琥珀色の戯言

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臨床真理 ☆☆


臨床真理 (上) (宝島社文庫 C ゆ 1-1)

臨床真理 (上) (宝島社文庫 C ゆ 1-1)

臨床真理 (下) (宝島社文庫 C ゆ 1-2)

臨床真理 (下) (宝島社文庫 C ゆ 1-2)

内容紹介
第7回『このミス』大賞は大紛糾! 選考委員がまっぷたつに分かれ、喧々諤々の議論の末、大賞ダブルの受賞となりました。本作は、臨床心理士共感覚を持つ青年が、失語症の少女の自殺の真相を追う、一級のサスペンス!「書きたいものを持ち、それを伝えたいという、内なるパトスを感じさせる。醜悪なテーマを正統派のサスペンスに仕立て上げた手腕を、高く評価したい」茶木則雄(書評家)「文章、会話、冒頭のつかみや中盤の展開など、新人とは思えぬ素晴らしい筆力だ。とりわけ人物に危機の迫るサスペンス・シーンが秀逸」吉野仁(書評家)

内容(「BOOK」データベースより)
臨床心理士の佐久間美帆は、勤務先の医療機関で藤木司という二十歳の青年を担当することになる。司は、同じ福祉施設で暮らしていた少女の自殺を受け入れることができず、美帆に心を開こうとしなかった。それでも根気強く向き合おうとする美帆に、司はある告白をする。少女の死は他殺だと言うのだ。その根拠は、彼が持っている特殊な能力によるらしい。美帆はその主張を信じることが出来なかったが、司の治療のためにも、調査をしてみようと決意する。美帆は、かつての同級生で現在は警察官である栗原久志の協力をえて、福祉施設で何が起こっていたのかを探り始める。しかし、調査が進むにつれ、おぞましい出来事が明らかになる。『このミステリーがすごい!』大賞2009年第7回大賞受賞作。

『屋上ミサイル』を読んだときには、「なんでこの伊坂幸太郎劣化コピーが『このミス』大賞だったんだ?」と疑問だったのですが、この『臨床真理』は、『屋上ミサイル』と大賞同時受賞の作品。これを読んでみると、「うーん、これとの比較なら、登場人物のキャラが立っているぶんだけ『屋上ミサイル』のほうがマシだよなあ。それにしても、『このミス』大賞って、こんなにレベルが低いのか……?」と思わずにはいられませんでした。
あの『ナイチンゲールの沈黙』で僕を悶絶させた「共感覚」(音を映像とかイメージとして感じられるといか、そういうやつです)が、この作品のひとつのテーマなのですが、「その人が本当のことを言っているのか、噓をついているのかわかる能力」なんていうのは、ミステリ的には「反則」ですよねやっぱり。いや、その「反則」を使っても読者を驚かせてくれるような仕掛けがあれば良いのですが、この『臨床真理』は、なんというか、「読者が意外だと思わせることだけを狙った犯人や人物設定」が露骨すぎて、かえって「ああそうですか。まあ、そんなもんだよね……」という予定調和的な作品になってしまっています。
「サスペンス・シーンが秀逸」って、単なるエロ場面じゃん!

この主人公の臨床心理士も、「患者の妄想に取り込まれてしまった人」にしか思えないし、新人賞受賞作には、なぜいつも「知り合いに警察官」がいるのか疑問になります。
そもそも、「昔の同級生」レベルの知り合いに対して、警察官がいちいちリスクを冒して協力してくれないだろうと思うのですが……

テーマの「醜悪さ」だけは認めざるをえませんが、それも、「権力の側はつねに悪いことをしている」というような偏見を感じさせる作品ではありました。
いちばんかわいそうなのは、あの救急隊員だよね、とばっちりだとしか言いようがない……

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