がまばたきした!」だけでみんな感動していたけれど、2022年は、テレビアニメのような映像でも、「はいはい、さっさとスキップしてゲームスタートしようぜ」という感じになってしまいました。


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映像で圧倒する、ということが難しい時代になってしまった上に、ストーリーも「また『マルチバース』『メタバース』かよ……」と食傷してしまいました。
これが今のヘリウッド映画の流行りなのかもしれないけれど、これだけヒーローものが猫も杓子も「マルチバース」だと、「どれもこれも『叙述トリック』になってしまっていた一時期のミステリ」を思い出します。

みんなが「新しいこと」をやろうとして、「同じような新しい(と制作側は思っている)もの」が出来上がってしまう、という悲劇。


トイ・ストーリー』シリーズの人気キャラクター、バズ・ライトイヤーが主人公の映画(フィクション)という設定なのですが、正直なところ、僕が子供だったら、この映画を観て、バズの大ファンになり、フィギュアを買うとは思えないストーリーなんですよ(ソックスのフィギュアは欲しくなるかも)。
バズは有能かもしれないけれど、融通が効かず、自分を過信していて独断専行が目立つ。
こういう人って(架空のキャラだけど)、レンジャーという組織の一員としては、もっとも周囲が困るタイプなのです。
とにかく、さっさと気付けよ、バズ。と観ながらちょっと苛立ってしまいました。

そもそも、1200人の科学者・技術者が資源豊富な環境に置かれ、他の技術はあっという間に発展しているのに、既知のはずの宇宙船の動力技術だけが半世紀も停滞している、なんてさすがにおかしくない?

……というようなことを、すっかりオッサンになった僕は考えていたのです。

安倍昭恵さんが故・安倍晋三元総理の葬儀でおっしゃっていた「人生にはそれぞれの春夏秋冬がある」という言葉を思い出す場面もありました。
幸福とか不幸というのは、他者が勝手に判断すべきではない。
その人自身にも、よくわからないのかもしれないけれど。


本当に「ものすごくつまらなくはないんだけれど、映像的な驚きや感情移入できる魅力的なキャラクターもなくて(ソックスだけは結構かわいい)、『トイ・ストーリー』でバズ・ライトイヤーが人気キャラクターであるために、物足りなさが増してしまう映画」なんですよ。
ディズニー/ピクサーのアニメ映画には、僕からみると映画館で大々的に公開される「一軍」と、昔はビデオ、今では配信メインで公開される、一枚クオリティを落とした続編やスピンオフなどの「二軍」があるような気がするのですが、この『バズ・ライトイヤー』は、「一軍」の試合を観に行ったつもりが、「1.5軍」くらいの微妙な作品でした。
これほどのクオリティのアニメ映画って、そんなにたくさんは無いはずなのだけれど、僕がハードルを上げすぎてしまっていたところもあります。


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ひとりよがりな『オデッセイ』というか、「みんなのため」のはずのことが、いつの間にか「自己満足のため」になっているのはよくあることだし、「自分の失敗を割り切れない人間だからこそ、バズ・ライトイヤーは魅力的であり、自分の心を写している」と、ひとりの大人としては感じます。
とはいえ、単独の映画としてみると、わざわざこれを観なくても、だし、『トイ・ストーリー』のスピンオフ作品としては「これじゃワクワクするところが無い」としか言いようがない。

僕にとってのピクサーの映画、どれも全く同じ、ってことはないけれど、「ずっと食べていると、どれを食べても同じような気がしてくる『ほっともっと』のお弁当」的になってきているのです。それが「ピクサーらしさ」「『ほっともっと』らしさ」なのかもしれないけれど。


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