琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

ヤッターマン ☆☆☆☆


映画『ヤッターマン』公式サイト

あらすじ: ガンちゃん(櫻井翔)は父の遺志を継ぎ、犬型の巨大ロボット“ヤッターワン”を完成させた。そしてアイちゃん(福田沙紀)と力を合わせ、愛と正義の味方ヤッターマン1号・2号としてドロンジョ深田恭子)率いるドロンボー一味と戦うことに。ある日、一味が探しているのは何でも願いがかなう伝説のドクロストーンだと判明し……。(シネマトゥデイ

ヤッターマンがいるかぎり、この世に悪は栄えない!

このー、アカポンタン!

うわー、「アカポンタン」懐かしい! ドクロベエさまは「アンポンタン」じゃなくて「アカポンタン」だよなあやっぱり!

大雨のなか、観てきました実写映画版『ヤッターマン』。
金曜日のレイトショーで、観客は10人くらい。
ちょうど同じくらいの時間に上映されていた『ドラゴンボール・エボリューション』のチケットを前に並んでいた人が買っていたのですが、「館内やや混みあっております」と言われていたので、そちらはそこそこお客さんが入っていたようです。まあ、初日だし、あまりにネガティブな話ばかり伝わってくるので、怖いもの観たさ、という需要もあるのかな。

僕はこの実写映画版『ヤッターマン』の予告編を観るたびに、「まあ、DVDレンタルで気が向いたら観るくらいだろうな」と思っていました。
ちょうど小学校に入ったくらいのときにテレビアニメの『ヤッターマン』が始まったのですが、僕は本当にこの『ヤッターマン』が大好きだったのです。当時はずっと『ヤッターマンの絵が描かれた枕』を愛用していましたし、超合金のヤッターワンとかも持っていた記憶があります。
ものすごく思い入れが強いアニメなので、今回の実写映画化(と、再アニメ化後の経過)には、あまり良い感情を抱いていなかったんですよね。
話題になるのは「ドロンジョ深田恭子の衣装」とか「実寸大ヤッターワン公開」とか、なんかどうも「ヤッターマンの本質とは関係なさそうなこと」ばかりだったし。三池崇史監督も、僕のなかでは「そこそこ面白くて安上がりなB級映画を濫造している監督」だったんだよなあ。制作費20億円って、コケたら『ヤッターマン』そのものの商品価値も下がるのでは……?
これは『デビルマン』になるんじゃないか……という悪い予感がしていたのですが、公開されてみると、これがけっこう好評なので気になってきました。

三池崇史監督が『ヤッターマン』を選んだ理由
↑で紹介した『オトナファミ』(エンターブレイン)のインタビュー記事で、僕が考えていたようりもはるかに三池監督が『ヤッターマン』の世界を大事にしていることを知ったこともあり、今日、ついにスクリーンの前に辿り着きました。

観終えての感想。
ああ、これはまさに「『ヤッターマン』を観て育った人たちが20億円かけてノリノリでつくった『大人の学芸会』だ……」ほら、お正月の「かくし芸」で、人気ドラマや映画を芸能人たちが真似してやってたじゃないですか、あれを『ヤッターマン』でやってしまった感じ。
この映画版の『ヤッターマン』、シナリオに意外性は無いし、原作の「ほんのり香るエロス」ではなく「下品なオヤジギャグ」ばっかりだし、いちばん冗長で飽きるのがクライマックスという体たらくなのですが(あれは滝口さんじゃなかったら、観るのやめて帰ろうかと思うくらい)、つまらないかと言われると、「けっこう面白い、いや、かなり面白い」のですよ。

この『ヤッターマン』が僕のような「原作フリーク」にも楽しめるのは、やっぱり、根底に「原作への愛情と敬意」があるからなんじゃないかと思います。劇中曲も最低限のイメージは保っていますし、懐かしいメロディ満載。
とくに、ドロンボーダンスのシーンは、僕的には最高の見せ場でした。
いいなあ、あの絶妙の「やる気のなさ」。

まあ、基本的に『ヤッターマン』っていうのは「ズルイ作品」なんですよね。というか、「『ヤッターマン』だったら、何でもアリ。ただし「三悪」だけは必須」だという愛されかたをしている作品。
同じように「何でもアリ」だと認められているのは『必殺仕事人』くらいのものです。
人気アニメや時代劇でも、『北斗の拳』や『水戸黄門』では、「脱線」は即座にファンからのバッシングにつながります。
ところが、『ヤッターマン』好きは、「『ヤッターマン』の現実にはありえないような設定を、あえて実写にしてみせて笑い飛ばすようなシーン」で、三池監督と一緒に笑えるんですよ。「ヤッターワン乗り心地悪そうだな、あははは」って。ボヤッキーやトンズラーの鼻なんて、わざわざ付け鼻だとわかるように紐までついてるし。いまの特殊メイクだったら、もっとリアルにつくれるはずなのに、あえてそういうふうに見せているんですよね。
ヤッターマン』って、最初のアニメのときから、「架空の世界にいるはずの登場人物が、視聴者の眼を意識して語りかけてくる作品」であり、それは、当時の僕にとっては、ものすごく刺激的だったんです。いまから考えると、筒井康隆さんの作品の影響もあったんじゃなかろうか。

三悪のインチキ商売(なぜか大ヒット!)→ドクロベエさまの指令→舞台となる場所へ→ヤッターマン三悪の対決→ゾロメカ対決→ドロンボーにお仕置き

このお約束のパターンも、しっかり踏襲されています。
20億円のお金があって、『ヤッターマン』の舞台設定があれば、「自分なりに新しい『ヤッターマン』を創造してみたい」なんて色気が出そうなものですが、三池監督は、「とにかくアニメ『ヤッターマン』の世界をキャラクターのイメージを殺さないように実写化する」ことにこだわっていたようです。
ドロンジョ深田恭子って、若すぎるし色気も足りないんじゃない?客寄せのためのキャスティングなのでは?などと思っていたのですが、観終えてみると、「いや、アニメのドロンジョも、よく思い返してみると、けっこう若いような気がするな」と思えてきたくらいです。
そして、僕がいちばんすごいと思ったのが、生瀬勝久さんのボヤッキー。生瀬さんって、前世はボヤッキーだったんじゃないか?と感じるほどの違和感のなさ!

正直、ストーリーはたいして面白くないですし(ただ、ディテールが面白いんだよなあ、それが『ヤッターマン』なんだけど)、深田恭子さんの露出も全然たいしたことないです。ギャグは下品で、子どもに見せると説明に困ってしまう場面も少なくない。
でも、これはまぎれもなく、『ヤッターマン』の魂を持った映画だと思うんですよ。
往年のファンには、ぜひ観ていただきたい。
もしつまらなかったとしても、そのつまらなさを肴に飲める、それが『ヤッターマン』なんだよなあ。



以下は蛇足。
正直、僕はこの映画を観てホッとしたんですよ。
というか、三池監督に感謝しました。

ヤッターマン』を愛する人間としては、日本テレビの「平成ヤッターマン」への仕打ちはあまりに酷いと感じています。

参考リンク(1):J-CASTニュース : 読売TV「ヤッターマン」 休止多すぎる不思議
参考リンク(2):新作ヤッターマン第24話までの視聴率|ひろくんのブログ
↑にあるように、初回は順調な滑り出しだった「平成ヤッターマン」なのですが、次第に視聴率が低迷してきていました。でも、この映画の公開を控えていたために「打ち切り」にはできなかったようです。
そのかわり、日本テレビは『ヤッターマン』にこんな仕打ちをしたのです。

元日や大晦日にも放送していた第1作目とは対照的に、本作は非常に放送休止が多い。年末年始や改編期には、特別番組や『コナン』の劇場版などが放送されるために休止となるが、2008年9月8日に放送された24話から11月10日に放送された25話までの間の2ヶ月間(8週分)、また12月15日に放送された28話から2009年2月2日が放送された29話までの間にも1ヵ月半(6週分)放送がなく、年間で5ヶ月以上も休止されるという異例の編成となっている。このため、1周年を迎える2009年1月の時点での話数は限定版を含めても30話程度に留まっている。

僕だって「平成ヤッターマン」が面白いとは思いませんが、あの「三悪」の声優さんたちが勢ぞろいしてつくっている『ヤッターマン』をそんなに「お荷物」扱いするのなら、いっそのこと打ち切ってくれたほうがいいんじゃないのか……

映画も公開されたし、これはもう3月で打ち切りだな、と思っていたら、なんと「4月から時間帯移動」とのこと。「日曜の7時から」と聞いて、「それでもまだゴールデンタイムなのか……期待されているんだな」と思い込んでいたら、「朝の7時」だそうですよ。うーん、それでも続けるという選択をしたのが謎だ……

この映画のヒットで、『ヤッターマン』というコンテンツにはまだまだ魅力と集客力があるということがわかって、僕はけっこう喜んでいるのです。そのことを証明してくれた三池監督とスタッフには、すごく感謝しています。
ヤッターマン』は、不死身だぜ!

これでアニメのほうも、もうちょっと視聴率が上がるといいんですけどねえ。ただ、「平成」は、オールドファンが観るには新しすぎて、いまの子どもが見るには古すぎるんだよなあ。

そうそう、桜井さんと福田さんには、もうちょっとノリノリでやってもらいたかったかも。
同じセリフでもアクセントや抑揚のつけかたの違いって、けっこう気になるんだよなあ。

ヤッターマンがいるかぎりぃっ このよにあくは、さかえないーーっ!

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