琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

HK/変態仮面 ☆☆☆☆



あらすじ: 紅游高校に通い拳法部に所属している色丞狂介(鈴木亮平)は、同じクラスに転校してきた姫野愛子(清水富美加)に、一瞬にして心を奪われてしまう。ある日、姫野が銀行強盗事件に巻き込まれてしまい、人質となってしまう。彼女を助けるために覆面をかぶって強盗に挑もうとするも、何とかぶったものは女性用のパンティーだった。ところがその瞬間、これまでに感じたことのない感覚が体中をよぎり……。

参考リンク:映画『HK/変態仮面』オフィシャルサイト


 2013年16本目。
 月曜日の20時の回で、観客は10人くらいでした。


 さすがにこれは、オッサンがひとりで観に行くのは恥ずかしい……
 しかし、家族で行くような映画でもないし……
 そもそも、うちの近くの映画館では上映してないし……


 そんな感じだったのですが、最近になって、けっこう近場の映画館で上映されることになり、しかも、その映画館はタッチパネルでチケットが買えるんですよね。
 というわけで、観てきました『変態仮面』。
 入口に若い女性がいて、「『変態仮面』、○番スクリーンです」って言われたらどうしよう……
 そんな心配もしていたのですが、杞憂に終わりました。
 若い男性スタッフは、チケットを一瞥して、作品名はスルーし、「○番スクリーンです」。
 うん、適切な対応だ。


 この『HK/変態仮面』、感動ではなくギャグで勝負したことと、原作の世界観というか、「なんかよくわからないけど大仰かつ真面目にバカバカしい感じ」を追求した、「すごく良質のB+級映画」だと思います。
 冒頭のハリウッドのアメコミ映画のオープニングっぽい映像や、『スパイダーマン』へのオマージュというかパロディも、観ていてニヤニヤが止まりませんでした。


 ひとつ残念なことは、ネットでかなり好評だったため、僕自身のこの映画へのハードルがかなり上がってしまっていたことで、予備知識無しで観たら、「よく考えてみろ、これ単なる変態映画みたいだけど、このヒーローを描くために、変態が必要だっただけなんだ!」と、よりいっそう感動したかもしれません。
 主役の鈴木亮介さんの1年前からこの役のためにつくったという肉体はものすごいのですが、それが『変態仮面』になるためだというのには、すごい執念を感じます。
 愛子ちゃん役の女優さんもかわいいし。

 
 この映画を観る愉しさというのは、「みんなで『変態仮面』と時間を共有する」という高揚感ではないかなあ。
「『変態仮面』好きが、この世の中にはこんなにたくさんいたのか!」と、この映画の評判を見聞きして、僕はけっこう嬉しかったんですよね。
 僕自身も、このマンガが『週刊少年ジャンプ』に連載されていたときには、「なんでこんなヘンなマンガが、天下の『ジャンプ』に載っているんだ?」と疑念を呈しつつ、毎週欠かさず読んでいたんですよね。
 顔にパンティをかぶった正義のヒーローが、あの『日本一のマンガ週刊誌』に!
 いまから考えると、一昔前の『ジャンプ』は、いちばんメジャーなマンガ週刊誌だったにもかかわらず、けっこうアナーキーだったよなあ。
 『変態仮面』もそうだし、『BASTARD!!』の萩原一至先生が締め切りに間に合わなかったらしく、下書きみたいなマンガはそのまま掲載されていたりもしたし。あのときは「これを400万部も刷るのか?」とそのあまりに壮大な紙の浪費に、ちょっとワクワクしたものでした。昔から『トイレット博士』とか載せてたマンガ誌ではあるんですが。
 『変態系ヒーロー』といえば、『ジャンプ』じゃありませんが、永井豪先生の「顔をかくして身体隠さず」の『けっこう仮面』という作品もありましたね、そういえば。


 連載時は「『変態仮面』大好き!」っていう人は周囲にはいなかったはずなのですが、大人になって、飲み会などで昔のジャンプのマンガの話になると『北斗の拳』や『キン肉マン』『聖闘士星矢』から、『ウイングマン』『きまぐれオレンジロード』など、硬軟取り混ぜたマンガの名前が挙がります。
 そして、そういう話題になると、かならず「あっ、そういえば……」と名前が挙がるのが『変態仮面』なんですよね。
(ちなみに次点は『メタルK』。硫酸鞭!)


 この安易極まりないネーミング!
 パンティをかぶると強くなるという「小学生か!」とツッコミたくなるような設定!


 だが、それがいい
 というかもう、あのマンガを観た人の大部分は、好き嫌い以前に、あの姿が目に焼き付いて離れなくなってしまったのかもしれません。
  

 それはわたしの……おいなりさんだっ!!

 成敗っ!!

 いやもう、この決めゼリフが映画館で観られただけでも、けっこう満足。
 変態仮面の怪しい身体の動きも、原作に忠実です(というか、原作は絵なんですが、絵をみてイメージしたものにきわめて近い動きだと感じました)。
 

 ストーリは強引極まりないし、敵も何がなんだかわからない+中盤はけっこう間延びするところもあります。
 あまりの評判のよさに、期待値が上がり過ぎてしまって、かえって裏切られた気分になる人もいるかもしれません。
 だから、できるだけ気楽に観てほしい。


 この映画には原作への愛情と、「『変態仮面』が気になっていたけれど、それがどういう感情だったのかよくわからかった頃の自分」がたくさん詰まっていて、観ていてとても楽しかったのです。
 「ああ、みんなけっこう『変態仮面』好きだったんだな」ということがわかっただけでも、ちょっと感動してしまいました。
 

 ただ、「『変態仮面』って、よく知らないんだけど、ネットで評判良いみたいだから、観に行ってみようかな」という人は、ひょっとしたら「何これ」って感じになってしまうかも。


 そうそう、『変態仮面』って、いろんな意味で『キカイダー』にちょっと似てますよね。

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